【国際卓越研究大学法案質疑・討論】「稼げる大学」授業料上げも 高等教育無償化に逆行
要約
参院文教科学委員会は17日、大学ファンドから支援を受ける大学を国際卓越研究大学として認定する法案を自民、公明、維新、国民民主の各党の賛成で可決しました。日本共産党の吉良よし子議員は、認定した数校だけを対象に巨額の助成をすることと引き換えに「稼げる大学」へ変質させ、規制緩和で授業料の値上げまで認める問題を追及し、反対しました。
吉良氏は、規制緩和を政府が卓越大学に認めようとしている理由を質問。文部科学省の池田貴城研究振興局長は「経営の自律性を高めるため」とし、稼げる大学に向けた財政基盤確立の一環だと認めました。
吉良氏は、現在国立大学の授業料は国が定める標準額の120%が上限だが、上回る設定も可能になると強調。高等教育の漸進的無償化に逆行していると批判しました。末松信介文科相は「慎重に検討を行う」とし、上限額を上回る引き上げを否定しませんでした。
吉良氏が支援期間を尋ねると、池田氏は15年以上の長期支援が必要と答弁。吉良氏は数校への支援が固定化されると批判しました。
吉良氏は、卓越大学に認定された大学では学外者が半数以上を占める「合議体」が学部や学科の再編に取り組むことになると指摘したのに対し、末松氏は各大学が「自主・自律」で取り組むと答弁。吉良氏は、年3%の事業成長の達成に向け議論する合議体が学長の上に置かれれば、もうからない研究が淘汰(とうた)対象になるのは明らかだとし、「学内の意見をないがしろにし、大学自治を破壊するものだ」と批判しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
現在、研究力を測る主要な指標である論文数や注目度の高い論文数について、我が国の国際的な地位は低下が続いていて、その背景に、大学における若手研究者の任期付きポストの割合が増加し雇用が不安定化していること、大学等教員の研究時間が減少していること、長期にわたって安定的な研究資金が不十分であること等が指摘されていて、だから本法案で大学ファンドの運用益で支援をするというわけですが、この支援される国際卓越研究大学の数というのは、先ほど来指摘があるとおり、数校にとどまるわけです。
これで日本の研究力全体が本当に底上げされると考えているのでしょうか。大臣、いかがですか。
文部科学大臣(末松信介君)
今般の大学ファンドからの国際卓越研究大学への支援は、諸外国のトップレベルの研究大学との資金格差を縮めるため、一校に対しまして数百億円規模の集中的支援を行う必要があることから、対象を数校程度に限ることといたしました。
一方、我が国全体の研究力の強化には、トップレベルの研究大学の支援のみならず、その基盤となる優秀な人材育成とか、あるいは、全国の大学が個々の強みを伸ばしまして、各大学のミッションの下に多様な研究大学群を形成することが重要であると考えております。このため、大学のファンド運用益からは、先ほど申し上げました全国の優秀な博士課程学生の支援ももう既に実施をいたしておりまして、二百億、四百億と、全部で六百億の援助を行ってございます。これファンドからです。
また、ファンドによる支援以外にも、世界トップレベル研究拠点プログラムや共創の場形成支援プログラムなど、基になります地域の中核大学への特定分野に強みを持つ大学への支援策など、総合振興パッケージとして同時に講じることといたしているところでございます。
運営費の交付金の基盤的経費を含む従来への支援策も引き続き重要でございますので、しっかりとあらゆる施策を動員、総動員しながら対応いたしてまいりたいと思ってございます。
吉良よし子
ほかの施策もやるしと、若しくは若手研究者に対しては全部で六百億円支援もするしと、だからというお話、大丈夫だというお話だったかと思うんですけれども、そういう若手研究者、全部で六百億ですよ。一方で、大学ファンドは一校につき数百億ですよ。やっぱり予算規模見ると全然規模が違うわけですよね。ほかの施策パッケージ支援といっても、それだって予算規模小さいし、それすら受けられない大学だって出てくるわけで、これで私、全ての研究力、日本の研究力全体が底上げされるものとは到底思えないわけですが。
この国際卓越研究大学認定の仕組みについても伺っていきたいと思うんですが、これ認定する際には、具体的な目標と大学の成長戦略などを記載した計画を提出していただき、文科大臣が認可をする仕組みだという説明がこの間されているわけです。
