loading...

吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2022年・第208通常国会

【教特法改定案 参考人質疑】研修記録より定数改善 

要約

 参院文教科学委員会は4月28日、教員免許更新制度廃止と引き換えに教員の研修履歴の記録と指導助言を義務づける教育公務員特例法等改定案の参考人質疑を開きました。参考人からは研修履歴の記録よりも教師が主体的に研修に取り組めるよう教職員定数改善などで多忙化を解消することこそ必要だとの声が出されました。

 教育研究家の妹尾昌俊氏は、指導・助言の名で教師への管理・統制が強まる恐れがあるなど教員免許更新制をやめるのは賛成だが、教育公務員特例法の改正は不要だと主張。中央大学の池田賢市教授も「教員免許更新制はいいことはなかった。まずは働く環境の整備が必要」と語りました。埼玉県戸田市の戸ケ﨑勤教育長は、免許更新制の継承が必要だと述べました。

 日本共産党の吉良よし子議員が研修記録と助言指導、人事評価が結びつく危険性を尋ねたのに対し、戸ケ﨑氏は「(人事評価との区別は)なかなか難しい」と回答。池田氏も「(人事評価と)リンクする可能性はある」と語りました。妹尾氏は「教師は脅さないと学ばないというメッセージを発信してしまう」と批判しました。

しんぶん赤旗2022年5月3日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 今日は、三人の参考人の皆様、貴重な御意見を本当にありがとうございます。
 では早速ですが、最初のお話の中で、三人の皆さんそれぞれ、更新制の功罪、まあどちらかというと罪が多かったかと思うんですけれども、のお話がありました。この教員免許更新制、なくすわけですけれども、は、やっぱり教育職員の身分にひも付けて三十時間以上の講習を義務付けるというものであったわけで、中教審のまとめ読んでいても、やっぱりこの身分へのひも付け、つまり、教員の資質向上などの研修などを教員免許という教職の身分にひも付ける仕組みそのものが間違いだったということが明白になったんじゃないかと思うわけですが、その点について、三人の参考人の皆さん、それぞれ御意見をお聞かせください。

中央大学文学部教授(池田賢市君)

 本当におっしゃったとおりだと、そのとおりだと思います。
 今回、更新制がやめるということの発展的解消という中で研修が出てきていますけど、本来全く別のものだったはずなので、発展的解消のその筋立ての中で研修が出てくること自体が実はちょっと違和感はあるということだけちょっと申し上げておきます。
 以上です。

教育研究家・合同会社ライフ&ワーク代表(妹尾昌俊君)

 おっしゃるとおり、身分へのひも付けということですので、つまり、これ受けなければ教壇に立てなくなるよという言わば脅し、強制による学びだったわけで、御案内のとおり、子供たちには主体的で対話的で深い学びをしましょうというのが新学習指導要領なのに、教師たちは全然主体的でも対話的でもなかったという問題が教員免許更新制にはあったということです。
 付言をすると、今回の指導助言をわざわざ法律で義務化すると言っているんですから、まさにこれも主体的で対話的になるのかといったことはしっかりチェックしないといけないということを申し添えます。
 以上です。

戸田市教育委員会教育長(戸ヶ崎勤君)

 その身分ということについては、それを受けなければ失効してしまうということに対しての仕組みというのはやはり課題があったんだろうというふうに思いますし、様々な採用業務だとか臨採の採用だとか、そういうところにも少なからずの影響があったんだろうなというふうには思っています。
 それ以外のことについての課題というのは、様々先ほども私の方からも申し上げましたけれども、やっぱりこれを見直していく一つの今はとってもいいきっかけにはなっているのかなというふうには思っております。
 以上です。

吉良よし子

 やはり、そうやって教職の身分を人質に取って、失効という、するかもしれないということで研修、講習を強制するというやり方自体がやっぱり問われていたし、だからこそ今回なくすということになったんだと私自身も思う次第です。
 最初に妹尾参考人は教特法改正案も不要だというお話ありまして、いや、私もそれは本当にそのとおりだなと思う次第ですが、今回の法改正では、この記録の義務化だけではなくて、指導助言の義務化というのもやっぱり問題だと思うわけです。
 この記録を、研修の記録を義務化して、更にそれを活用して指導助言をすると、管理職により対話と奨励ということなんですが、その対話と奨励を行う場は人事評価の面談において行うことも想定されていると文科省の答弁があるわけです。
 そこで、まず戸ヶ崎参考人に、現場の御経験もあるということで伺いたいんですが、人事評価制度とこの今回の研修の指導助言というのは別物だというふうに文科省は答弁しているわけですが、この人事評価の面談の場での指導助言というのは、本当に人事評価と明確に区別して行うことができるものなのでしょうか。

参考人(戸ヶ崎勤君)

