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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2023年・第211通常国会

【本会議質問】日本語教育機関法案 留学生への搾取追認と批判

要約

日本共産党の吉良よし子議員は17日、参院本会議で、外国人留学生への搾取の追認につながる「日本語教育機関法案」について、政府の姿勢をただしました。

 法案は、法務省の告示で定める日本語教育機関を文部科学省が認定する制度に移行し、日本語教師を国家資格の「登録日本語教員」にするもの。政府は、「留学生30万人計画」に続き、2033年までに「40万人をめざす」としています。

 吉良氏は、多額の借金を抱え来日し、学費、生活費等でアルバイトに追われ、週28時間の就労上限を超え働いた場合、在留資格を失う恐れがあるなど留学生の深刻な実態を告発。政府は「留学生を使い勝手の良い安価な労働力として受け入れてきた」「30万人達成ありきで在留資格を出し続けてきた」と指摘し、外国人受け入れを留学生と労働者に分ける政策への転換を訴えました。

 斎藤健法相は「指摘は当たらない」「(政策転換は)幅広い検討をする」と答えました。

 吉良氏は、留学生搾取をしている悪質な日本語学校が多数あるのに、法務省が告示抹消処分にしたのは2件だけだと指摘し、「文科省認定に切り替え、悪質な学校は除外できるのか」と追及。永岡桂子文科相は「教育実施状況の毎年の報告などの義務が課せられる」「基準を満たした質の高い機関が認定を受けられる」と答弁し、除外できるかは明言を避けました。

 吉良氏は、日本語教師の半数はボランティアで3分の2が非常勤、常勤でも7割が年収400万円未満だとして、「登録日本語教員」で処遇改善になるかと質問。永岡文科相は「キャリア証明する仕組みを検討」などと答えるだけでした。