要するに、この認定、認可のためには計画の提出が必要という立て付けなわけですが、じゃ、この計画というものの、ちょっと質問通告飛ばしますが、この計画というものの期間、この期間はどの程度の期間を想定されているのでしょうか。
文部科学省研究振興局長(池田貴城君)
お答え申し上げます。
世界と伍する研究大学を実現していくためには、支援対象大学の研究基盤の抜本的な強化や若手研究者への長期的、安定的支援を行っていくことが重要でございますので、短期的な成果主義に流されないよう、その活動を長期的に後押しすることが必要であり、また、財務基盤が十分に、各大学の財務基盤が十分に強化されるまでには時間が掛かることから、継続的、安定的に支援を行うことを考えております。
こうした趣旨や、それからこれまで行ってきた既存のプロジェクトなどの支援期間などを踏まえると、大学ファンドからの支援期間については一定程度の長期性を有する必要があると考えております。
吉良よし子
一定程度の長期的って、具体的に言うと何年ぐらいなんですか。
政府参考人(池田貴城君)
具体的に何年ということは、今後、これからルールの詳細については関係府省とも協議して決めてまいりますが、これまで、例えば長いものでWPIがございました。これは原則十年で、成果が上がっている場合は十五年、五年延長が可能でございますので、少なくともこういった既存の事業よりは長い期間が想定されるかと思います。
吉良よし子
要するに、長い支援が必要だし、計画自体も、十年で終わるというよりは、もう十五年、それ以上の期間の計画を立てて、それに基づいて支援をしていくという話になるわけですね。
だから、先ほど、将来的に卒業ということもあり得るし、若しくは認可の取消しもあり得るわけで、多少の入替えもあるよねみたいなお話ありましたけど、多少の入替えあったとしても、要するに、世界に伍する研究大学にならない限り支援は終わらないし、それはもう五年とか二、三年とかいう話ではなくて、十年以上、十五年とか二十年とかそういう長い、これまでにない異例の長い期間の支援に、しかも数校に限定した支援になるというわけで、これ、要するに、国際卓越研究大学という僅か数校の大学というのはかなり長期にわたって固定化するということになるんじゃないですか。大臣、いかがでしょう。
文部科学大臣(末松信介君)
最初に、先ほど先生に答弁の中で、博士課程の支援ですけれども、基金でございます。大学ファンドじゃなくて、基金でございます、二百億と四百億、六百億は。訂正をいたします。申し訳ありません。
それで、お答えでありますけれども、世界と伍する研究大学を実現していくためには、支援対象大学の研究基盤の抜本的強化や、若手研究者への、今話ありましたように、長期的、安定的な支援を行っていくことが重要でございまして、大学ファンドからの支援期間は確かに一定度、一定程度長期を有する必要があると考えてございます。
そうした中で、我が国の全体の研究力強化のため、大学ファンドの運用益は、国際卓越研究大学への支援のみならず、今申し上げましたように、博士課程学生への支援も実施をいたします。加えて、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学への支援策を総合振興パッケージとして同時に講じることといたしてございます。
いずれにしましても、将来的に、ファンドからの支援の対象大学におきましては自律的な財政基盤の構築が進んで支援から卒業するとともに、新たに国際卓越研究大学として認定される可能性のある大学が出てくるものと想定をいたしてございます。
吉良よし子
一定程度長期的な支援になるということを否定されていないわけで、要するにそれはやっぱり数校固定化したままの支援だということが前提だと思うわけですね。やっぱりそこに、じゃ、いきなり条件満たしたから十校増やしますとかそういう話には決してならない、もう数校が数十年、数百億円支援が続く、そういう数校だけに特化して半永久的に支援する、そういうやり方ではやっぱり日本の研究力全体の底上げという話ではないと思うんです。
