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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2022年・第208通常国会

教特法改定案を批判【質疑】【修正提案 趣旨説明】【討論】

要約

 参院文教科学委員会で10日、教員免許更新制廃止と引き換えに研修受講履歴の記録を義務づける教育公務員特例法等改定案が可決されました。日本共産党とれいわ新選組は反対しました。共産党の吉良よし子議員は、受講履歴に基づく面談がパワハラの温床や教育委員会の研修押し付けにつながると批判し、「自主的・自律的な研修のためのゆとりと時間の保障こそ必要だ」と訴えました。

 吉良氏は免許更新制について、10年に1度講習を受けなければ免許が失効するとした仕組み自体に問題があったと指摘。今回の法改定も最終的には職務命令や懲戒処分で脅して研修受講を迫る仕組みになっているとし、「脅さなければ教員は学ばないというのが文科省の考えか」とただしました。末松信介文科相は更新制での免許失効を問題と認めず、新制度も「脅しという考えは全くない」などと強弁しました。

 吉良氏は、最終的に懲戒処分となれば脅し以外のなにものでもないと批判。教員人事評価のための期首・期末面談の場で受講履歴に基づく「指導・助言」がされることについて、参考人質疑でも校長によるパワハラへの懸念があがったとし、防止策をただしました。末松氏は「一方的に指導するのではなく校長と教師のキャッチボールで行われるのでパワハラにつながらない」などと述べるだけで、具体的手だてがないことを露呈しました。

 吉良氏は、更新制廃止のための教育職員免許法改定案だけを成立させ、研修の押し付けにつながる教特法改定案は削除する修正案を提出しましたが、否決されました。

しんぶん赤旗2022年5月11日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 本法案でなくすことになる免許更新制についてまず伺いたいのですが、これは教育職員の身分にひも付けて三十時間以上の講習を義務付けるという仕組みでした。中教審のまとめでは、これについて、免許状を更新しなければ職務上の地位の喪失を招きかねない状況で、それが教師の主体的な姿勢、学びの姿勢を発揮することを阻害してきたという指摘をしているわけです。
 また、先日の参考人質疑でも、参考人から、免許更新制のやはりポイントは、その身分にひも付いているというところ、本来は全く別のものだったはずという池田参考人、また、言わば脅し、強制による学びだったと妹尾参考人、講習を受けなければ身分が失効してしまう仕組みというのは課題があったと戸ヶ崎参考人と、三人の参考人それぞれからその問題点が指摘されたところであります。
 一方、先日の本会議で、大臣は、免許更新制の下での十年に一度の講習は常に最新の知識技能を学び続けることと整合的でないことや、座学を中心とした講習では現場に即した学びの実施が困難であるといった課題を挙げたのみでした。
 そこで、改めて文科大臣に伺いたいんですが、この免許更新制は、教員の資質向上、研修制度を教員免許という教職員の身分にひも付けてしまった、その仕組みそのものが間違いだったことであり、それが、そういう仕組みが教員の主体的な学びを阻害する要因になってしまったというのはもはや明白だと思いますが、いかがですか。

文部科学大臣(末松信介君) 

 お答え申し上げます。
 教員免許の更新制は、教師の学びの機会の拡大とか、教師の資質能力の向上に対する大学の関与の拡大など、一定の成果は確かに上げてきましたが、十年に一度の講習というのは常に最新の、今先生も答弁、話ありましたけれども、最新の知識技能を学び続けていくことと整合的ではないこと、座学を中心とした大学の講習では現場に即した学びの実施が困難であることなどが課題と認識をいたしてございます。
 これらの諸課題、近年の急速な社会の変化や教師の研究変化の、環境の、研修環境の変化を踏まえた総合的な判断として、本法案では、研修等の記録や指導助言等の義務付けなど、新たな教師の学びの姿の実現に向けた方策の実施によりまして教員免許更新制を発展的に解消することとしたものでありまして、講習の未講習により教員免許が失効するとの仕組み自体に問題があったとは捉えていないところでございます。