 なかなか難しいことだろうと思うんですけど、いわゆる研修した内容ですとか、またその研修した量的なものというんですかね、そういうものが人事評価に直接結び付くものではないというふうには、私はもうはっきりそれは言えるのかなというふうに思うんですけれども。
 この人事評価というのはそもそもが何を目的にしているかというと、学校の教育力を高めるために校長が定める、年度当初に定めたミッション、学校の使命ですね、それに向かって教職員が様々な方策等を計画実行していくという、そういう取組を行っていくというこういう仕組みなわけで、その評価の対象というのはあくまでも限定的で、あくまでも勤務時間のみの活動になってくると。
 それに対して様々な研修というのは、もうそれこそ幅広い研修というのがあるわけですから、なかなか、勤務時間外の研修だってあるわけだし、それを人事評価の中に入れるというのはやはりかなりな無理が当然のことながらあるわけですし、またあわせて、様々な研修を行ったその結果としてその教師がスキルアップしたということであれば、そういうことについては尊重してあげないと、全然その伸びた結果というのが何も認められていないというのは逆にまずいことにもなりかねないのかなと。結果として、研修が、それがどうのこうのというよりも、スキルアップしているというところはやっぱり見てあげるべきではないかなというふうには思っています。
 以上です。

吉良よし子

 なかなか難しいと言いながらも、目的が違うから分けられるのではないかというようなお話だったかと思うんですが、やはり、もちろんそういった個々の教員の努力というのを管理職が評価するということは必要かと思いますが、ただ、こうやって指導助言を義務化という形でやっていくと、何かやり方が変わってしまう、なんじゃないかという懸念はやはり残るわけです。
 さらには、中教審のまとめにおいては、管理職等の期待する水準の研修を受けているとは到底認められない場合には職務命令で受講させることが必要と明記されていますし、職務命令に万が一従わなかった場合には人事上又は指導上の措置として懲戒処分も行うということがあって、実際、先日の本会議質問でも文科大臣はこの懲戒処分というのを否定されなかったわけですけれども、この免許更新制をなくしても懲戒処分も最終的には含む、そういう脅し的な要素もあるような指導助言では、やはり教師の学び、主体的に行えなくなるんじゃないかと思いますが、その点、妹尾参考人、池田参考人、両参考人、それぞれ御意見をお聞かせいただければと思います。

参考人(池田賢市君)

 今のところがまさに発展的解消という言葉の肝なのかなと思うんですね、何を発展させるのかということなんですけど。
 免許更新制のやはりポイントは、その身分にひも付いているというところだったわけで、元々は不適格教員の対応ということもあったわけですから。となると、この両者は、もちろん記録の内容とか指導助言と人事評価は、確かに名目上というか形式上は違うことなんだけれど、発展的解消という流れの中でそれがくっついて出てくると、当然ここはリンクする可能性はあるなということは私も全くそのとおりで心配しております。研修の在り方によっては、教員としての職務遂行上の何らかの処遇の在り方と関連付けられてくるんじゃないかという懸念は常に私も持っております。
 ですから、両者をしっかりと分けるという議論を、制度上もきちっと分けるということをしておかないといけないと思っています。
 以上です。

参考人(妹尾昌俊君)

 二、三点申し上げます。
 一点目は、ちょっと繰り返しになりますけれども、今回のこの法改正がもし実現してしまうと、やはり教師不信といいますか、先生方脅さないと学ばないというようなことをメッセージを発信してしまいますので、何が学び続ける教師やねんというところですよね。ちょっときれい事ばっかり言いやがってというところに、ごめんなさい、ちょっと言葉遣いあれだったかもしれませんが。そういう部分も含めて、しっかりどんなメッセージを与えるのかといったことが大事で、しっかり、先生方応援していますよと、信じていますよということを言っていく必要があります。
 ただし、非常にごくごく一部だとは思いますけれども、本当に学びが止まってしまっている先生だとか、学びに本当に意欲がない、先ほどのインクルーシブですとか特別支援に対して非常に学んでいない、昔ながらの押し付けるような指導をしてしまっている先生がいらっしゃるのも確かです。これにつきましては、じゃ今回法改正して、履歴があったらそれで解決するかって解決するわけがなくて、この先生にはしかるべき、まあ処分までは急にいくかどうかはあれですけれども、処分をしっかりしていくだとか、さっさと子供から離さないといけないので、そこは人事異動等でしっかり対応していくだとか、そういう別の施策が必要なことでありまして、今回の法改正は必要ありません。
 しかもですね、しかも、御案内のとおり、今既に現行法の中でも校長には広範な権限があって、校務をつかさどるという権限がありますので、一番戸ヶ崎さんが詳しいですけれども、その中で指導助言なり教職員を引き上げるということは当然校長の役割としては期待されています。ですので、繰り返しますが、教育公務員特例法の改正は全く必要性を感じませんということです。
 以上です。