昨日、この法案の廃案を求める大学横断ネットワークの皆さんによる集会がありまして、そこでもやっぱり、特定少数の国際卓越研究大学のみに資金を投入することによって研究力の指標とされる論文数が挽回できるとは考えられないと、そういう指摘もあったわけで、これでは話にならないと、研究力を底上げするという本来の目的とは全く懸け離れた事態になるよということを指摘したいと思います。
また、その計画についてもう一つ伺いたいんですが、衆議院などでは、文科大臣は、大学ファンドによる支援の前提として、大学のビジョンに基づき大学自ら作成した計画が、この基本方針、要するに、国の定めた基本方針に定める体制強化の目標や計画の認可に関する基本的な事項と適合していることを確認すると答弁があったわけです。
つまり、作成する計画というのは国の方針に沿う体制を強化しなきゃいけない、これまでの今までどおりの取組じゃ駄目で、国の方針に沿った新しい取組を、体制をつくらないと認められないと、そういうことでよろしいですか。
政府参考人(池田貴城君)
私からお答えさせていただきます。
まず、国の方針と申し上げましたけれども、先ほど来答弁いたしているように、特定のこの分野の研究をやらなければ駄目ということを国が示すわけではございません。そういった分野を特定せず、研究の充実と、それから事業戦略をしっかり、事業戦略と財務基盤をしっかりしていただくということと、ガバナンス、その三点を中心に具体的にポテンシャルを見ていただくということになってございます。
もう一つは、これはこれまでの基盤的経費に加えてこのファンドの支援という、基盤的経費や競争的資金に加えて大学ファンドによる支援を追加的に行うものでございますので、そうしたことを踏まえて、各大学が明確なビジョンに基づく研究基盤の強化の計画を策定していただくということにしております。
吉良よし子
要するに、これまでにない体制つくらなきゃいけないし、国の方針に従うといっても、研究内容にどうこうするわけじゃないとおっしゃいますけど、でも、その中に、先ほど来の議論の中にある三%の事業成長とか、そういうことが含まれるわけですよね。それがやはり政策誘導だと思うし、午前中の質疑等でも、CSTIという総合科学技術・イノベーション会議が結局その意見が反映されるということもしているとおり、やっぱり国の要望、関与というのが強くなると思うんです。研究者の皆さんからも、そういう、この仕組み自体が研究への政財界の関与が著しく進むと、利権の温床にもなるんじゃないかと、そういう指摘も出されているわけで、これも本当に問題だと思うんです。
そして、先ほど、事業成長だけじゃなくて、研究の充実と、そしてガバナンスが必要だって話もありました。このガバナンスについても伺いたいんですけれども、この国際卓越研究大学では新たに安定的、継続的な経営方針が可能な合議体、ガバニングボードとしての意思決定機関を持つことが適当とされているわけですけど、なぜこうした合議体設置しなければならないのか。また、この合議体というのは、国立大の場合は構成員の相当程度、半数以上が学外者とすることが適当となっていますが、なぜ学外者半数以上なのか。またあわせて、教学と経営の分離というのもどうしてそれ分ける必要があるのか、御説明ください。
政府参考人(池田貴城君)
お答え申し上げます。
世界と伍する研究大学の実現に当たっては、大学には、学内外の英知を結集してビジョンを明確化し、社会からの支援や、支持や支援を得て、それによって自律的に成長していく好循環を形成することが求められます。
このようなビジョンに基づく長期の成長戦略を実行していくためには、合議により経営を行う体制を構築し、安定的、継続的な経営方針の下、長期的視点に立った研究や人材育成を行っていく必要があります。また、財源の多様化に対応した利益相反の管理など、組織的なコンプライアンスの確保、強化も重要と考えております。このため、国際卓越研究大学には、経営方針の決定などに関する合議体の設置を求めることとしております。
また、合議体の役割を踏まえれば、合議体の構成員としては、当該大学の教育研究に関する専門性を有する者に加え、例えば国内外の大学の経営や国際展開、研究成果の活用、財務戦略に関する専門家、また法律や会計に関する専門家などが入ることも想定されます。こうしたことから、国際卓越研究大学の制度設計を担った文部科学省の有識者会議の報告書においては、合議体の構成員のうち相当程度、例えば過半数、半数以上などは学外の人材となることが想定されるとされたところでございます。
