【私立学校法改正案 参考人質疑】現場の意見反映必要
要約
参院文教科学委員会は20日、私立学校法改定案について参考人質疑を行いました。
改定案は一部の学校法人で理事長らが独裁的な権力を握り、脱税やパワハラなどさまざまな問題を起こしていることを受けたもの。
丹羽徹龍谷大法学部長は私立大学の不祥事について、「理事会、理事長へ権限が集中することが可能な現行の学校法人制度に欠陥がある」と指摘。今回の法改定では「なお不十分だ」として、理事選任の課題を挙げ、「大学あるいは学校法人の運営は、教学からのボトムアップ(現場からの提案)で合意を得ながら意思決定していく仕組みを持っている学校では不祥事をあまりみない」と述べ、理事、評議員の選出もボトムアップ型の意思決定が可能な仕組みをと求めました。
日本共産党の吉良よし子議員は、法案の検討過程で、職員を法人運営から排除する仕組みが構想された問題について質問。村田治大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長(関西学院大経済学部教授、前学長)は「教職員が完全に排除されているところがやはり大きな問題だ」「現場の意見が全く反映されないガバナンス(統治)はあり得ない」と答えました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本日は、三人の参考人の皆様、貴重な御意見ありがとうございます。
初めに、三人の皆様それぞれに伺いたいと思うんですけれども、残念ながら、私立学校、とりわけ私立大学で不祥事と言われる事例があって、その原因が理事会、理事長の権限集中による私物化であるとの指摘がある中で、こうした問題点を改善して私立学校の公共性と教育研究の質を高める法改正、これはもう本当に必要なことなのは間違いないと思うんですけれども。
先ほど来もちらりとありましたけれども、今回の法改正に至る経緯を振り返りますと、やはり一昨年、二〇二一年の十二月の学校法人ガバナンス改革会議の提言があったわけで、それにおいては、評議員会を最高監督、議決機関とするだけではなくて、その学内の教職員を排除した外部識者のみでこの評議員会を構成するという中身での提言が出されたと承知をしております。しかし、これについて私学関係者の皆さんからの反対があって、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会、学校法人制度改革特別委員会で改めて議論されて今回の法案になったと理解しているわけですけれども、改めて、この学校法人ガバナンス改革会議の提言というのは一体何が問題だったとお考えなのか。それが本当に解決されたと考えられているのかも含めて、三人の皆様からお聞かせいただければと思います。
関西学院大学前学長・同経済学部教授・大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長(村田治君)
ありがとうございます。
恐らく一つは、今議員、先生おっしゃったように、教職員が完全に排除されてしまっているところ、これがやっぱり大きな問題になったんだろうというふうに思います。
といいますのは、二つありまして、一つ、先ほど来も申し上げましたように、理事会とそれから評議員会のところで、評議員会を最高議決機関とするとした場合に、じゃ、理事会の役割は何なんですかという形で、そこが非常に曖昧になってしまったんではないかと私は感じているところでございますが、同時に、やはり今申し上げましたように、教職員を排除してしまうというのは、やはり大学の場合、教職員が担っているわけで、現場の意見が全く反映されないガバナンスというのはあり得ないと思っているんですね。と同時に、現場だけの意見でのガバナンスもあり得ない、バランスが欠くと思っております。
そういう意味では、今般、三分の一というところが先ほど言いましたように非常にバランスの取れた数字ではないかというふうに思っております。私はそう理解をしてございます。
全日本私立幼稚園連合会会長(田中雅道君)
私は、地域というのを、多分、小規模であればあるほどそういうことを根差しているものになりますので、地域との連携というものをどう持っていくのかということが本来主眼であったわけで、その組織の中の理事会であるとか評議員会ということをそう多く型にはめていくというよりかは、柔軟な制度の中で動いていくということが今回の制度である程度は認められてきたということが意味があると思っています。
龍谷大学法学部長・教授・学校法人龍谷大学理事・評議員(丹羽徹君)
学内者を排除するということになると、学外者によって学校そのものが支配されてしまう。要するに、学校そのものの在り方が変わってしまうというように、ガバナンス改革のあの提言というか、あっちのものというのはそういうふうに受け止めていました。
学校設置ですから、学校の関係者がやっぱり一番、何というか、重要なステークホルダーだというふうに思いますので、そこが排除されていたというのがあの提言の最大の問題点だったというふうに思っています。
吉良よし子