吉良よし子

 ありがとうございます。やはり問題意識が共通しているなと思ってお伺いしておりました。
 あわせて、記録については池田参考人から、何を記録するのか、その必要とは何なのかというところの指摘もあったことかと思うんですけれども、やっぱり任命権者がこの法改正を受けて必要だと、まずする研修って何かと思えば、二〇一六年のあの法改正で作ることとされた指標、教員育成指標というのが出てくると思うわけですね。
 これについて妹尾参考人の書いた資料を見ましたけれども、やはり、目がちかちかするほどびっしり書き込まれていてというそういう御表現もあって、私自身も東京都の教員育成指標というのを見ましたけれども、一年目から三年目を基礎形成期として、四年目以降は伸長期、九年目以降が充実期とかってそういう名前を付けて、さらには指導教諭、主幹教諭、主任教諭、教育管理職候補者、副校長、校長って、それぞれの段階に分けて、更に必要な能力ということで、五指標四十一項目も詳細にびっちり書かれた指標を策定していたわけです。
 こうした教育育成指標については様々指摘がされていて、例えばその段階というのも、出産、子育てとか介護とか、教員個人のライフステージ考慮していないような、熟達モデルの単線化だとかいう指摘もありましたし、複雑で流動的で多様な現場に対応できる考える教師の育成、養成ではなく、へこたれない従順な教師の養成であるみたいな指摘もあったかと思うわけですが、こうした教員育成指標のような画一的と言える教員像についてどう思うのか。また、そうした指標にある研修ばかりが優先されて、記録とか指導助言で優先されてしまっては問題じゃないかと思いますが、この点について、また妹尾参考人、池田参考人、お二人に伺いたいと思います。

参考人(妹尾昌俊君)

 この教員育成指標なり校長育成指標につきましては、そもそもこれも検証が必要だと思っていまして、もちろんいい点もあるでしょう。教育委員会にとっては、いろんな研修が体系化できただとか、しっかり、いいこともあるでしょうけれども、非常に書類が増えた、事務作業が増えた、何のためにやっているのか分からないといったようなこともありますので、これも検証して、私はもう削除してもいいかなと思っているんですけれども、そこはちょっと今日の、今回とは別の議論ですが、しっかり議論する必要があると思います。
 こういった指標は、どうしても具体的に書けば書くほどすぐ古くなります。一方で、じゃ抽象的に書けば書くほどよく分からないものになります。ということで、非常にジレンマを抱えているものなんですね。なので、非常に限界があるということです。
 今回の研修履歴の義務化もそうなんですけれども、いいかげん文部科学省は、書類に書けば教員は良くなると、教員は育つというような甘っちょろい前提は捨てられた方がよろしいかと思います。先生方が育つのは、子供を通じて育つ、あるいは教職員同士で学び合うことで育つ、もちろん研修も含めてですね、ということであって、指標で立てただとか研修をたくさん受けたということで、それでよかったですねという世界では全くありませんので、教師の学びを甘く見てもらっては困るということは申し上げたいと思います。
 以上です。

参考人(池田賢市君)

 今、その指標の、様々な今御紹介いただきましたいろんな発達段階みたいなものがあってなんですけど、それを聞いていると、本当に、私もいろいろ目にしたりしましたけれど、子供がいることを忘れているんじゃないかという、そういう印象ですね。具体的な、生きた、日々変わる子供と教員は対応しているのであって、その現場の課題から研修が始まるのであって、外側から、このときはこういう時期で、こういう時期でと言えるはずがないということですね。教員の質を高めたいというのであれば、その質は日々の子供の関わりの中で証明されてくるので、こういう研修を受けたからすごくいい先生ですということはもうあり得ないというふうに思っております。
 以上です。

吉良よし子

 もう子供との関わり、現場の課題から始まる、また子供を通じて教員同士で学ぶものが教師の学びであるというのは本当に参考になりました。
 また、三人の参考人の皆様それぞれ、やっぱり教員の研修、資質向上というなら、その教員が学ぶゆとりと時間を保障することが必要というそういうお話もありましたが、それについても一言ずつ、ちょっと時間がないんですけれども、教員のゆとりと時間をやはり保障することがまず何よりも大事だと思うんですが、それについて三人の参考人の皆さん、一言ずつお願いいたします、最後に。

参考人(戸ヶ崎勤君) 

 この研修の推進というものとその時間ということを考えると、働き方改革の推進というのは今後やはりセットで考えていかないと、それを切り離してというわけにはなかなかいかないだろうなというふうに思っています。
 以上です。

参考人(妹尾昌俊君)

 詳細は私のまた資料を御覧いただければと思いますけれども、やはり休憩すら取れないというのは労基法なり労安法違反でもありますので、まずは法令をしっかり遵守していただく。そうじゃないと学生からも見向きされないということになりますので、その上で、勤務時間の中でしっかり休憩も取り、授業準備もでき、ある程度の事務作業もできるというふうな環境をやっていくことが非常に大事だと思っております。
 以上です。

参考人(池田賢市君)

 時間については全く私もそのとおりだと思っています。と同時に、精神的なゆとりでしょうか、そこがもっと大事かもと思っております。時間が精神的なゆとりをなくすことももちろんあるんですけど、抑圧的な環境、職場環境というのかな、そういうところを解消していくことも併せてやらないと、時間だけではないというふうに思っています。
 以上です。

吉良よし子

 終わります。ありがとうございました。