【対政府質疑・意見表明】CO2削減目標の引き上げ、再生可能エネルギーの拡大、SDGs達成を
要約
【対政府質疑】
吉良よし子参議院議員は、4月19日の参院資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会で、CO2削減目標の引き上げ、再生可能エネルギーの拡大について政府の姿勢をただしました。
4月15ー16日、G7気候・エネルギー・環境相会合の共同声明では、2035年に温室効果ガスを19年比60%削減する緊急性が強調されました。日本に当てはめると2035年に13年度比66%削減が求められることになります。吉良氏は目標引き上げなど声明を踏まえた対応を求めましたが、山田美樹環境副大臣は、目標引き上げには言及しませんでした。
吉良氏はCO2削減達成の鍵となる再生エネルギーの導入拡大、加速を求めました。
【意見表明】
吉良氏は、同調査会の意見表明で、今こそエネルギーの輸入依存を脱し、エネルギー自給率を高める必要性を強調。「そのためにも、思い切って再生可能ネルギーの供給を引き上げ、CO2排出量も大幅に減らしていく絶好のチャンス」と指摘。再エネ導入に後ろ向き、石炭火力に固執し、原発回帰を進める政府の姿勢を批判しました。
また、持続可能な社会に向けたSDGs達成へ、力を合わせる決意を表明しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
初めに、経産副大臣に伺います。
二月二十二日の当調査会の質疑において、電気事業法、原子炉等規制法の改正に関わって、事前に資源エネルギー庁と原子力規制庁との面談についての記録や内容などの資料提出を求めたところ、四月七日にそれぞれ資料の提出と説明がありましたが、規制庁からの資料は黒塗りが外されないままでしたし、資源エネルギー庁の資料の方は、黒塗りはされていませんでしたが、面談そのものの記録など、面談の内容の分かる資料というのはありませんでした。
ただ、いただいた資料で分かったことは、本来、規制庁の所管であった運転期間の規制に関わる法案、法改正案のたたき台を資源エネルギー庁の側が作成し、それを規制庁と共有していたということです。
つまり、規制と推進の分離の原則を踏み越えた法案のすり合わせを事前に二つの庁で行ったということではないかと思うんですが、経産副大臣、いかがですか。
経済産業副大臣(太田房江君)
御指摘の面談というのは、いずれも令和二年七月に原子力規制委員会が出しました見解の内容等の確認ですとか、運転期間に係る利用政策の観点からの検討状況についての情報共有を行ったものであります。原子力安全規制の在り方について、具体的な意見の申入れ等を行った事実はございません。このため、利用と規制の分離に照らして問題があったとは考えておりません。
昨年十二月二十七日の原子力規制庁の記者会見におきましても、高経年化の安全規制について、協議、調整、すり合わせと呼ぶような行為を行ってはいなかったとの説明がなされたと承知をいたしております。
今後とも、東京電力福島第一原発の事故の最大の教訓であります規制と利用の分離の趣旨をしっかり踏まえて、適切に対応してまいります。
吉良よし子
情報共有だけだったということなんですけれども、しかし、本当に違うのかどうか、やはり面談の内容そのものが明らかでない以上、分からないということでありますので、改めて、この真実、徹底的に追及しなければならないと思っているのです。
そこで、調査会会長、この資源エネルギー庁の側の面談の記録、また、面談について資源エネ庁内で報告した際の資料などありましたら、この調査会に提出いただきたいと思います。
会長(宮沢洋一君)
後刻理事会で協議いたします。
吉良よし子
前回も言いましたが、福島第一原発の最大の教訓は、推進と規制を分離することであります。にもかかわらず、それを踏み越えて、法案のすり合わせがもしあったとしたら、安全神話の復活そのものであり、こうした原発回帰の姿勢は許されないということ、強く申し上げたいと思います。
次に、環境副大臣にCO2の削減目標について伺いたいと思います。
政府が二〇二一年に決めたCO2削減目標というのは、先ほども御説明ありました二〇三〇年度に二〇一三年度比四六%減というものです。これ、二〇一〇年比にすると四二%減で、国連が示した二〇三〇年までに二〇一〇年比四五%減という世界平均の目標よりも低いものになっているわけです。
国によっては五割以上の削減目標を掲げているような国もある下でも、やはり日本の目標というのは決して高いものとは言えないと思うのですが、それについて、岸田首相は、私が一月の本会議で質問した際に、我が国の目標は、カーボンニュートラルに向けた削減ペースで見れば、欧米との比較においてもより野心的なものであると答弁されました。
どこが野心的なのでしょうか。
