研究者の雇用安定をーー雇い止め容認を批判
要約
日本共産党の吉良よし子議員は13日、参院文教科学委員会で、研究機関での雇い止め問題について質問しました。
吉良氏は、理化学研究所(理研)などの研究機関が3月末、ストライキなどの最中に強行した雇い止めに言及。研究者の使い捨てだと国際的にも注視されているとして、何人が雇い止めにあったのかと質問。文科省は把握しておらず、今後調査すると答えました。
吉良氏は、理研では小型サルのマーモセットを唯一扱える技師が2人とも雇い止めにあい、研究継続が危ぶまれていると指摘。文科省が通知で紹介している理研の新たな人事制度では雇い止めが止まらないと批判し、雇い止めを容認するのかと迫りました。
永岡桂子文科相は「無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的で雇い止めを行うことは、労働契約法上の趣旨に照らして望ましくない」と答えるにとどまりました。吉良氏は、「望ましくないと言いながら(雇い止めを)容認する理研の事例(人事制度)を紹介しては説得力がない」と批判しました。
吉良氏は、研究職は不安定な職業となり、研究者を目指す若者が減り海外に流出しているとして、今こそ研究者の雇用安定性を高める方向にかじを切るべきだと主張しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本法案は、大学や企業の研究のためにナノテラス、次世代放射光施設の共用を促進するものであり、学術研究の発展に資するものだと考えております。
あわせて、先ほど来議論の中でもありますが、学術研究の発展のためには何よりも人が大切だと思うわけです。研究者はもちろんのこと、技術職など研究施設で働く人は多様にいるわけです。しかし、そういう研究施設で働く人々が大切にされているのか、むしろ使い捨てにされてはいないか、危惧を抱かざるを得ない状況があると思うんです。
まず、確認したいと思います。
今回の法案の対象となる量子科学技術研究開発機構全体、そしてナノテラスで有期雇用、ナノテラスで働く人の中で有期雇用の職員というのは何人いるのか、そしてその期限は最短でいつなのか、お答えください。
文部科学省科学技術・学術政策局長(柿田恭良君)
お答えいたします。
量子科学技術研究開発機構におきましては、令和五年三月三十一日時点で、クロスアポイントメント等を含めて有期雇用の職員は九百三名であり、これらの者のうち雇用契約書に定める期間満了日の直近の年月日は令和五年三月三十一日と聞いております。また、同機構においてナノテラスの整備を行っている次世代放射光施設整備開発センターにおきましては、令和五年三月三十一日時点において有期雇用の職員は全体で四十七名であり、クロスアポイントメントを除くと十六名と聞いており、これらの者のうち雇用契約書に定める期間満了日の直近の年月日は令和八年九月三十日と聞いております。
吉良よし子
ナノテラス、量研機構でも有期雇用職が合わせて千名近く、九百三名いて、量研機構でいえば、この三月三十一日に期限が来る方もいると。そして、ナノテラスでも三年後には雇い止めがあり得るということで、これで最先端の研究を問題なく進められるのかということでは疑問が残るわけです。
配付資料を御覧ください。
文科省が今年二月に公表した調査の結果によりますと、大学、研究機関などに雇用されている任期付きの研究者のうち、資料のdからfに当たる者ですが、六千人、約六千人がこの三月末に雇い止めとなる危機に直面しているということがこの資料でも、調査でも明らかになりました。これは、この四月から研究者への無期転換ルールの適用が始まる、それを適用させない不当な雇い止めになると私は思うんですけれども、この三月末にはその雇い止めに抗議するストライキも行われて、これ国際的にも注目をされているものです。
私としても、昨年十一月の時点で大臣にも直接こうした不当な雇い止めやめるようにということを申入れもさせていただきましたし、文科省の方も、昨年十一月と今年の二月、二回にわたってこうした不当な雇い止めを行うことがないような通知を出したということは承知しております。
そして、それで確認をしたいんですが、この昨年の十一月の通知には、研究者、教員等の雇用状況の改善に向けた取組例として理化学研究所の新しい人事施策の導入についてというのが取り上げられています。これはなぜなのか、お願いします。
政府参考人(柿田恭良君)
お答えいたします。
理化学研究所におきましては、通算契約期間の上限規制を撤廃し、現在従事しているプロジェクトの任期満了後も別の研究プロジェクトに参画できる機会を提供するなど、研究所のミッションを踏まえた人事運用の改善に独自に取り組んでいるものでありますことから、当該通知におきまして、研究者、教員等の雇用状況の改善に向けた取組例として記載をしたものでございます。
文部科学省といたしましては、引き続き、大学及び研究機関において法令に基づき適切な雇用管理が行われるよう促してまいります。
吉良よし子
つまり、理研ではこの通算契約期間の上限規制を撤廃したと、これが雇用継続につながるという事例だということで紹介をしたということなんですが、しかし、この通算契約期間の上限規制の撤廃というのは、理研においてその適用というのは四月一日以降だと聞いているんです。つまり、この三月末の雇い止めの対象となる研究者の十年雇用上限の撤廃はされてはいないというわけなんですね。