また、国際卓越研究大学において、多様な財源の確保等による強固な財務基盤の確立や優秀な研究者の獲得、研究者が研究に専念できる研究環境の実現等のためには、経営の執行責任者を有する大学の長と、教学に責任を負う教学担当役員、プロボストの役割分担により、経営機能と教学機能のそれぞれ大幅に強化していくことも求められます。
このように、国際卓越研究大学には、合議体の多様で専門的な知見を有効に活用することや経営と教学の役割分担により、研究力の強化につなげていただきたいと考えております。
吉良よし子
要するに、成長戦略をつくるために合議体が必要で、その成長戦略にたけた外部の意見が必要だから外部の学外者が半数以上じゃなけりゃいけないと。教学と経営の分離と言うけれども、要するに経営の方にはできる限り教学には口出してほしくないということも表れているんじゃないかと私は思うんですけど、そうやって学内の意見を聞かないまま、学内の資源配分を含めたそうした中身、大学の再編を学外者が主体の経営が決めていく、そういうふうにしてこの学部、学科、研究領域の再編をとにかくやり抜く、それを求めるのがこの合議体の役割と、そういうことですか。大臣、いかがでしょうか。
文部科学大臣(末松信介君)
国際卓越研究大学におけるこの合議体の設置につきましては、大学内外の英知を結集したビジョンの明確化とともに、社会からの支持、支援によります成長の実現、そして長期的視野に立った研究や人材の育成、財源の多様化に対応した利益相反の管理などの組織的なコンプライアンスの確保及び強化でございますので、そういう点では、先生が御指摘をされた部分とはここは一致するわけなんですね。
どのような分野の研究基盤をどのように強化をするかについては、これは自ら定めるビジョンに基づきまして、私は自主自律という言葉を、自主的、自律的という言葉を衆議院の答弁でもよく使いました。だから、このビジョンに基づきまして、大学の強みや国内外の研究動向も踏まえながら、各大学において検討されるべきものであります。
この検討の中で、必要に応じてその大学の学部、学科、研究領域の再編も含め具体策が講じられるものと思っておりますけれども、合議体そのものの存在が学科、学部の再編を促すものでも何でもございません。それだけは、先生、ここは御意見いろいろとあろうかと思いますけど、必要でございます。
諸外国のトップレベルの研究大学では、事業規模を広げて中長期的な視点で資源配分も可能となり、新たな学問領域の創出も含めて学術研究、基礎研究の展開をしていきたいと、そのように考えてございます。
吉良よし子
合議体そのものが再編を促すものじゃないとかおっしゃいますけど、やっぱり合議体は今度学長より上に置くと、権限としては最高の意思決定機関にするという、そういう話になっているわけですから。そこで、自主自律なんて言いますけど、課されているのはやっぱり事業成長三%という目標なわけで、そこを目指すための会議、議論がされるというのがこの合議体で、その目標に沿っていけば、やはりもうからないような研究というのは淘汰の対象になっていく。しかも、そこの合議体のメンバーは半数以上が学外者というところでいえば、学内の意見というのが通りにくくなる、もう学内の声が本当にないがしろにされる、大学の自治が壊されるという事態になるんじゃないかということを指摘しているわけなんです。
本法案に反対する署名、昨日もその集会あったと言いましたが、それはこの一か月、約一か月の間に一万八千筆も集まっているわけです。その最大の主張は、こうしたガバナンスの問題であるとか、国の方針をどんどん押し付けることになるじゃないかとともに、本法案によって学ぶ場である大学を稼げる大学へ変質させるんじゃないかと、そういうものなんです。
その点に関しては、やっぱり規制緩和の問題があると思うんですが、この国際卓越研究大学、特に国立大学については基金の積立てを可能とする仕組みの創設、長期借入れや債券の発行要件の緩和といった事項のほか、国立大学法人が業務として子会社を設置し資産運用を可能とすること、さらには授業料まで規制緩和を行うということをしている、となっているわけですけれども、なぜこの規制緩和、行うのでしょうか。
政府参考人(池田貴城君)
お答え申し上げます。