環境副大臣(山田美樹君)
お答え申し上げます。
我が国は、パリ協定の一・五度目標と整合的な形で二〇五〇年カーボンニュートラルの実現を掲げ、それと整合的な二〇三〇年度の目標として二〇一三年度から四六%削減することを目指し、さらに五〇%の高みに向け挑戦を続けることとしております。
岸田総理は、それぞれの国の目標値を取り上げて単純比較することは適切ではないとした上で、カーボンニュートラルに向けた削減ペースで見れば、欧米との比較においてもより野心的なものであると答弁されているところでありますけれども、我が国の目標は、基準年から二〇三〇年目標に向けた削減ペースを見た場合においては、カーボンニュートラルを実現する上で、欧米と比較してより野心的なものであると承知をしております。
いずれにしても、引き続き、二〇三〇年度目標、二〇五〇年カーボンニュートラルの達成、実現に向け、地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画、GX基本方針に基づく対策、施策を着実に実施してまいります。
吉良よし子
やっぱり、何がどう野心的なのか、私は納得がいかないんですけれども。削減ペースが野心的だというのは、決して目標が野心的だということではないと思うんです。
また、御説明の中で、二〇五〇年のカーボンニュートラル、とにかく目指していくんだとおっしゃっていましたけど、ただ、じゃ、二〇五〇年の時点でそれが実現できていれば問題ないのかというと、そういう話ではないはずです。世界で行われている議論というのは、そういう悠長な話じゃなくて、できる限り早くCO2削減量を減らしていって、気温上昇は必ず一・五度以内に抑え込むんだと、それが求められているわけですね。
続けて環境副大臣に伺いたいんですけれども、四月十五日から十六日に札幌で行われたG7の気候・エネルギー・環境相会合での共同声明では、三月二十日に発表されたIPCC、気候変動に関する政府間パネルの最新の見解を踏まえ、二〇三五年に一九年比六〇%削減する緊急性が高まっているということが強調されたと聞いております。
この声明で示された一九年比六〇%削減というのは、日本に当てはまると、二〇三五年に一三年度比で六六%の温室効果ガス削減が求められることになるわけです。今の政府の目標どおり二〇三〇年度に二〇一三年比四六%減、これ達成できたとしても、その五年後には更に二〇%の削減を達成しなければならないと、そういう数字になっていると思うわけです。そういう意味でも、現在の目標、決して野心的と自負できるような状況ではないと私は思うんですけれども。
日本は二〇三五年の目標はいまだ持っていないわけですが、こうしたG7の環境相会合の共同声明踏まえた対応すべきと思いますが、いかがですか。
環境副大臣(山田美樹君)
お答え申し上げます。
今月十五日、十六日に開催された気候・エネルギー・環境大臣会合のコミュニケにおいては、IPCCの最新の見解を踏まえて、世界の温室効果ガス排出量を二〇三五年までに六〇%削減することの緊急性が高まっていることが強調された、御指摘のとおりであります。
我が国は、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、それと整合的な二〇三〇年度四六%の削減目標と五〇%の高みに向けた挑戦の継続を表明しております。まずはこれらの達成、実現に向け、地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画、GX基本方針に基づく対策、施策を着実に実施をしてまいります。
その上で、三年ごとの地球温暖化対策計画の見直し、これ二〇二四年目途としております、それですとか、二〇二五年までの提出が奨励されている次期NDCなどの機会を見据えて、目標とそれを実現するための対策、施策について、関係省庁とも連携しながら、不断の検討を行ってまいります。
吉良よし子
不断の検討を行うということですけれども、やはり目標を大幅に引き上げるとか、そういう宣言はないわけですね。
日本、G7議長国として、この目標を世界へ呼びかける立場だと思うんです。野心的だというのであれば、やはりこの共同声明に責任を持てる目標を、二〇三〇年の目標についても、そういうふうに上乗せをしていくべきだと私は思います。
CO2削減達成の鍵となるのは、やはり再生エネルギーの導入の拡大です。
最後一問、経産副大臣にも伺いたいんですけれども、エネルギー構成について、二〇三〇年度は再生エネルギー比率三六から三八%としていますが、三月一日、アメリカのエネルギー省ローレンス・バークリー研究所が公表した日本レポート、電力脱炭素化に向けた戦略では、日本の再生エネルギーの可能性について、二〇三五年には再エネ七〇%へ移行できると高く評価しているわけですが、こうしたことを踏まえて、再生エネルギーの導入拡大、加速させるべきと思いますが、最後、いかがでしょう。