文科省、確認したいんですが、今年の三月末に、大学、研究機関、とりわけこの理化学研究所で雇い止めに遭った人というのは何人いるのか、調査していますか。
政府参考人(柿田恭良君)
お答えいたします。
無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的でいわゆる雇い止めを行うことは労働契約法の趣旨に照らして望ましくなく、研究者等の雇用管理については、各機関において法令に基づき適切に対応する必要があります。
文部科学省といたしましては、昨年度、全国の国公私立大学、大学共同利用機関法人及び研究開発法人に対して実態把握のための調査を行ったところでありますが、本年三月末時点での各機関の雇用の状況につきましては、現時点で網羅的には把握をしておりません。
引き続き、雇用状況のフォローアップのための調査を実施するとともに、労働契約法の特例ルールの適切な運用についてしっかりと各機関に対応を求めてまいります。
吉良よし子
つまり、三月末の時点でどれだけ雇い止めがされたのかされなかったのかの調査これからだということなわけですけれども、理化学研究所では、二〇二〇年四月に在職していた者のうち、この十年雇用上限を理由にして三百八十人が雇い止めになると、労働組合などが撤回を求めていたわけです。しかし、この理研当局というのは、この大量の雇い止めをこの三月末に強行したと聞いています。
例えば、雇い止め撤回の提訴を今年に入ってした、小型の猿、マーモセットなどの実験動物を飼育している技師の二人、理研ではこのマーモセットを扱えるのはこの二人しかいないわけですが、その二人ともが雇い止めをされて再任用もされず職を失ったと、そういうことを直接聞いているわけです。
しかも、理研の場合、就業規則の改定で、雇用上限の撤廃どころか、理研の現職及び新規採用の任期付きの研究者については、研究プロジェクトの期間とは関係なく、所属長の判断で雇用上限を設けられるようにしてしまっていると。つまり、プロジェクト期間とは関係ない雇い止め、これこそまさに文科省も望ましくないとしている不当な雇い止めの事例そのものではないかと思うわけです。
改めて、大臣、こうした理研の人事施策を通知に載せるっていうことは、大学、研究機関でのこうした雇い止め、不当な雇い止めも容認することになるのではないかと私思うんですが、文科省はこうした不当な雇い止めを容認するという立場なのですか。大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(永岡桂子君)
無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的でいわゆる雇い止めを行うことは労働契約法上の趣旨に照らして望ましくありません。研究者の雇用管理につきましては、各機関におきまして法令に基づき適切に対応する必要があります。
文部科学省といたしましては、実態把握のための調査を行うとともに、各機関の適切な対応を求める通知を発出するなど、個別の機関の状況をもしっかりと確認しつつ累次にわたり働きかけてまいりました。引き続きまして、フォローアップのための調査、実施するとともに、労働契約法の特例ルールの適切な運用についてしっかりと各機関に対応を求めてまいります。
吉良よし子
望ましくないと繰り返しおっしゃられるわけですけれども、実際に雇い止めは起きてしまっていると。
先ほど例に挙げたこのマーモセットを扱っている技師の方は、私たちが雇い止めになればマーモセットの健康維持や治療、法令遵守の取扱いができなくなると。ちなみに、このマーモセットって理研に百三十頭、今飼育、繁殖させているそうなんですけれども、それが扱えなくなるっていうような訴えもあるわけなんです。なのに、そうした雇い止めをしている理研の事例を紹介していてはやっぱり何の説得力もないわけで、やっぱりこれは正していくべきなんじゃないのかと。
何より、文科省、この間、研究者の流動性高めるためとして有期雇用の職員を中心とした人事体制としてきたと、それにより研究職は今不安定な職業となっていて、研究者を目指す若者は減っています。そして、その結果、研究者の海外への流出も起きているわけで、やっぱりこのことをもっと直視するべきだと私は思うわけです。
改めて、大臣、今こそこの研究者の流動性の確保よりも研究者の雇用の安定性、これを高める方向にかじを切るべきではないかと思いますが、いかがですか。
国務大臣(永岡桂子君)
研究者のキャリアパスにつきましては、多様な研究経験を積むことによって能力の向上が図られるという特性がございます。このような特性を踏まえて、人材の一定の流動性を確保した上で、研究者が安心して研究に専念できる環境を整備することが重要であると考えております。
このため、文部科学省におきましては、若手ポストの確保など人事給与マネジメント改革などを考慮した運営費交付金の配分、そしてポストドクター等の雇用・育成に関するガイドラインの策定、そしてもう一つ、多様な財源を戦略的かつ効果的に活用することで研究者の安定的なポストの確保を図る取組の推進などの施策を講じまして、基盤的経費や競争的経費ですね、研究費を確保してまいりたいと考えております。
今後も、人材の流動性の確保と安定的な研究環境の確保の両立を図ることができますように、関係省庁と連携しながら各機関における取組を促してまいりたいと考えております。
吉良よし子
学術研究の発展のためにはやっぱり安定雇用こそ必要であるということを強く申し上げて、質問を終わります。