【2021年度決算 代表質問】大軍拡・大増税、コロナ対策、少子化、原発・気候危機ーー岸田首相ただす(NHK中継)
要約
日本共産党の吉良よし子議員は24日の参院本会議で、2021年度決算について代表質問し、大軍拡・大増税、コロナ対策、少子化、原発・気候危機の問題などを追及し、岸田文雄首相の姿勢をただしました。
吉良氏は、首相が閣議決定した「安保3文書」について、「専守防衛」を投げ捨て、5年間で43兆円もの大軍拡になるとし、「この国のあり方を根底からつくりかえるものであり、憲法違反そのものだ」と厳しく批判。さらに、国会に諮(はか)ることなく、それよりも前にこの決定をバイデン米大統領に報告したとし、「国会よりもアメリカ重視だ」と述べ「安保3文書」の即時撤回を迫りました。
首相は「3文書は専守防衛の考え方を変更するものではない」「進め方は間違っていない。米国に対して日本の現状を説明したものだ」などと強弁しました。
吉良氏はコロナ対策について、第8波で増えているコロナ後遺症患者の総数を把握しているか質問。首相は「把握していない」と答弁しました。
深刻化する少子化の原因について吉良氏は、医療費や給食費、高校や大学進学など「長期にわたる重い経済負担」を指摘。所得制限なしに子どもの医療費無料化や学校給食費無償化など、「国の責任で実施すべきではないか」と迫りました。首相は「子ども・子育て政策として内容の具体化を進める」と述べるにとどまりました。
吉良氏はまた、原発、気候危機について、首相がこれまでの方針を百八十度転換し、原発依存に回帰したことを批判。気候危機対策で、日本の二酸化炭素削減目標は各国と同じ10年比では42%減でしかないと指摘し、「世界5位の二酸化炭素排出国として目標を引き上げるべきだ」と主張しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
私は、会派を代表して、二〇二一年度決算について、岸田内閣総理大臣に質問をいたします。
初めに、本来、この決算本会議質問は昨年の臨時国会でやるべきものでした。それがなぜ本日の質問となったのか。それは、昨年十二月、統一協会の被害救済を実効性あるものにするための徹底審議が求められていたにもかかわらず、岸田政権と与党が強引に国会を閉じてしまったからにほかなりません。そうやって国会を閉じてすぐ岸田政権が行ったのが、安保三文書の閣議決定です。これは、専守防衛の原則を投げ捨てて、五年間で四十三兆円もの軍事費を確保する、文字どおりこの国の在り方を根底からつくり替えるものであり、憲法違反そのものです。しかも、総理は、この国会が始まる前にアメリカに行き、この決定をバイデン大統領に報告しました。
こんな重大な方針転換を国会に諮ることもなく決定し、国会よりも前にアメリカに報告するなんて、順序が逆ではありませんか。国会よりもアメリカ重視、それが総理のやり方ですか。
立憲主義を破壊して民主主義をも踏みにじる、国民に負担を押し付けながら戦争できる国家づくりへ突き進む安保三文書の閣議決定は今すぐ撤回するべきです。
この冬、新型コロナ第八波によって過去最悪の死亡者数が出ています。医療の逼迫が深刻になり、高齢者施設のクラスター発生件数もどんどん増えています。
本決算の対象年度である二〇二一年も、新型コロナが全国的に大きく広がりました。第五波ではデルタ株が猛威を振るい、保育園や学校で子供たちに感染が広がって子育て家庭での自宅待機も増える中、都内でコロナに感染した四十代の母親が自宅で急死するなどのニュースに衝撃が広がったことを覚えています。それからもう二年がたとうとしていますが、なぜ今なお必要な医療につながれない、命が守れない事態が相次いでいるのか、総理はどう考えているのですか。
第八波が猛威を振るう今このときに、総理は新型コロナを五類に移行する検討を指示しました。これにより、コロナ対策は今よりも緩和、後退するのではないですか。その中で再び感染拡大が起こったら、更に深刻な事態が起こるのではないですか。
感染拡大が深刻な今こそ、一層のコロナ対策強化が必要です。クラスターが発生した高齢者施設では職員の人手が足らなくなり、入所者をお風呂に入れられない、食事介助ができず三食を二食に、おむつ交換の回数も減らすなど、誇りにしていた介護の質が保てない事態が起きていると聞いています。介護の基盤と、利用者、従事者の命と暮らしをコロナ危機から守るため、介護報酬の引上げを行うとともに、それを利用料、保険料に跳ね返らせないための公費投入を行うべきではありませんか。
第八波の下、コロナ後遺症患者の数も増加の一途をたどっています。後遺症は、軽症であっても高い割合で発生します。ブレーンフォグと呼ばれる症状や強い倦怠感などにより、仕事の継続が困難になったり進学を諦めたりする事態が起きています。後遺症を軽視するわけにはいきません。コロナ感染症の後遺症の患者は、現時点で何人いるか、総数を把握していますか。うち、休職したり休学したり、社会生活が困難になっている患者数、割合はどの程度か、政府として把握し、社会生活を維持できるよう対策を講じるべきではありませんか。