吉良よし子

 仕組み自体に問題があったとは捉えてないというのをおっしゃっていますけど、いや、そんなはずないですよね。この審議まとめ、中教審の審議まとめの中にちゃんと書いてあるわけですよ。免許状を更新しなければ職務上の地位喪失を招きかねないという状況の下で、探求心を持ちつつ自律的に学ぶ、若しくは教師の主体的な姿勢が発揮されてきたと評価することには慎重にならざるを得ないと。
 こうやって身分にひも付ける、講習をひも付ける、身分の失効と講習をひも付けることがやっぱり主体的な学びの阻害要因になっていたというのは中教審のまとめでも指摘されていることですよね。そうじゃないんですか。

文部科学大臣(末松信介君)

 更新の講習、更新講習を受講しなければ教師自身の身分の得喪に関わるという精神的な負担感、時間的な、あるいは金銭的な負担感があったということ、このこと事実でございます。

吉良よし子

 精神的な負担感と言いましたけど、はっきり書いてあるわけですよね。主体的な姿勢が発揮されてきたと評価することには慎重にならざるを得ないと中教審が書いているわけ、まとめで言っているわけですよね。その立場、中教審の立場は認めるわけですよね、文科省は。違うんですか。

文部科学省総合教育政策局長(藤原章夫君)

 免許更新制でございますけれども、これにつきましては、導入以後十年余りが経過したわけでございますけれども、そのときに、こうした十年に一度の講習で、そして最新の知識技能をリニューアルしていくということで始めたわけでございます。そうした中でやってまいったわけでございますが、その後の様々な環境の変化というものがございました。
 そうした中で、より一層個別最適で協働的な教師の学びを実現していく上で新たな研修システムに移行していくことが適切だろうということでこの度の改正になったわけでございますけれども、そうした中で、議論する一つの要素として、必要な教師の確保といった課題もあったわけでございます。
 教師不足ということが今一つの大きな論点になっているわけでございますけれども、そうした中で、免許更新制が一つのこの教師の確保の際の課題になっているというふうな指摘も多数ある中で、この度、総合的な判断としてこの免許更新制を発展的に解消して新しい研修システムに移行するということにしたわけでございますけれども、従前、当初、免許更新制を導入したとき、そのときのこの新たな、そのときのこの身分を失効させるというふうな仕組み自体が問題があったということで考えているわけではないということでございます。

吉良よし子

 中教審のまとめと言っていることが違うなと思うわけです。中教審のまとめでは、そうしたことも踏まえて、様々問題点、課題は指摘されているわけですけど、踏まえて、こういう新たな教師の学びの姿を実現する上で阻害要因となるのが教員免許更新制だと、もう制度の仕組みそのものが間違いだったんだということを指摘している。だから今回なくすことになったんだと思うわけですね。単なる環境の変化だけが理由なわけじゃなくて、制度そのものに問題があったということは、文科省、ちゃんと認識していただきたいと思うわけです、中教審のまとめに書いてあるわけですから。それも認められないというのはちょっと私は理解ができないんですけれども。
 少なくとも、そして、参考人の皆さんからもその制度の仕組みの問題点というのは指摘されましたし、そういう教員の身分を人質に取るやり方が、教員の主体的な学び、この研修制度の主体的な学びというのは大事だということはさんざん言われている、前提だということは確認されていると思いますが、その主体的な学びとは相入れないということが明らかになったと思うんです。
 さらに、この免許更新制、もうほとんどいいことがなかったとか、マイナスの影響の方がもっと、きっと大きかったという意見も参考人の皆さんから出されたところなんですけれども、本法案において免許更新制なくすわけですけど、廃止ではなくて発展的解消とおっしゃるわけです。つまり、継承すべきものがあるということだと思うんですけれども、じゃ、本法案において免許更新制の何を発展させ継承するというのでしょうか。参考人、お願いします。

政府参考人(藤原章夫君)

 教員免許更新制は、教師の学びの機会の拡大、教師の資質能力の向上に対する大学の関与の拡大、良質な学習コンテンツの形成など、一定の成果を上げてきました。これらの成果を踏まえ、当面、教職員支援機構においては、大学等が更新講習を継承して開設する質の高い学習コンテンツに関する情報を提供する一元的な情報提供サイトの構築を予定しております。
 さらに、文部科学省においては、学習コンテンツをワンストップ的に収集、整理、提供するプラットフォームの構築を進めてまいります。このプラットフォームには、教職員支援機構や各教育委員会が開発するコンテンツはもとより、大学や民間事業者等が開発するコンテンツも含めて収集、整理、提供していきたいと考えております。
 これらの取組を行うことで、教員免許更新制の下で生み出された成果を新たな教師の学びの姿を構築する上で発展的に継承していきたいと考えております。