経済産業副大臣(太田房江君)
再生可能エネルギー、御指摘のように、大変大切な主力電源となるべきものでございまして、二〇三〇年度三六から三八%の実現に向けて、地域との共生等の課題ございますけれども、最大限導入していくことが政府の基本方針でございます。
その導入目標をしっかり実現するために不断の検討を行っておりまして、一つは、公共部門における屋根設置の促進、工場、倉庫などの建築物に対する導入強化に向けまして、屋根設置の事業用太陽光発電の区分というのを新設いたしました。それとともに、地球温暖化対策推進法、農山漁村再エネ法との連携、これを通じまして導入の促進を図ること、さらには再エネ海域利用法による洋上風力発電の導入拡大や、グリーンイノベーション基金の活用による次世代型太陽電池や洋上風力の技術開発などなど、加速するべく取組も進めておるところです。
今月開催しました閣僚会議におきましても、こうした取組を含めてアクションプランを策定し、引き続いて、関係省庁とも更なる連携を図りながら推進してまいります。
吉良よし子
ドイツでは、もう脱原発を実現して……
会長(宮沢洋一君)
もう申合せの時間が来ておりますので、おまとめください。
吉良よし子
再生可能エネルギーは八割導入されているわけで、野心的というならこのくらいのことをやるべきだということを申し上げまして、終わります。
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
政府は、我が国のエネルギー情勢について、ロシアによるウクライナ侵略が発生し電力需給逼迫やエネルギー価格の高騰が生じるなど、一九七三年の石油危機以来のエネルギー危機が危惧される極めて緊迫した事態に直面していると危機感をあおっています。
しかし、そもそも我が国が輸入化石燃料に依存してきた、そしてエネルギー自給率が僅か一〇%にとどまってきたことこそが危機の大本にあるということは参考人の皆さんからも指摘があったところです。先週、高村ゆかり参考人からも、エネルギーの危機と言っていいけれど、クリーンエネルギーの危機ではないとの指摘がありました。
つまり、今こそエネルギーの輸入依存を脱し、エネルギー自給率を高める。そのためにも、思い切って再生可能ネルギーの供給を引き上げ、CO2排出量も大幅に減らしていく絶好のチャンスだと思います。
本調査会の参考人質疑でも、大島堅一参考人が再エネは大変ポテンシャルが高いと述べていましたが、アメリカ・エネルギー省のローレンス・バークリー研究所が公表した日本レポート、電力脱炭素化に向けた戦略でも、日本の再生エネルギーの可能性について、石炭火力を削減しながら二〇三五年には再エネ七〇%へ移行することができると高く評価しています。
しかし、政府の二〇三〇年電源構成目標で再エネは三六から三八%にとどまっています。再生可能エネルギーの主力電源化をうたいながら、岸田首相は、本会議で日本には再エネ適地が少ないなどと答弁し、再エネ導入に後ろ向きな姿勢を示しました。さらに、政府は、石炭火力に固執し、原発の再稼働、新規増設、老朽化原発の稼働など、福島第一原発事故を忘れたかのように原発回帰を進めようとしています。とりわけ、原発の運転期間を六十年超えでも可能にする政府の方針、本来規制政策であったはずの運転期間の規制を原発利用政策である電気事業法に移行する方針転換は、福島第一原発事故の最大の教訓である規制と推進の分離に反する重大な変更です。
こうした変更について政府の法案作成前に原子力規制庁と資源エネルギー庁が非公式の面談を重ねていたということについても徹底的な調査が必要です。改めて、当時の面談記録の提出を速やかに行うことを求めます。
二〇二二年、国連事務総長SDGs報告書によれば、今、世界では気候危機やエネルギー危機にとどまらない様々な課題が深刻化していることが明らかになっています。コロナによる死者は世界で五百四十万人。コロナ以前と比べ、七千五百万人から九千五百万人が新たに極度の貧困状態となり、失業、無報酬の育児や介護、家庭内暴力など、女性への影響も指摘されています。
こうした様々な課題を解決していくためには、持続可能な社会に向けたSDGsを達成することが重要です。しかし、いまだに日本にはSDGs基本法もなく、明確なターゲット、年限等を示した目標などが定められていないことが蟹江憲史参考人からも指摘されたところです。改めて、SDGs基本法を制定すること、そして、それぞれの課題について明確な目標や指針を持つことを強く求めます。
私たち日本共産党は、人類を貧困や欠乏から解き放ち、地球を癒やし安全にすること、その過程において誰一人取り残さないことという国連持続可能な開発目標の前文の立場に立って、市民の皆さんとともにSDGs達成に力を合わせる、その決意を申し上げて、私の発言といたします。