コロナにより少子化がより一層深刻化しています。二〇二一年の出生数は八十一万一千六百二十二人、明治三十二年の調査開始以降、最小の数字となっています。
総理は異次元の少子化対策などと言いますが、私は、一歳の子を育てる母親から、現金給付よりも学費無償の方がいいという声を聞きました。
就職しても非正規で賃金が全く上がらない、奨学金返済ローンも重くのしかかる中で、子供を産めば、医療費、給食費、高校進学、大学進学、生まれてから大人になるまで長期にわたる重い経済負担が待っています。この経済負担の大きさこそが少子化の最大の原因です。その重い負担を今すぐ直接軽減する。学校給食の無償化、子供の医療費の窓口無償化、大学学費の半減など、所得制限なしに国の責任で実施すべきではありませんか。
二〇二一年度、政府は、新型コロナ第五波が拡大しているただ中に、一年延期された東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を強行しました。その大会が残したものは何でしょう。約二億円もの贈収賄事件、そして電通始め大手有力企業による談合です。これがレガシーなのですか。
東京五輪に関わる贈収賄や談合など、全ての疑惑について政府として徹底的に調査し、検証すべきではありませんか。
昨年十二月、会計検査院が公表した東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果では、イベント全体の経費の総額を明らかにする仕組みがないことが問題視されています。二〇一三年の立候補ファイル時点では七千三百四十億円と言われていた大会経費が、組織委員会の最終報告では総額一・四兆円に膨らみました。さらに、会計検査院の整理では、大会関連経費も含めると総額二兆九千九百九十一億円もの支出だったとされています。
一体、大会経費総額は、関連経費も含めると幾らになるのか、国の負担は幾らだったのか、政府として公表し、明らかにすべきではありませんか。
最後に、原発、気候危機対策についても伺います。
安保三文書と同じく、国会を閉じた途端、総理を議長とするGX、グリーントランスフォーメーション実行会議は、原発の新規建設、老朽原発の六十年を超える運転など、新たな原発推進政策を決定しました。参院選で岸田総理は、新増設など想定していないと言っていたのではありませんか。選挙が終わったら、国会にも諮らずに百八十度方針を転換し、福島第一原発の事故を忘れたかのように原発依存に回帰する姿勢は、到底認められません。
原発依存を強めれば、再生可能エネルギーの普及にもブレーキが掛かります。気候危機対策を本気で進めるために、政府の原発依存の姿勢こそ見直すべきではありませんか。
二〇二一年の国連気候変動枠組条約第二十六回締約国会議では、気候危機を回避するため、気温上昇一・五度未満が合意されました。各国の目標の上積みも求められていたにもかかわらず、昨年行われたCOP27に総理は出席しないまま、西村環境大臣が目標に上積みする考えがないことを公言し、後ろ向きの姿勢が際立ちました。
日本政府のCO2削減目標は、二〇一〇年比で四二%減、世界平均を下回ります。世界第五位のCO2排出国として目標を引き上げるべきではありませんか。
今、世界でも日本でも、多くの若者が気候アクティビストとして行動しています。ある中学生は、地球の気温上昇を止められなくなるまであと数年しか残っていないと知って、目の前が真っ暗になるようなショックを受けたと話していました。未来を担う若者が未来に絶望してしまうような政治は変えるしかありません。
大量生産、大量消費、資本主義のもたらした負の遺産をなくすことが、次の世代に対する政治の責任です。私たち日本共産党は、気候危機を打開する、新しい、未来に希望が持てる政治を目指して頑張り抜く決意を申し上げ、質問を終わります。(拍手)
内閣総理大臣(岸田文雄君)
吉良よし子議員からの御質問にお答えいたします。
国家安全保障戦略等の決定の在り方についてお尋ねがありました。
まず、新たに策定された三文書に基づく取組は憲法及び国際法の範囲内で行うものであり、専守防衛の考え方を変更するものではありません。
その上で、三文書については、国家安全保障会議四大臣会合、有識者会議、与党ワーキングチームなど、活発な議論を積み重ねてきました。その集大成として、政府、政権与党としての方針を三文書の閣議決定の形でお示しをしました。
議院内閣制の下では政権与党が国政を預かっており、まずは政府・与党において、一年以上にわたり丁寧なプロセスを経て方針を決定いたしました。この進め方に問題があったとは考えておりません。
そして、この政府・与党の決定を踏まえて、今国会に令和五年度予算を提出したほか、防衛財源確保法案の提出を予定しており、ここで与野党との活発な国会論戦を行ってまいります。そして、それによって更に国民の皆様への丁寧な説明を行ってまいります。
そして、米国に対しては日本の現状について説明したものであり、御指摘のような、国会よりも米国重視ということではありません。
そして、新型コロナ対策についてお尋ねがありました。