吉良よし子

 まあいろいろおっしゃったわけですけど、要するに、免許更新制から継承するというのは、学びの機会であるとか教員、教師の学びの部分なんだということだと思うわけですね。
 しかし、先ほど来私指摘していますとおり、もうそもそもこの教師の学びである研修とその教員の身分である免許制度をひも付けるということ自体が問題だったわけで、免許制度というのはそもそもこの学びとは全く関係ないものなわけですよ。それを、更新制の発展的解消という文脈でこの教師の学び、研修制度の見直しにつながるという、ここには私、違和感しかないわけです。しかも、今回の法改正で免許更新制により阻害されたとする教師の主体的な学びの姿勢というのが保障されるのか、むしろ阻害される要因がまたつくられるのではないかという懸念があるわけです。
 例えば、中教審まとめ、審議まとめにおいて、先ほど来指摘されていますけど、必ずしも主体性を有しない教員に対する対応として、管理職等の期待する水準の研修を受けているとは到底認められない場合は、職務命令に基づき研修を受講させることが必要と明記され、本会議では、大臣は、その職務命令に従わないような事例が生じた場合には懲戒処分を行うこともあり得るという御答弁があったわけです。
 こうやって最終的には懲戒処分もあり得るんだよという脅しのようなものがちらついていて、果たして教員の主体的に学ぶその姿勢が担保されるのか。大臣、いかがですか。

文部科学大臣(末松信介君)

 お答え申し上げます。
 教師は職務の遂行のため絶えず研究と修養に努めることとされておりまして、教師の研修については自主性は重要であるということは言うまでもなく、このことは本法案によって変わるものでもございません。教育基本法にもこの九条に書いてございます。絶えず研究と修養と書いています。
 本法案では、校長等の管理職と教師が過去の研修等の記録を活用しつつ対話を行いまして、今後能力を伸ばす必要がある分野などの研修について教師から校長等へ相談することや、校長等から情報提供や指導助言を行うことを想定しております。その際、教師が自らの学びを振り返りつつ、適切な現状把握と目標設定の下、自らの研修ニーズや学校の教育課題に対応した必要な学びを行っていくことが期待されるものでありまして、この指導助言については校長等から一方的に指導するのではなく、言わば教師と校長との間のキャッチボールで行われることを基本だと考えているところでございます。
 その上で、校長等の管理職が研修の受講について指導助言を繰り返し行ったにもかかわらず、期待される水準の研修を受けているとは到底認められない場合などには、そういうやむを得ない場合には、職務命令として研修を受講させる必要もあると考えております。
 私は、先生、脅しとおっしゃったんですけど、そこまでは、そういう考え方は全くございません。

吉良よし子

 いや、でも実際には、最終的には懲戒処分という、そういう立て付けになってしまっているわけですよね。それはやっぱり私は脅し以外の何物でもないと思うんですよ。最終的には、管理職の言う研修を受けなければ最終的には懲戒処分があるんだからねというのは、さっき免許更新制で失効するのは精神的な負担ということがありましたけど、同じような精神的負担を与えるような立て付けになっているんじゃないのかと。
 参考人質疑でも、この点について妹尾参考人が、先生方脅さないと学ばないというメッセージを発しかねないじゃないかと、この法律ではという御意見も出されたわけです。だから、私、やっぱりこういうのはおかしいと。先生方を脅さないと教員は学ばないと。もう研修の記録を取り、指導助言しなければ教員は学ばないというのが文科省のスタンスだということなんですか。大臣、いかがですか、もう一度。

文部科学大臣(末松信介君) 

 午前中、先生方にも答弁させていただいたんですけれども、要するに、その合理的な理由なく法定研修や教育委員会が定めた教員研修計画に基づいた全教員を対象にした研修等にも参加しない場合とか、それと、やはり私の友人でも校内研修を高く評価しておるんですけれども、必要なこういった校内研修にも参加しない場合とか、ICT活用指導力など特定分野の資質の向上に強い必要性が認められるにもかかわらず、管理職等が受講を促してもなお合理的理由なく研修を受講しない場合など、こういったことを想定して申し上げているわけでありまして、中教審で専門的な検討を経た上で指針やガイドラインを整備してまいりたいと考えております。十分納得いただけるものにしたいと考えてございます。

