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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2023年・第211通常国会

規制委員会に対する質疑

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 原発の運転期間を原則四十年、最長六十年としていた従来の規制を変えて、六十年超えでも運転できるようにする電気事業法、原子炉等規制法の改正に関わって、経産省資源エネルギー庁と原子力規制庁との、昨年七月二十八日から九月二十八日、七回にわたる面談について、これに関わる資料の提出、この間、私、求めてまいりました。
 で、資源エネルギー庁、規制庁それぞれから回答があったわけですが、先週も申し上げたとおり、規制庁の資料は黒塗りのままでした。また、先週新たに要求した資源エネルギー庁の側の面談の記録というのも提出していただいたんですが、その内容も断片的なメモ程度のもので、経産副大臣が先週答弁したような、この面談において協議、調整、すり合わせと呼ぶような行為は行っていなかったということを裏付けるものとは言い難いものだったと感じております。
 何よりも、問題はこれらの資料で明らかになった事実で、つまり、本来、規制庁の所管であった運転期間の規制に関わる法律の改正の案を資源エネルギー庁の側が作成して、それを規制庁と共有をしていたということで、このこと自体が、やはり私は規制と推進の分離の原則を踏み越えるのではないかと思うわけですが、規制委員長、そう思いませんか。

原子力規制委員会委員長(山中伸介君)

 お答えいたします。
 御指摘の規制庁と資源エネルギー庁のやり取りにつきましては、原子炉等規制法の改正案についての調整を行ったという事実はなく、資源エネルギー庁における検討状況の伝達を受けたものであると確認しております。
 その上で、事務方がどのような準備をいたしましょうとも、規制制度の変更に伴う判断が必要な場合には、これまでと同様に公開の原子力規制委員会の場において五人の委員で議論をして決定しております。独立性に問題があったとは考えておらず、規制と推進の分離の原則を踏み越える行為との指摘には当たらないと考えております。
 今回の原子炉等規制法の改正法案では、運転期間に関する利用政策上の定めがどのようなものになろうとも、それに左右されることなく、高経年化した発電用原子炉の安全規制を厳格に実施できる制度を取りまとめることができたと考えております。

吉良よし子

 独立性に問題はなかったという御答弁でした。
 この間、これについて、つまり本来であれば規制庁の側にある運転期間の規制についてを、エネルギー庁の側、それに関わる中身の法案をエネルギー庁の側が作成したことについては、やはり運転期間は利用政策だと、令和二年の七月の見解があるから、だからそれをやること自体は問題ないということを言われていたと思いますが、そういうことでよろしいですか。規制委員長。

政府特別補佐人(山中伸介君)

 御指摘ございましたように、令和二年七月二十九日に原子力規制委員会で決定をいたしました、運転期間に関しては原子力利用の政策判断であり、原子力規制委員会が意見を述べる事柄ではないという、そういう見解に基づいて、現在の高経年化した原子炉についての安全規制を検討を始めたところでございます。

吉良よし子

 つまり、発端はこの令和二年七月二十九日の見解だったという話だったと思うんですけれども、じゃ、なぜこの見解を出されたのかということも確認したいと思うんです。
 この見解、本文を読みましたら、これを、この見解を整理する発端となったのは、経年劣化管理に係るATENAとの実務レベルの技術的意見交換会が発端だとしています。このATENA、原子力エネルギー協議会とはどのような団体なのか、設立時の会員構成、お答えください。

原子力規制委員会原子力規制庁次長(金子修一君)

 御質問のありましたATENA設立時の会員は、全部で十九者ございました。原子力発電を手掛ける電力会社が十一社、原子力発電設備のメーカーが四社、これらの事業者の関係団体が四団体という構成になってございます。