国際卓越研究大学には、大学独自基金を造成するなど自律的な財政基盤を確立し、将来的には大学ファンドの支援から言わば卒業していただくと、持続的に事業規模の拡大を図る大学へと成長していただくことが期待されております。このため、規制緩和は経営の自律性を高めていくためには不可欠なものであると考えております。
具体的に、先ほど申し上げた文科省の有識者会議においても、大学のニーズも念頭に置いて必要な措置を検討しておりまして、例えば、今御指摘をいただいた授業料設定の柔軟化、長期借入や債券の発行要件の緩和、大学所有資産の活用における認可の緩和といった事項が挙げられております。
文部科学省としては、引き続き関係者からのヒアリングや意見交換を通じ、また現場の具体的なニーズを把握しつつ必要な対応を検討するとともに、国際卓越研究大学から規制緩和を提案していただく機会も設けるなど、こうしたことを積極的に進めてまいりたいと考えております。
吉良よし子
要するに、この事業成長のための自律的な財政基盤を確立するための規制緩和だとおっしゃるんですけれども、財政基盤の確立というんだったら、この間ずっと運営費交付金を削減してきて財政基盤を壊してきたと、そのことをやっぱり文科省は反省すべきだと思うんですよ。そうやってお金ない状態にしておいて、あとはもう大学自ら稼いでくださいという。本来、大学は学ぶ場であって、そこに稼げるかどうかという視点を持ってくること自体、やっぱり大学の在り方大きくゆがめるんだということを私指摘したいと思うんです。
そして、この規制緩和、やっぱり見過ごせないのが授業料の部分なんです。先ほどの答弁なんかでも、単に事業規模を拡大するための授業料の値上げなどは想定していないという御答弁もあったわけですけど、一方で、教育研究内容の充実を目的として追加的な費用を要する高度な研究プログラム、教育研究プログラムを提供する場合など、合理的かつ対外的に理解を得ることができる特別な事情があった場合には、授業料の値上げを行うことは一義的に否定されるものではないという答弁もあるわけです。
つまり、世界と伍する大学を目指すために必要な特別な教育カリキュラムを設置しますからとか、海外から講師呼んできますからとか、そういう理由を説明する、しさえすれば、国立大学であっても、現状は標準額の一二〇%が上限とされている授業料設定、これを上回る設定も可能にしていくと、そういうことになるんじゃないですか。局長、いかがですか。
文部科学省高等教育局長(増子宏君)
お答え申し上げます。
国立大学の授業料につきましては、国立大学法人の自主性、自律性を持たせながら、教育機会均等、計画的な人材養成を実現するとの観点から、適正な水準を確保するため、文科省令により標準額が定められておりまして、標準額の一二〇%までの範囲内で定めることができるとされております。
国立大学の授業料設定に関する規制緩和につきましては、今回の制度改正に当たって開催した有識者会議におきまして、追加的な費用を要する特に高度な教育研究プログラムを提供する場合など、その必要性について対外的に理解を得ることができる特別の事情がある場合に、授業料の設定の範囲をより柔軟にできるようにすることが考えられるとされております。
ただ、具体的にどのように、どのような場合に柔軟化を行うかに関しましては、今回の制度改正に当たって開催した有識者会議におきまして、授業料水準について国の一定の関与が必要とされる現行の制度趣旨を踏まえてなお、授業料の上限を弾力化する理由があるのか、経済条件により教育機会に制限が掛かる懸念があるかどうか、そういうことについて留意事項が指摘されているところでございます。こういう留意事項を踏まえながら検討するということが必要になると思います。
いずれにしましても、経済状況によって教育機会に制限が掛かることが望ましいことではないので、各大学においては、引き続き、経済的理由によって授業料の納付が困難な学生に対しまして経済的負担の軽減を図るための必要な措置が講じられるべきと考えているところでございます。
吉良よし子
様々留意事項はあるものの、結局、そういう、現状は取りあえず一二〇%までは引き上げられるという、そういう枠もあるわけですが、ただ、やっぱりそれを上回るということも検討することはあり得ると、そういうお話だったと思うんですね。