吉良よし子

 いや、だから、こういうことをしないと先生方は主体的に学ばないと思われているのかということを聞いているんです。主体的に学ばないんですか、教員の皆さんは。そういう存在だと文科省思っていらっしゃるんですか。

文部科学大臣(末松信介君)

 ほとんどの先生は、主体的にやっぱり高みを目指すというような教師が多うございますので、自分で学びたいと思っておられる先生がほとんどだと私は認識しております。

吉良よし子

 であれば、無理にこんな記録とか指導助言とか、わざわざ、もうほとんど全ての都道府県でそういう記録なんかも行われているのに、わざわざ今回義務化する必要というのはないんじゃないかと私は思うわけです。じゃ、わざわざ義務化するというところに、そういう先生方はこうやって何かしら義務化していかないと学ばない存在だということをこの法案でもって世間に示していることになってしまうじゃないかということを申し上げているわけです。
 先ほど来コミュニケーションだとおっしゃっている指導助言についても伺いたいと思うんですけれども、この本法案によって規定される指導助言というのはパワハラの温床になり得ることもあるということは、パワハラの温床になり得ることもあるということは、衆議院でも、また先日の参考人からも指摘があったところです。
 妹尾参考人は、いい校長たくさんいらっしゃいますけれども、残念ながらそういう校長ばかりではなくて、ハラスメントにつながりかねない、若手等を潰してしまう校長もいるというところを、繰り返しですけれども、非常に心配されている方も中にはいらっしゃって、恐らくこの懸念は当たるであろうというふうに思いますと発言されていたわけです。
 衆議院では、この指導助言について、パワハラに、対話だから、対話の中で行うからパワハラにはならないとか、若しくはパワハラにならない形で行うとの答弁があったところですが、このパワハラにならない形とは何ですかと本会議で私、質問をしましたけれども、それについて明確な答弁がなかったんです。
 改めて伺います。本法案における指導助言をする際のパワハラにならない形というのは一体どういう形なのでしょうか、大臣。

文部科学大臣(末松信介君)

 お答え申し上げます。
 今回の法改正で想定しておるのは、想定しているものは、あくまで教師と管理職等が対話を繰り返す中で、教師が自らの研修ニーズと自分の強みや弱み、今後伸ばすべき力や学校で果たすべき役割などを踏まえながら必要な学びを主体的に行っていくことでございます。
 その際、校長等から指導助言等については一方的に指導するのではなく、校長等が教師からの相談に応じたり、校長等から情報提供を行うなど、言わば教師と校長等とのキャッチボールの中で行われることが基本でありまして、このような形の中で指導助言等がパワハラにつながるものではないと考えております。
 いずれにせよ、パワハラの防止については、労働施策総合推進法によりまして、この三十二条に、三十条の二ですか、事業主に対しまして防止措置が義務付けられているところでございます。今後も様々な、様々な機会を捉えて、同法に基づく指針を踏まえた適切な対応について各教育委員会に指導をしてまいりたいというふうに考えておるところです。御理解いただきたいと思います。

吉良よし子

 まあ、パワハラ防止措置義務が事業主にあるというのは私も承知しています。けれども、そうしてパワハラはあってはならないとする中でも、今回、こういう指導助言という仕組みをあえてこの教職、学校の下に持ってくるわけですから、そこの場でパワハラが起きるじゃないかという懸念があるわけです。それをどう防ぐのかと言ったら、いや、キャッチボールが基本だからパワハラにつながるものじゃありませんよと言われてもですね、現場でそれを防ぐ手だてが何ら示されてない状態じゃないですかということを申し上げているんです。
 そうじゃなくても、学校現場、多忙化の下でパワハラ増えているという訴えも私のところに聞こえてきているわけです。だから、こういう指導助言の場がパワハラの温床になってはいけないわけですから、それを防ぐ具体的な手だてというのがあるのかということを聞いているのですが、いかがでしょうか。

政府参考人(藤原章夫君)