吉良よし子

 まさに原発推進事業者の集まりの団体だということです。
 この見解には、このATENAとの意見交換会の中で、事業者側、推進側から、運転期間延長認可の審査に関し、運転停止期間における安全上重要な設備の劣化については技術的に問題ないと考えられることから、一定の期間を運転期間から除外してはどうかとの提案がなされたことに端を発すると、そうはっきりと書いてあるわけですが、つまり、この見解というのは、こういう原発推進側の要望に従って、要望に沿うために出されたということなのではないですか。規制委員長、いかがでしょう。

政府特別補佐人(山中伸介君)

 平成二十九年から、現行の運転期間延長認可制度における運転期間から運転停止期間を除外してほしいという事業者の要望を原子力規制委員会は繰り返し受けておりました。
 また、事業者側から、実務レベルで技術的な議論を行う場を設けてほしいという要望もあり、令和元年の原子力規制委員会でATENAとの実務レベルでの技術的意見交換を行うことを了承いたしました。その意見交換の結果、原子炉施設の長期停止、運転停止期間中にも劣化が進展する事象があり、その経年劣化の程度が使用履歴や保守管理の状況などにより個々に異なるため、科学的、技術的に一定の期間を除外することは困難であるとして、運転期間から停止期間を除外してほしいとの要望は拒否いたしました。
 その上で、令和二年の見解では、発電用原子炉施設の利用をどれぐらいの期間認めることとするかは原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べる事柄ではないとしたものでございます。

吉良よし子

 結局、平成二十九年から事業者の要望を受けてきたと。除外することを拒否したとおっしゃいますけれども、実際に、しかし、今、国会に出されている法案見れば、結局その停止期間中は除外するんだと、していいんだと、だから、六十年超えであっても原発運転することは可能だと、そういう法案が出されているわけで、結果としては、この見解でその運転期間は利用政策と整理をされたことが今回の法案につながっている、まさに事業者の意のままになっているという、そういう話なのではないかと思うわけです。
 しかも、この見解読んでみますと、運転期間は利用政策との整理をされただけではなく、規制委員会の役割についても言及がされているわけです。
 規制委員会の役割については、科学的、技術的観点から、基準を定め、個々の施設がその基準に適合しているか否かを審査し、検査を通じた監視等を行うことに尽きると言っているわけですね。もちろん、原発の規制基準を定め、その基準に適合するかどうか審査するのは規制委員会の重要な役割だと私も思っています。同時に、福島第一原発事故を経験した多くの国民がその反省から生まれた規制委員会に求めているのは、駄目だったら止める、つまりは、安全でないと判断された原発をちゃんと厳しく規制するという、そういう役割だと思うわけです。
 しかし、現状はどうか。規制委員会は、先ほど言ったように、六十年を超える老朽原発であったとしても審査に適合すれば動かしてもいいんだよという立場を取っているわけです。つまり、これ原発をもう粛々と稼働させることが前提になっているのではないかと、動かすための基準、動かすための審査になっているのではありませんか。規制委員長、いかがでしょう。

政府特別補佐人(山中伸介君)

 お答えいたします。
 原子炉等規制法は、原子力施設を利用するために、利用するに当たって必要となる安全性を確保するための規制体系を定めたものでございます。
 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえまして、新規制基準を策定いたし、その基準に適合するか否かを審査や検査を通じて厳格に確認することといたしております。

吉良よし子

 事故の教訓を受けて厳格な基準とおっしゃいますけど、先ほどの質疑でも、最高水準の基準ということは言わないようにしているんだというお話ありました。
 実際、世界の基準というものを、この原発の規制基準というのを見てみると、ヨーロッパの基準ではコアキャッチャー、格納容器の二重化などがあるわけですけど、日本の基準にはないわけです。アメリカの場合は、避難計画、これがなければ原発は稼働できないということになっているわけですが、日本の場合は、この避難計画というのは内閣府の所管で、この原発の稼働とは別の問題だとされていて、規制委員会はこの避難計画の有無とか実効性とかをチェックすることもしないんだと。これで世界最高水準とも言えないですし、厳格な基準だとも言えないと思うわけです。
 それで、審査を厳格にしていくというお話もありましたけれども、ここで確認したいと思うんですが、そもそも今の規制基準の適合性審査において規制委員会が不適合と判断した、そういう原発はあるのでしょうか。規制庁、お願いします。