要するに、少なくとも一二〇%以内の範囲であれば、もう規制緩和することもなく、国際卓越研究大学においてその納得、合理的な理由さえ説明すれば、学費値上げ行われることは否定されないってことなわけです。いや、国際卓越研究大学になれば、もうそこに通う学生は無償になりますよとか給付奨学金が出るよというならまだ分かるんですけれども、特別のプログラムつくるからもう授業料値上げ容認されるなんということになったら、もう本当、その学生、若手研究者への大きな負担になると私は思うわけです。若者の選択肢を狭める可能性があるんじゃないかって昨日も学生が言っていたわけなんですけれども、そうはいっても、国際人権規約で学費の漸進的無償の留保も撤回しているわけです、政府は。
そういう大学無償化というところとこの値上げを可能というこの本法案の立て付けというのは矛盾すると思いませんか。大臣、いかがですか。
文部科学大臣(末松信介君)
増子高等教育局長から答弁ありましたが、国際卓越研究大学となりますこの国立大学法人における授業料設定の柔軟化につきましては、今後慎重に検討を行ってまいります。
一方で、文部科学省では、真に支援が必要な低所得世帯の学生に対して、確実に授業料が減免されるような大学を通じた支援を行うとともに、学生生活の費用に充てるため給付型奨学金を支給する高等教育の修学支援新制度は令和二年四月から開始をいたしました。この制度の導入によりまして、全体としては、学生に対する支援の規模、金額は大幅に拡大しておりまして、高等教育の漸進的無償化の趣旨にかなうものと認識をいたしてございます。
国際人権規約に定めます高等教育の漸進的無償化を踏まえまして、今後とも経済的理由により学生が修学を断念することがないように、教育費の負担の軽減に努めてまいりたいと思います。
衆議院でも宮本先生にいろいろと御指導をいただきました。
吉良よし子
かつては、若手研究者、研究の道に入って十五年たてば奨学金の返還免除できるという制度もあったわけです。現在は一部の成績優秀者に限られているわけですが、若手研究者支援というのであれば、まずそういう返還免除の復活とか、もう学費そのものも全体的に下げていくとか、入学金なくすとか、もう広くあまねく学生、院生の負担をなくす支援を広げることこそ必要であるということを申し上げ、質問を終わります。
<反対討論>
吉良よし子
私は、日本共産党を代表して、国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案に反対の討論を行います。
本法案は、国際的に卓越した研究の展開及び経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が相当程度見込まれる大学、僅か数校を国際卓越研究大学と認定し、大学ファンドによる運営費交付金に匹敵する巨額な助成と引換えに、認定大学に新たなイノベーション創出と三%以上の事業成長などを求め、稼げる大学への変質を強固に迫るものです。これは、選択と集中を未曽有の規模で一層強化し、認定された大学では研究分野の過剰偏重、イノベーション創出に直結しない教育研究分野の縮小や淘汰も起きかねず、自主性、自律性、多様性が尊重されるべき大学の在り方を大きく変える危険があります。
また、本法案の事業支援は十五年以上の長期支援が予定されており、僅か数校への支援が長期固定化される懸念があり、本法案の目的でもある日本の研究力全体の底上げにはつながりません。
さらに、本法案では、国際卓越研究大学となる大学には事業成長を達成するためのガバナンス改革が求められており、大半を学外者が占める合議体を最高意思決定機関として、大学運営の面からも稼ぐ大学へ変質させるものです。合議体の経営戦略に基づき学内の資源配分や学内再編を進めることは、教育及び研究の特性が尊重されるべき自主自律に基づく大学運営、大学自治を破壊するものであり、容認できません。
さらに、国際卓越研究大学には経営に関する規制緩和も認めており、稼げる経営体への転換を迫られる大学が学費の値上げに着手する可能性があることを文科省は否定しませんでした。漸進的な無償化に反する学費値上げを容認することは認められません。研究力の向上というなら、国立大学運営費交付金や私立大学経常費助成など、基盤的経費の増額による高等教育全体の公的支援を厚くし、学費の無償化に踏み出すべきです。
大学が個性豊かに多様性を持って自主的、創造的な営みができるよう、社会発展に寄与する学術研究の基盤をしっかり支える支援こそ必要だということを申し上げ、討論といたします。