 このパワハラということでございますけれども、先ほど大臣からもお話ししたように、労働施策総合推進法に規定があるわけでございまして、事業主が講ずべき防止措置というものが定められておりまして、その中では、事業主の方針等の明確化及びその周知啓発、相談に応じ適切に対応するための必要な体制の整備、職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応といったようなことが定められておりまして、こうした取組を学校現場も行っているという状況でございます。
 また、あわせまして、文科省からは、パワハラ等の行為が明らかになった場合には厳正に対処することといった内容を通知しているところでございまして、そうしたことがないようにしっかりと取組を進めてまいりたいと存じます。

吉良よし子

 そうじゃなくてですね、本法案で新たにこの研修の指導助言という仕組みを義務付けするわけですよね、現場に対して。管理職が教師に対する指導助言をするという、その場をつくるようにと義務付けをするわけです。その場でパワハラが起きたらどうするのかと、それをどうやってこの法において防ぐのかという話しているのに、いや、労働施策総合推進法で防ぐ手だてをするように言っているからありませんじゃなくて、新しい仕組みを持ってくるときに、どう防ぐのか、防ぐ手だてをどう取るのかということを聞いているんですけれども、もう一度お答えください。

政府参考人(藤原章夫君)

 この度の指導助言でございますけれども、その指導助言については、現場において負担とならないように、期首面談や期末面談などの機会を活用して行うといったようなことを想定しているわけでございますけれども、既にそうした期首面談、期末面談といったものは行われているわけでございまして、この度の指導助言というものが直ちにパワハラ云々というようなことにつながるものではないと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、しっかりと、そうしたことが、パワハラといったことがないようにこれはしっかりと取組をしてまいりたいというふうに存じます。

吉良よし子

 期首面談や期末面談は既に行われているところでやるからパワハラにはならないって、逆に期首面談や期末面談で必ずパワハラは起きてないと言えるのかというのが問題になってくると思うんですね。
 しかも、この期首面談や期末面談というのは人事評価をする面談なんです。その場でこの指導、研修の指導助言をやるということなんですけども、それ、今回の研修についてはこの人事評価の対象にはしないというのがこの間の答弁であるわけですけど、これ人事評価と異なる趣旨だっておっしゃいますけど、同じ場でやったらどこでどう区別を付けるのかというのは現場の校長また教員にとってはかなり困難だと思うんですが、実際にどうやってこの明確に区別をするんですか、その人事評価と指導助言と。

政府参考人(藤原章夫君)

 これは、繰り返し答弁申し上げておりますように、この度の指導助言とそれから人事評価というものは、これはその趣旨と目的が異なるということでございます。
 教員の人事評価というのは、校長等の管理職が日常の職務行動の観察を通じて得られた情報などを総合的に踏まえつつ、各教師が発揮した能力や上げた業績を期末面談等で確認した上で評価を実施するというものでございます。
 このため、研修等に関する記録自体や研修量の多寡そのものが人事評価に直接反映されるものではありませんが、研修を行った結果として各教師が発揮した能力や上げた業績については人事評価の対象になるものと考えております。

吉良よし子

 趣旨と目的が異なるから区別されるんだという御答弁だったと思うんですけど、現場でやられている教員が明確にそれを区別して考えられるのかと。人事評価を受ける面談の場で、これの研修、受けていない研修がありますよ、受けなさいねと言われたときに、それが評価の対象になるんじゃないかと恐れるのは当然じゃないかと思うんですね。それをどう明確に区別付けるのかということを申し上げているんです。
 その評価の対象にはしない、あっ、ちなみに先ほど、参考人質疑、先日の参考人質疑でも、校長経験のある戸ヶ崎参考人ですらこの区別についてなかなか難しいことだろうと答弁されているわけで、難しいんですよ。そのことは本当に認識していただきたいです。
 評価の話に移りますけど、この評価については研修の多寡などや記録自体は評価の対象じゃないと先ほども答弁がありました。一方で、研修の成果については評価の対象だという答弁もありました。じゃ、この研修の成果というのは具体的に何なのか。何をもって成果といって、何によってそれを測って評価していくおつもりか、お答えください。

政府参考人(藤原章夫君)