しんぶん赤旗2023年5月19日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 私は、会派を代表して、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案について質問します。
 留学生として来日したウィシュマ・サンダマリさんは、学費が払えず退学、在留資格を奪われ、入管法違反で収容され死に追いやられました。このような悲劇を二度と起こさない、そのために、今の非人道的な日本の入管行政の抜本的な見直しこそが必要です。
 それなのに、先週金曜日に参議院で審議入りした政府提出の入管法改定案は、今の入管行政はそのままに、刑罰をもって退去を強制するなど、外国人の人権侵害を一層深刻化させるものです。国際人権条約にも憲法にも反する入管法改悪案は廃案にすべきです。
 政府が留学生三十万人計画を打ち出して以降、日本への留学生の数は増え続け、二〇一九年にはついに三十万人を突破。二〇三三年までに留学生四十万人を目指すとしていますが、その目的は何でしょうか。文科大臣、お答えください。
 現在の留学生の実態は極めて深刻です。留学生の多くは、渡航費やあっせん手数料など百万円以上の借金返済を抱えて来日し、学費や生活費、母国への仕送りのためにアルバイトに追われていて、学ぶための留学とは程遠い実態に置かれています。結果として、週二十八時間の上限を超えて働いてしまった留学生は、不法就労とされて在留資格を失い、場合によっては収容、退去を強制されることもあります。
 法務大臣、こうした事態が起きているのは、留学生を使い勝手の良い安価な労働力として受け入れてきた政府の姿勢に問題があるからではありませんか。
 入管庁は、留学生に在留資格を与えるときに、親の年収や銀行預金残高が記された証明書の提出などを求めているとのことですが、渡航費用、仲介業者へのあっせん料や学費など、既に多額の借金を抱えて来日する留学生の実情は正しく把握されているのでしょうか。留学費用を借金に頼り、母国からの仕送りが見込めない外国人であっても、留学生三十万人計画達成ありきで在留資格を出し続けてきたのではありませんか。
 留学という名目で外国人を安価に働かせる構造そのものを改めることもなく、今度は留学生四十万人などと言い、受け入れる留学生を増やし続ければ、更なる悲劇を生み出しかねません。外国人受入れ政策そのものを大きく転換し、学問研究を目的とする外国人は留学生として、就労目的の外国人は、留学生としてではなく、初めから労働者として受け入れるべきではありませんか。
 そもそも、日本語学校の最大の問題は、その大半が、受け入れた留学生を安価な労働力として利用することと一体に運営されているということです。
 アルバイトで疲れ果て、授業中に居眠りをする留学生が何人もいるが、どうすることもできずつらいという日本語教師の方のお話を聞きました。
 この間、日本語学校は増え続け、現在の法務省告示基準に合致した告示校は八百三十二機関に上ります。そのうち六割以上が株式会社などの営利目的の学校です。中には、留学生からの学費収入を確保するために週二十八時間の上限を超えて働く留学生を黙認する学校や、場合によっては、日本語学校が搾取の一端を担っているケースもあります。学校の理事長自身が人材派遣会社を経営し、留学生からパスポートを没収し、週二十八時間以上働かせた上に不当に高い家賃を徴収するなど、日本語学校そのものが外国人ビジネス、留学生搾取を行う悪質な事例もあります。
 法務大臣、このような悪質な日本語学校の実態を認識していますか。
 法務省の告示基準を満たしたはずの日本語学校で、なぜこうした事態を止めることができないのですか。この十年の間に告示基準違反で法務省が告示の抹消処分をしたのは僅か二件のみと聞いています。これで適切な是正ができているとお考えですか。
 今回の法案では、法務省に代わり、文科省が基準を作り、日本語教育機関を認定するとされています。有識者会議の報告で教育環境が十分に整っていない機関が見られると指摘されたことを受けての対応といいますが、事実上、認定する官庁を差し替えるにとどまるのではありませんか。法務省告示機関から文科大臣認定に移る際に、留学生を搾取するような悪質な日本語学校は認定しない、除外できると言えますか。文科大臣、お答えください。
 文科大臣認定をするための基準は、法案成立後に省令で検討するとされています。その認定基準が、現在の法務省告示基準より厳しい基準になる保証はどこにもありません。結局、現行の法務省告示校をそのまま日本語教育機関として文科大臣が法律に基づいて認定し、悪質な日本語学校にも適正な認定機関であるというお墨付きを与えることになりませんか。
 不法就労の責任を留学生にばかり押し付けるのではなく、留学生を搾取する悪質な日本語学校をしっかり規制する仕組みをつくり、留学生が日本で安心して学べる権利を守る制度こそ目指すべきです。
 留学生だけでなく、外国人労働者やその家族が、生活の場で日本語を学ぶことは欠かせません。その役割を果たしているのは日本語教室です。
 しかし、文化庁の調査でも、現在、自治体などが設置する日本語教室がない空白地域が八百七十七市町村、全自治体の四六%に上っています。自主的な取組に任されているため、開設の状況は地域によって大きく異なっています。さらに、日本語教師の四割超は東京都に集中しており、地方での指導者不足は深刻です。
 文科大臣、このような地域格差、空白自治体の解消をどのように進めていくおつもりですか。日本語教室の実施は、設置者任せではなく、財政支援など国の責任で行うべきではありませんか。
 日本語教師の処遇改善も待ったなしです。
 日本語教育を担う日本語教師は約四万人いますが、その半数はボランティアで、無報酬の働きに頼っているのが日本語教育の実態です。このような実態は早急に改めるべきではありませんか。
 法務省告示校に勤める日本語教師でも、およそ三分の二が非常勤で、常勤は僅かです。文化庁調査によると、法務省告示校の常勤であっても年収四百万円未満が七割を占め、非常勤の年収は百五十万円未満がほとんどです。収入が余りに低いため、日本語教師として生活を維持するためには、複数の日本語学校を掛け持ちするしかありません。日本語教師の年代構成を見ても、二十代は僅か五%程度にとどまり、若い人が将来を見通して働き続けられる職業とはなっていない実態もあります。
 文科大臣、本法案で国家資格化される登録日本語教員になれば処遇も改善されるのですか。
 一こまの授業を行うための準備にその二、三倍の時間と労力が掛かる、平日の授業準備のために週末は潰れてしまうというお話も伺いました。学校では、留学生の生活や進路の相談に乗り、日本の文化や生活習慣も教えるなど、留学生の日本での生活を支える重要な役割を果たしているのが日本語教師です。
 その専門性にふさわしく、地位向上を図ること、処遇改善することを文科大臣に強く求め、私の質問を終わります。(拍手)