やはりこの教職員を学校の運営から排除してはならないんだということ、そして、地域との関係性も大事だというお話だったと思うんですけれども、実際、不祥事などを見ていますと、こうした学校運営に対して内部から意見を上げている人たちもいるわけです。しかし、その多くが現場の教職員なんですけど、しかしその教職員の皆さんがせっかく声を上げても、それが反映されないままに終わってしまっているような例もあると思っているんです。
やはり、そういう意味では、このガバナンスをより機能させていくためには、この学校法人の運営に教職員、本当に参加していくこと大事ですし、その意見をちゃんと反映させる仕組みというのが必要だと思うんですけど、これは、村田参考人、丹羽参考人それぞれ、改めてこの、まあこの法案のみならず、これからを踏まえて教職員の意見を運営にどう反映させていく、どういう仕組みをつくっていくべきかという点で御意見いただければと思います。
参考人(村田治君)
極めて関西学院大学の例で申し上げるのでちょっと申し訳ないんですけれども、基本的に、関西学院の場合は評議員会というのがありまして、そこには、教員、職員から選ばれた者が入ってございます。
今は、御存じのように、理事会とそれから評議員会の兼職が認められておりますからダブっておりますけども、恐らく、評議員会と理事会の兼職がこれからこの法案が通れば認めなくなりますが、その場合におきましても、やはり職員、教員の評議員の数というのはある一定数は、まさに三分の一とありますように、担保していくことは必要であろうかな、やっぱりそういう意味では現場の意見が反映できる仕組みは置いておくべきだろうと。ただ、現場の意見だけで動くのも問題だというふうに思いますので、そこのバランスだと思います。そこは、だから三分の一というのが私が申し上げたところでございます。
参考人(丹羽徹君)
幾つかのチェック機能というのは必ずしもこの、何というか、評議会、理事会だけではなくて、例えば、きちっとした公益通報の制度が機能していれば、不祥事って恐らく幾つかは防げているはずなんですよね。そこが機能していないのはなぜかということも少し問題として取り上げていただければというふうに思います。
教職員の意見なんですけれども、私、複数のチャンネルでいろんな人が選ばれるのは重要だというふうに申し上げましたけれども、例えば、現在、私なぜ理事をやっているかというと、学部長選挙で学部長になったので、それで学部長が理事になるという、こういう仕組みなんですよね。なので、学部の教授会が理事を選ぶという、こういうシステムになっているわけです。例えばこういう形で理事が選出されるということが、複数のところから、それによって相互でチェックし合えるという、多様なステークホルダーの中でいろんな形でそこのところに上がっていくという、こういう仕組みというのは非常に重要だというふうに思います。
場合によっては時間が掛かるんですね。こういうの、極めて民主的なので時間が掛かるんですけれども、公益法人ですから、その点について、時間が掛かるからといってそういうのは避けるべきだというようなことには本来ならないんだろうというふうに思っています。
吉良よし子
三分の一というのも大事だし、やはりその選び方ということも本当にこの意見を反映させる上で大事なんだなということがよく分かりました。ありがとうございます。
あわせて、最後になるかと思いますが、丹羽参考人に伺いたいと思うんです。
今回の法改正では、評議員会が監事を選任するとか、若しくは評議員会への議決事項を明記するほか、理事選任機関設けるなど、理事会チェックする仕組みはできていると思うんです。
その一方で、先ほど来御指摘あったように、その具体的な中身というのは寄附行為によるという規定も多いと。ある意味寄附行為任せになってしまっている面もあるかと思うわけですけれども、最初の意見表明の中で理事選任機関の問題というのが挙げられましたけど、それ以外の部分を含めて寄附行為任せになっていることでどんな課題が出ると考えられるのか。その辺り、教えていただければと思います。
参考人(丹羽徹君)
ありがとうございます。
申し上げたように、理事の構成、理事会の構成もそうですし、それから評議員会の構成もそうなんですけれども、結果としてやはり権限が集中してしまうということがやっぱり最大の問題だというふうに思います。
さらに、教学の声、一定反映されることにもなるんですけれども、この間の審議の中で、学校でのことについても理事会の権限であるかのような審議で発言があったりしています。それは法的に言うとやっぱり問題だというふうに思っていまして、それを前提にして、そういうものを前提にして理事会が、あるいはこの今回の場合評議員会、評議員会もそうなのかもしれませんけれども、学校法人を運営していくと結局はそこに権力が集中していくという、大学、学校の側の様々な組織も理事会の方で一方的に決めてしまえるような、そういうことになりかねないという、そういう危惧を持っているということであります。
吉良よし子
やはり、寄附行為次第にしてしまうとどこかに権限が集中してしまう可能性が残ってしまうという点では、やはりそれをさせないための法なり仕組みが必要だということだと理解をいたしました。
三人の参考人の皆様、今日は本当にありがとうございました。
終わります。