 研修を行った結果として各教師が発揮した能力や上げた業績、これは人事評価の対象になるということでございます。研修そのものについては、それが評価されるというものではないということだと考えております。
 その上で申し上げますが、研修の成果をどうやって測るかということでございますけれども、これ、教育委員会が実施する研修や教職員支援機構が実施する研修などについては、通常、研修を受講した教師が研修報告書等を提出するなどの方法により教育委員会がその修了状況を確認しているところでございます。この報告書については極力簡素化を図っていくというようなことを先ほど申し上げたところでございます。
 これらの研修も含め、今回新たに設けられる研修記録の作成や資質の向上に関する指導助言の仕組みにおいては、日常的に教師と接しコミュニケーションを図っている校長等の管理職が、期首面談、期末面談等の場を活用しつつ、個々の教師の目標設定を踏まえて研修成果を確認していくということを想定しているところでございます。
 文部科学省としては、今回の法改正に伴い、文部科学大臣が定める資質向上に関する指針の改正を予定しており、その際、研修の内容、態様に応じた成果の確認方法を明確化していきたいと考えております。

吉良よし子

 いろいろおっしゃいましたけど、成果を測るための一つとして、研修報告書の提出ということをおっしゃったわけですよね。午前中の質疑では、そういうレポートを書かせるなんていう負担を与えてはならないじゃないかという議論があったわけですけど、結局そういう報告書の提出も必要になってくるわけじゃないですか、成果を評価するとなるとね。
 大体、それにやっぱり私分からないんですけど、各教師が発揮した能力や上げた業績を評価すると言いますけど、その能力や業績というのは具体的に何なんですか。

政府参考人(藤原章夫君)

 それは、能力や業績、これはそのケースにおいて様々だと思いますけれども、現行の人事評価制度の中で、どういった仕事をやってきたのか、達成したのかという中で発揮された能力、それから業績については、これは自ら立てた目標があるわけでございますので、そうした目標がどのように達成されたのかといったようなことを評価していくと、こういったものだろうと考えております。

吉良よし子

 具体的に何なのか、さっぱり分からないんですよね。
 しかも、仮に何らかの業績を上げた教師がいたとして、じゃ、それが研修を行った結果だとなぜ言えるのか。結局、その教師がどれだけの研修受けているのか、都道府県教委の作成した指標や計画に基づいた研修を受けているのかどうかというのが最終的な評価の対象になるということじゃないんですか。

政府参考人(藤原章夫君)

 繰り返しになりますが、研修量の多寡そのものが人事評価に直接反映されるというものではないと考えているところでございます。
   〔委員長退席、理事堂故茂君着席〕
 その一方で、研修を行った結果として各教師が発揮した能力や上げた業績については、これは人事評価の対象になるということでございます。

吉良よし子

 多寡は評価の対象としないというけれども、研修によって、研修による成果というものが何なのかというのが判然としない中で、現場でやることといったら、結局、記録を取った、その研修の記録を基に、その多寡というのも評価の対象になってしまうことはあり得るんじゃないかという、そういう懸念だと思うんです。
 ちなみに、確認したいと思うんですけど、今回、研修の記録に優先して記録される研修とは何なのかと。これ、各都道府県が策定している、都道府県教委が策定している教員育成指標と教員研修計画に基づく研修というものがやっぱり優先的に記録されると、そういうものでよろしいですか。

政府参考人(藤原章夫君)

 改正法案第二十二条の五においては、都道府県教育委員会等が行う研修等に関する記録について、初任者研修や中堅教諭等資質向上研修、教員研修計画に基づき実施する研修を受講した状況、それから大学院レベルの専修免許状の取得のために必要な課程で学んだ状況、他の学校種の免許状の取得に必要な講習等を受講した状況、その他都道府県教育委員会等が記録の必要があると認めたものを記録することとしておりますが、この中で記録の優先順位を定めているものではございません。

吉良よし子

 優先順位定めていないということですが、先ほどのその二十二条の五の二項では、研修等に関する記録には当該校長及び教員が受講した研修実施者実施研修に関する事項を記載するものと、研修実施者実施研修というのがつまりはこの育成指標や研修計画に基づく研修なんじゃないんですか。

政府参考人(藤原章夫君)

 今御指摘ありましたように、こちらの二十二条の、二十二条の五の方で、第二項で、一号から四号まで掲げてあるわけでございます。
   〔理事堂故茂君退席、委員長着席〕
 そして、その第一号では研修実施者実施研修というものが定められておるわけでございますが、そして第四号ではその他任命権者が必要と認めるものというふうなことが書いてあるわけでございますけれども、先ほど答弁申し上げましたのは、この一から四号まであるわけでございますけれども、優先順位を定めたものではないということでございます。