国務大臣(永岡桂子君)

 吉良議員にお答えいたします。
 まず、留学生四十万人を目指すことの目的についてお尋ねがありました。
 外国人留学生の受入れには、教育研究の活性化や国際競争力の向上、相互理解と友好親善に基づく人的ネットワーク構築等の意義がございます。
 このため、本年四月の教育未来創造会議第二次提言において、全学生数に占める留学生の割合をドイツ、フランスと同等の水準になること等を目指し、外国人留学生の受入れ数四十万人という新たな指標を設定し、外国人留学生の受入れを促進することとしております。
 次に、悪質な日本語学校への対応についてお尋ねがありました。
 本法案では、認定日本語教育機関に対し、登録日本語教員の配置、日本語教育の実施状況について毎年度の定期報告、教育課程、教員組織等の学習環境に関する情報公表などの法務省告示制度にはない義務が課されており、それにより、認定日本語教育機関を監督し、その質を確保していく仕組みが新たに設けられています。
 また、認定基準について、法案成立後、審議会等において検討することとしており、一定の基準を満たした質の高い日本語教育機関が認定を受けられることとしています。さらに、定期報告等を通じ、指導や勧告、命令、認定取消しの段階的な是正措置をとることができる仕組みも新たに設けられます。
 次に、地域格差、空白地域の解消に、国による財政支援についてお尋ねがありました。
 地域における日本語教育は、日本語教室が設置されていないいわゆる空白地域があり、地域における人材の不足や日本語教室運営のノウハウの不足等が課題と認識しています。このため、地域日本語教育コーディネーターの配置、日本語学習支援者などへの研修や確保、空白地域の市町村への日本語教室開設支援などを行う都道府県、政令指定都市への支援を通じて空白地域の解消に取り組んでいるところです。引き続き、地域の実情やニーズに応じて必要な支援を行ってまいります。
 次に、日本語教育を多くのボランティアが担っている実態についてお尋ねがありました。
 特に、地域における日本語教育など、生活者などを対象に多くのボランティアの方が担っており、今後もボランティアの方の果たす役割は大きいと考えています。他方、今般の法案により設けられる専門的な知識や技能を有する登録日本語教員が地域の日本語教育など多様な場で活躍いただくことも期待されます。
 多様なニーズを踏まえながら、ボランティアの方と登録日本語教員の双方が活躍していただくことが重要であり、研修等の支援施策の充実に努めてまいります。
 次に、日本語教員の処遇改善と地位向上についてお尋ねがありました。
 今後、在留外国人数の増加が見込まれる中、日本語教師の処遇改善のためにも、その必要性や専門性の社会的認知が求められていることから、本法案により登録日本語教員の新たな国家資格を設けることとしております。また、国のサイトにおける研修履歴の蓄積、掲載など、キャリア証明に資する仕組みを検討するほか、登録日本語教員を対象とした研修等を充実させ、その専門性向上を支援する予定です。
 こうした取組や新制度の活用により、登録日本語教員の処遇改善につなげてまいります。(拍手)

国務大臣(齋藤健君)