政府参考人(金子修一君)

 東京電力福島第一原子力発電所事故以降におきまして、原子炉設置変更許可の申請を受けて新規制基準適合性審査を進めているものについて、これまでに例えば不許可の判断をしたなどとして適合を認めなかった発電用原子炉はございません。

吉良よし子

 つまり、不許可となった原発はこれまで一個もないんですよ。
 先ほど話題にあった敦賀原発、これについては審査にかなり時間が掛かっているということですけれども、これだって、先ほど委員長のお話でいえば、差戻しさえしなかったと、一部補正を求めただけで審査をそのまま進めているという状況なわけですね。つまり、この基準に適合するまでいつまででも待つよと、何度でもやれるよと、結局原発を動かすこと前提の審査になってしまっているということなんじゃないでしょうか。
 今後、六十年超えの原発も含めて、先ほど来言うように、稼働を認めるという政府方針を踏まえて規制を厳しくしたんだっておっしゃいます。審査期間を短くして十年を超えない期間ごとに審査をするんだから、だから規制強化だっておっしゃいますけど、先ほどあったように不適合が出ない、そんな審査であれば、どんなに期間を短縮して、何度審査をしたとしても意味がない。これを規制強化とは言えないのではないでしょうか。規制委員長、いかがでしょうか。

政府特別補佐人(山中伸介君)

 お答えいたします。
 御指摘のとおり、今回、国会に提出いたしました原子炉等規制法の一部改正案によって、これまで運転開始後四十年に一回に限り行ってきた原子力発電所の基準適合性審査を、運転開始後三十年を超えて運転しようとするとき、その十年を超えない期間ごとに行うなど、現行制度に比べてより高い頻度で厳格に審査を行うこととしております。
 また、審査対象、認可対象として策定を義務付ける長期施設管理計画には、これまでに認可する保安規定の中で定めておりました長期の施設管理方針の内容に加えまして、施設の劣化状態や劣化予測に関する詳細な記載を求めることで、より厳格な審査を行うことになると考えております。
 さらに、このような計画に詳細な記載を求めることを通じて、最新の知見により劣化評価の方法等に変更が必要となる場合には、劣化評価のやり直しや計画の変更など、より柔軟に、機動的に求めることにより、最新の知見を反映させやすい仕組みとなることと考えております。
 このように、運転期間がどうあれ、基準への適合性が確認できない原子力発電所の運転は認めないという厳格な規制となっていると考えております。

吉良よし子

 基準への適合をしない原発は認めないと言いますけれども、先ほどやり直しもできるということですよね。つまり、適合するまで待つということじゃないんですか。

政府特別補佐人(山中伸介君)

 もちろん再申請は可能ではございますけれども、あくまでも基準への適合性が確認できない原子力発電所の運転はその時点での許可はできないという規制になっております。

吉良よし子

 再申請も可能だし、というか、そもそも今のやり方でもすぐに不適合と出すわけじゃないんですよ。何回でも、ここが足りないから適合する資料にしてねって突き返す。その程度なんですね。
 だから、不適合とされた原発がないままで、これはやっぱり私は動かす前提だと思いますし、そもそもこの運転期間の規制を利用政策という整理したのも推進側の要請を受けて決めたことだとするならば、やっぱりね、もう動かすこと前提の基準だし、動かすこと前提の審査になっている。これは国民が求める規制委員会の役割とは全く懸け離れているんだと、そのこと強く言いたいと思うんです。それで規制強化だって言っていただきたくありません。
 ところで、先ほど来もお話ありましたけど、こうした老朽化した原発の規制制度に関わって、四月十九日に、原子力規制委員会のホームページで、運転開始から長期間経過した発電用原子炉の安全性を確保するための規制制度の全体像についてという資料が公表されました。これ、どういう理由から出されたんですか。