吉良よし子

 優先順位定めていないと、その他の研修も書くんだと言いますけど、この法律にしっかり書かれているのはこの研修実施者実施研修なんですよ。それというのは、やっぱりこういう都道府県教委が作成した教員育成指標とか研修計画に基づく研修のことだと思うわけです。それがやっぱり優先されて、それは必ず書かれるということになるわけで、その他については各任命権者が定めるということになっているわけで、結局、そうなると、その記録に基づいて指導助言しますといえば、その記録、つまり実施者研修、都道府県教委の定めた研修が優先されて、その研修を受けなければならないということがまずは優先されることになるんじゃないかということを申し上げているんです。
 ちなみに、この教員育成指標については参考人からも批判の声が上がりました。例えば、池田参考人は、もう現場の子供がいることを忘れているんじゃないかと、その現場の課題から研修が始まるのに、外側から、このときはこういう時期で、こういう時期でと言えるはずがないと、こういう研修を受けたらすごくいい先生ですということはもうあり得ないという、そういう批判もありますし、妹尾参考人からも、こういった指標はどうしても具体的に書けば書くほど古くなるし、もう何のためにやっているか分からないというようなこともありますので、もう削除してもいいかなと思っているというような意見もあるぐらい、画一的で現場の課題から離れたような指標や計画に基づいた膨大な研修、これを優先的に記録して、指導助言で押し付ける、これが本法案の趣旨になってしまうんじゃないか、教員の主体的な学びから懸け離れたものになってしまうんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

文部科学大臣(末松信介君)

 平成二十八年の教育公務員特例法の改正によりまして、全ての都道府県教育委員会等におきまして教員育成指標とこれに基づきます教員研修計画が策定されまして、教師の資質能力の向上のための体系的、計画的な研修が充実してきたと考えております。
 社会の急速な変化等を踏まえまして、これからの教師の学びの在り方としては、まあ何度も使われる言葉でありますが、主体的な学びや個々の教師のニーズ、課題に対応しました個別最適な学びのほか、単に知識技能の修得だけではない教師間での協働的な学びや、地域や学校現場の課題に対応した多様なスタイルの学びなどが必要でございます。
 今回の改正法案では、教師の職責や経験、適性に応じた資質の向上が図られるよう、管理職等が一人一人の教師に対して資質の向上に関する指導助言等を行うこととしておりまして、これにより従来より幅広い多様な学びが実現されるものとは考えております。したがいまして、教員育成目標と研修計画に基づく研修を押し付けることが本法案の趣旨ではないのかという厳しい御指摘は当たらないものと考えてはございます。

吉良よし子

 指摘は当たらないということですけれども、もうこの指標や、育成指標や研修計画というのが体系的な学びになったんだということもおっしゃっていたかと思うんですけれども、先ほどおっしゃったその個別最適な学びとか現場の課題に対応した学びとは到底言えないものだよということを参考人の皆さんは指摘されていたわけなんです。
 もう妹尾参考人なんかは、こうした書類に書けば教員は良くなると、教員は育つというようなそんな甘っちょろい前提は捨てられた方がよろしいとまでおっしゃっていたわけで、そういった、この何か体系をつくって、それを記録させて、それを受けなさいと指導助言していけばいい教師が育つみたいな、そういうやり方はやっぱりおかしいし、しかもそれを義務付けして現場に押し付けるというやり方というのは私は到底賛成できない。これは主体的な教員の学びを応援するものとは到底言えないと思うんです。
 教員の研修について今問われているのは、こういう膨大な研修を現場に押し付けるということじゃなくて、個々の教師が自主的、自律的に学び、研修できるゆとりと時間をどうやって保障するかということなわけです。そういう意味では、持ちこま数なんかが本当に増えていて、業務ばっかり増えていくという現場の疲弊している状況もあるわけですから、それを、この持ちこま数を減らしていって、教職員を抜本的に増員する、教職員定数改善こそ必要だと思いますが、最後、大臣、いかがですか。

文部科学大臣(末松信介君)