 吉良よし子議員にお答え申し上げます。
 まず、留学生を安価な労働力として受け入れてきたかどうかについてお尋ねがありました。
 そもそも、留学生は、日本国内の教育機関において教育を受ける活動を行う者であって、就労活動を行う者として受け入れているものではありません。
 留学生に対しては、本来の活動である学業を阻害しない範囲で、アルバイトを通じて留学中の学費及び生活費用を補うことにより学業の遂行に資するという観点から、条件を付して一定の範囲内で就労活動を認めているものであり、条件に違反している留学生に対しては、本人を強く指導するとともに、悪質と認められる場合は在留期間の更新を認めないなど、不法就労防止の観点から厳正に対処しております。
 次に、来日する留学生の実情についてお尋ねがありました。
 御指摘のように、一部の留学生が入国のために多額の借金を抱えて来日している実態が確認されています。その背景には、一部の仲介事業者について、留学生から不当に高額な仲介手数料等を得ていることが疑われるものがあり、対策を講じていく必要があると認識しています。
 そこで、入管庁では、関係省庁とも連携し、仲介業者に関する情報収集に努め、悪質な仲介業者について把握した上で、当該仲介事業者を利用した留学生に係る入国申請について厳格な審査を行うほか、相手国政府に情報提供することなどを通じ、悪質な仲介業者を排除し、留学生の適切な受入れに努めているところです。
 次に、経済力のない外国人を留学生として受け入れてきたのではないかとのお尋ねがありました。
 入管庁においては、経済力がなく、日本国内での就労を目的とする留学生を受け入れることのないよう、その入国・在留審査において、勉学の意思、能力や経費支弁能力について慎重に審査を行うことを通じ、真に勉学に励む目的であることを確認しています。
 また、留学生を受け入れている教育機関に対しては、入学選考及び在籍管理の徹底等を求めるとともに、実地調査や厳格な指導を行うなどしており、御指摘は当たらないものと考えています。
 次に、外国人労働者の受入れについてお尋ねがありました。
 外国人労働者の受入れに関しては、現状、政府においては、専門的、技術的分野の外国人については、我が国の経済社会の活性化に資するという観点から積極的に受け入れていく、それ以外の分野については、日本人の雇用、産業構造への影響、治安など、幅広い観点から国民的コンセンサスを踏まえつつ政府全体で検討していく、こういう考え方に基づき外国人労働者を受け入れています。
 一方、留学生については、学費等を補うことにより学業の遂行に資するという観点から、学業を阻害しない範囲で、一定の範囲内で就労活動を認めているものです。
 今後の外国人労働者の受入れの在り方については、国内の諸情勢や諸外国の状況について把握し、広く国民の意見を聞くことと併せ、政府全体で幅広い検討を行ってまいりたいと考えています。
 次に、週二十八時間の上限を超えて働く留学生を黙認する学校等の実態についてお尋ねがありました。
 日本語教育機関の中には、留学生の在籍管理が不徹底であって、留学生への生活指導が行き届かず、さらには、留学生の不法就労に加担して学校経営者が刑事処分を受ける事案も過去に生じているところです。
 外国人の出入国在留管理を所管する法務大臣として、本法案の趣旨を踏まえ、適正な在籍管理を指導するとともに、悪質な教育機関には厳正に対処してまいります。
 最後に、悪質な日本語教育機関の是正についてお尋ねがありました。
 入管庁では、情報収集や実地調査などを通じ、日本語教育機関における適切な在籍管理の実施や、人権侵害行為などの日本語教育機関の設立、運営に関する告示基準に違反する行為の有無などを随時確認するとともに、留学生に対する違法、不当な行為の有無の実態把握に努めています。
 その上で、問題が生じている日本語教育機関に対しては、厳格な指導によりその是正を求めるとともに、およそ日本語教育機関としての存続が適当でない場合は留学生の受入れを認めない措置をとっており、法務省としては、引き続き、関係省庁とも連携し、適切に対応してまいります。(拍手)