いわゆる第八波への対応については、これまで拡充強化してきた医療体制に加え、発熱外来や電話診療、オンライン診療の強化などに取り組んできました。足下の感染状況については、感染防止対策や医療体制の確保に努め、いわゆる第八波を乗り越えるべく全力を尽くしてまいります。
そして、原則、この春に新型コロナを「新型インフルエンザ等」から外し五類感染症とする方向で議論を進めますが、これに伴う医療体制、公費支援など様々な政策、措置の対応について、段階的な移行の検討、調整を進めてまいります。
新型コロナのクラスターが発生した高齢者施設や後遺症の患者に関してお尋ねがありました。
新型コロナの感染者が発生した高齢者施設に対しては、必要な介護サービスが提供できるよう、基金の活用により、利用者負担や保険料が増えない形で、緊急時の人材確保や施設の消毒、清掃、施設内療養に要する費用を補助しております。
また、後遺症については、御指摘の患者の総数は把握しておりませんが、厚生労働省で専門家の協力を得て実態調査を行っており、多くの症状は経時的に頻度が低下する一方で、十二か月後も症状がある方が一定程度いる、こうした結果でありました。
引き続き、社会生活への影響を含めた実態把握のための調査を予定しており、社会生活を維持するための対策につなげてまいります。
子育ての経済的負担の軽減についてお尋ねがありました。
我が国の経済社会の持続性と包摂性を考える上で最重要政策と位置付けているのが子ども・子育て政策です。こども政策担当大臣に指示をした三つの基本的方向性の一つに経済的支援の強化も掲げています。あわせて、高等教育の負担軽減に向けた出世払い型奨学金制度の導入にも取り組んでまいります。
子ども・子育て政策は最も有効な未来への投資です。これを着実に実行していくため、まずは、子ども・子育て政策として充実する内容の具体化を進めてまいりたいと思います。
そして、東京オリパラ大会に関する不正行為に対する政府の対応や大会の経費についてお尋ねがありました。
御指摘の不正行為については、仮に不正があったとすれば誠に遺憾であると考えており、オリンピック・パラリンピック競技大会を始めスポーツの価値を大きくおとしめるものであると考えております。
現在、刑事手続中や公正取引委員会等の調査中であると承知をしており、スポーツ庁において、これらの推移を注視しながら、今後、我が国で開催される大規模な競技大会の運営において参考となる指針を作成することを予定しております。
大会経費については、昨年六月に組織委員会が報告したものが大会経費の総額と認識をしており、その額は一兆四千二百三十八億円であり、そのうち国の負担は千八百六十九億円です。また、御指摘の会計検査院の報告では、大会経費に含まれないスポーツ庁の競技力向上等の事業の経費を含め、三千六百四十一億円が国が負担した経費と整理されていると承知をしております。
原子力政策についてお尋ねがありました。
昨年二月のロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギーの安定供給の確保が世界的に大きな課題となっており、我々は歴史上初の世界エネルギー危機に直面しているとも言われています。
エネルギー政策については、いわゆるSプラス3Eの原則の中で、近年は脱炭素に重きを置いて検討を進めてきましたが、これからはエネルギーの安定供給と脱炭素をいかに両立させるか、これが重要となります。特に我が国は、世界最低水準のエネルギー自給率、世界最高水準の中東依存度であり、しかも、山と深い海に囲まれ、再エネ適地が少ないという実態があります。
こうした厳しいエネルギー供給の状況を踏まえ、再エネ導入を最優先とし、全国規模で系統整備や海底直流送電の整備などを加速した上で、原子力を含めたあらゆるエネルギー源の活用を進める必要があります。
年末にお示ししたGXに向けた基本方針は、政府・与党において一年以上にわたる丁寧なプロセスを経て示したものであり、進め方に問題があったとは考えておりません。
国会では、関連予算、関連法案に関する活発な論戦を通じて国民の皆様への説明を徹底してまいります。
そして、我が国の温室効果ガス削減目標についてお尋ねがありました。
我が国は、パリ協定の一・五度目標と整合的な形で二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言するとともに、二〇三〇年度の目標として二〇一三年度から四六%削減することを目指し、更に五〇%の高みに向け挑戦を続けることとしております。
基準年は各国がそれぞれの事情に基づき設定しており、それぞれの国の目標値を取り上げて単純比較することは適切ではありません。大切なことは二〇五〇年カーボンニュートラルという大きな目標を実現することであり、我が国の目標は、カーボンニュートラルに向けた削減ペースで見れば、欧米との比較においてもより野心的なものであると考えております。
そして、目標を設定した以上は、新たな技術を実用化するイノベーションを生み出し、しっかりと目標を実現することが重要です。そのためには、十分な投資が必要不可欠であり、GXを着実に進めながら、政策を総動員し、目標実現を裏打ちする技術の開発、実装に取り組んでまいります。(拍手)