 学校における、今先生、働き方改革の話であったと思います。学校における働き方改革に資するように、文部科学省でもこれまでも教職員定数の改善に努めてきたところでございます。
 令和四年度予算では、小学校第三学年の学級編制の標準を三十五人に引き下げるために三千二百九十人や、通級による指導等の充実に必要な三百七十人の基礎定数の改善を盛り込むとともに、専門性の高い教科指導による教育の質の向上であるとか、先生御指摘の教員の持ちこま数軽減など、学校における働き方改革のため、小学校高学年における教科担任制の推進等、必要な千三十人の加配定数の改善も盛り込んだところでございます。
 また、小学校高学年の教科担任制につきましては自治体間での取組状況が様々でございまして、文部科学省としては、各地域や学校の実情に応じた取組が可能となるよう、四年程度掛けてではございますが、段階的に取組を推進することとして、その間の改善総数三千八百人程度を見込んでございます。
 教職員定数の改善に努力はしたい、してまいります。

吉良よし子

 教員の主体的な学びを保障するためには、やっぱりゆとりと時間をいかに保障するかと、このことの議論こそが必要だということを改めて申し上げまして、質問を終わります。

<修正提案 趣旨説明>

吉良よし子

 私は、日本共産党を代表して、教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
 修正案提案の趣旨及びその内容について御説明を申し上げます。
 教員免許更新制は、二〇〇七年に導入したものでありますが、我が党は、当時から一貫して、免許更新制に反対してきました。
 政府原案は、免許更新制を廃止するものですが、それだけではなく、教育職員の研修の押し付けにつながる施策も併せて導入するものです。この部分には到底賛成できません。教員が、自主的、自律的な研修を行うことができる環境の整備、教職員の定数改善、労働環境の改善、教員の処遇の改善など、実施すべき施策は山積しています。
 そこで、免許更新制の導入が誤りだったことを明確にし、二〇〇七年以前の状態に単に戻すという趣旨を明確にするため、次のような修正案を提出することといたしました。
 すなわち、政府原案のうち、教育公務員特例法の改正部分を削除し、これに伴い、法律の題名を教育職員免許法の一部を改正する法律とするものです。
 以上が修正案提案の趣旨及びその内容でございます。
 何とぞ、委員各位の御賛同をいただけますようお願い申し上げまして、提案の理由説明とさせていただきます。

<討論>

吉良よし子

 私は、日本共産党を代表して、我が党提出の修正案に賛成、内閣提出の教育公務員特例法等改正案に反対の討論を行います。
 本法案は、新たな教師の学びの姿を実現するためと称して、教員免許更新制をなくす代わりに教員の研修履歴の記録管理等履歴を活用した指導助言を義務付けるものです。
 免許状の失効という教育職員の身分にひも付けて三十時間以上の講習を強制する免許更新制はもはや制度的に破綻しており、何の条件もなく直ちに廃止するのが当然です。にもかかわらず、発展的解消などと強弁し、更新制をなくす代わりに研修の記録の作成や指導助言の実施で国の方針に基づくあるべき教員像を現場に押し付ける仕組みを一層強化し、教員への管理統制を強めようとしていることは看過できません。
 本法案で新たに義務付けられる研修の記録は、国が策定する資質向上指針を参酌して都道府県教育委員会などが策定する教員の資質向上指標及び教員研修計画などに基づく実施者実施研修が優先されることは明らかです。
 さらに、この記録に基づいて管理職により行われる指導助言は、期首面談や期末面談など、人事評価の面談において行うことが想定されています。人事評価の場での指導助言は、実施者研修など教育委員会、管理職の意に沿う研修を受けなければならないという圧迫感、義務感、そんたくにつながり、パワハラも懸念され、事実上の強制になりかねません。
 文科省は、本法案において、これら研修の記録自体やその多寡は人事評価の対象としないと言いながら、研修の成果は人事評価の対象となるとしており、結果として、研修の記録自体やその多寡も人事評価の対象になる可能性は否定できません。また、必ずしも主体性を有しない教員に対して職務命令に基づく研修の受講、場合によっては懲戒処分もあり得るという脅しまでちらつかせる制度の仕組みは、教員の主体的な学びとは相反する研修の押し付けと言わざるを得ず、到底賛成できません。
 制度的に破綻している教員免許更新制を無条件に廃止し、教職員の定数改善始め深刻な教員の長時間勤務を是正し、全ての教員が自主的、自律的な研修を行うことができるゆとりと時間を保障することこそ必要であると申し上げて、討論を終わります。