政府特別補佐人(山中伸介君)

 今般、高経年化した原子力発電所の新たな規制制度を定める法律案を国会に提出をさせていただきました。
 この新制度案が国民の皆様にしっかりと御理解いただけるように取り組むことが重要であるというふうに考えております。
 そのため、本年二月から、私から事務方に対して、公開の検討チームを立ち上げ、新たな制度の国民の皆様への分かりやすい説明等について検討を進めるように指示をいたしました。御指摘の資料は、その指示を踏まえて事務方が作成し、四月十八日の原子力規制委員会でその中間報告として説明を受け、国民の皆様への説明のため、十九日に公表したものとなります。
 内容も含めまして、より平易な表現にするなど、継続的な改善に取り組んでいきたいと考えております。

吉良よし子

 これ、二月十七日にも総理が丁寧な説明プロセス進めることと西村環境大臣に指示したとありますが、総理の指示が発端なのではありませんか。

政府特別補佐人(山中伸介君)

 総理から環境大臣への指示は二月十七日にあったものと承知しておりますが、分かりやすい資料の作成につきましては二月十五日の段階で私から直接事務方に指示をしたところでございます。したがって、総理の指示を受けて作ったとの御指摘には当たりません。

吉良よし子

 しかし、同様の時期に指示があったという話なわけですね。だから、総理の指示であったとも言えるとも私は思うんですけれども。
 そもそも、今回こうした資料を出しているわけですけれども、この中身というのは、今まさに国会で審議中の法案の中身であると思うわけです。まだ決定、採決されていないわけですが、なのに、さも決まったかのようにこのような資料をもうホームページ上に公表すると、これは国会軽視ではありませんか。規制委員長、いかがでしょう。

政府特別補佐人(山中伸介君)

 御指摘の資料の「はじめに」において、現在国会において審議中でございます旨を記載した上で、運転開始から長期間経過した原子炉施設について、原子力規制委員会がどのような規制を実施し、安全を確保しようとしているのか、その全体像を分かりやすく説明する目的で作成をしたものでございます。あくまでも法案については国会で御審議いただくものという認識には変わりございません。

吉良よし子

 しかしですね、「はじめに」のところに確かに説明はありますよ。しかし、その資料の中身のところには一々国会で審議中ですっていうことを全ページに書いてあるわけではありません。この資料が、全体がこうやってホームページに公表されている。もうこれは決定事項なんだと、この路線でいくんだと、そう勝手に言っているようなことになるわけじゃないですか。まさに国会軽視そのものだと私は思うわけですよ。いかがですか。そうじゃないんですか。そう思いませんか。

政府参考人(金子修一君)

 現在国会に提出させていただいている法案は、私ども原子力規制委員会の方で責任を持って案を作成させていただいたものでありますので、その案についてしっかりと御説明をするというのも私どもの責務の一つであると思っております。そのために今の現時点の案についての説明をさせていただいているというものですので、決して国会での御議論を先取りしてこの御説明をさせていただいているというものでは私どもはないと考えております。

吉良よし子

 案だと言いましたけど、タイトルには案ということすら書かれていませんからね。
 結局、こうやって総理の指示を踏まえて先取りして先取りして政府の方針を知らせていくって、それが規制委員会の、規制庁の仕事なのかと。二月の規制委員会でも、委員の反対を押して、六十年超えの原発の稼働を認める政府方針、了承されたわけですけれども、これだって結論ありき、政府の方針ありきで進めてきたと。規制委員長、この間、福島の事故を忘れないと、安全が最優先とおっしゃっていますけど、やってることは、福島の事故への反省も何もないし、独立性っていう、それも見られない、そういう行動なわけです。
 やはり、改めて推進と規制の分離の原則に立ち戻って、何よりも国民の安全を第一に追求する規制委員会の役割をきちんと果たすように強く求めまして、私の質問を終わります。