【著作権法改正案】著作権の二次利用 実演家の許諾 徹底を
要約
著作権者の意思が確認できない著作物の二次利用を可能にする新制度創設等を柱とする著作権法改正案が16日の参院文教科学委員会で全会一致の賛成で可決しました。
日本共産党の吉良よし子議員は採決に先立つ同日の質疑で、実演家に対する再放送などの二次使用料について、契約をしていない、分からないという人が8割もいると紹介。実演家から「何度も何度も再生され、作品への冒涜(ぼうとく)だ」といった声があがっていると指摘し、改善を求めました。
永岡文部科学相は「実演家の許諾を得ずに無断で利用することは著作権等の侵害」「当事者間の契約で取り決めることが基本」と答えました。
吉良氏は、2021年7月に文化庁が策定した契約関係構築に向けたガイドラインで、著作権について契約時または二次利用を行う際に実演家の許諾を得て二次利用料を払うことが必要だとしているとして、周知を求めました。
永岡文科相は「二次利用の取り扱いを含めガイドラインの考え方の普及・啓発を図る」と答えました。
吉良氏は、人工知能(AI)による著作物の利用についても、著作物などの権利者から許諾を得るための仕組みや利用料の徴収などのルールを設けるよう求めました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本法案で創設される新しい裁定制度、未管理公表著作物等について文化庁長官の裁定により時限的な利用を認める仕組みについて、私も伺いたいと思います。
まず、改めての確認となりますが、文科大臣、この著作物の利用については著作権者等の許諾を取るというのがそもそも原則であり、今回の新しい裁定制度というのはあくまでも例外の措置であると、そういうことでよろしいでしょうか。
国務大臣(永岡桂子君)
お答え申し上げます。
新たな裁定制度は、法律上の要件を満たせば直ちに著作権者の許可なく、許諾なく利用が認められる仕組み、いわゆる権利制限規定の形を取ってはおりません。
この制度は、他人の著作物を利用する場合に著作者の、あっ、著作権者の許諾が必要であるという基本原則にのっとりまして、著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思が確認できない場合に、文化庁の長官の裁定によりまして、その意思が確認できるまでの間、使用料相当額の補償金を支払うことで利用が認められるという仕組みになっております。
このような新たな裁定制度は、デジタル時代にコンテンツを利用いたします様々な場面の中で、クリエーターの意思や権利を尊重しながら、権利者にとりましても利用者にとりましても利用しやすい柔軟な仕組みであると考えておりまして、著作権の基本原則を転換するというものではないと思っております。
吉良よし子
著作権の基本的な形、原則を変えるものではないし、意思が確認できない場合に限るこの裁定制度だということでしたが、今回の新たな裁定制度というのは、著作者が不明じゃなくて、先ほどあった、意思が確認できない、連絡が取れない場合の一定期間の利用だということですが、じゃ、午前中も議論ありましたが、この連絡取れないとはどういう状態なのかと。手紙送ったり電話できたりして、こうすればいいんですけれども、ネット上の作品の場合は、多くの場合、SNSを通じた連絡になろうかと思うわけです。
SNSの場合には、例えば相互フォロー等の交友関係ない場合であればDM等が送れない仕組みになっているようなものもあるでしょうし、若しくは大量に連絡が来たらその中にうずもれてしまってなかなかそのメール自体を確認できないとか、若しくは詐欺的な連絡と誤解してしまうとか、又は御自身に対する誹謗中傷を目にするのを避けるために基本的にはそういう連絡機能は見ないようにしている方もいるわけで、そうした様々な事態が考えられる中、例えばこのDMやメールアドレス宛てに一度連絡さえすれば、それをもって連絡を試みたけれども連絡取れない状態だとなってしまっては著作権者にとって不利益になりかねないのではないかと思うんですが、文化庁次長、この連絡が取れない状況というのはどういう状況か、何日返信がなければ、また何度その連絡を取るためのアクションを取れば連絡が取れない状況とみなされることになるのでしょうか。
文化庁次長(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
著作権者からの返答がない期間につきましては、著作物の種類やその利用形態、許諾を得るための連絡手段により多様なケースが考えられるところでございます。
このため、実際の運用に当たりましては、制度の周知状況、利用者側のニーズ、著作権者側の負担などを総合的に配慮をしながら、合理的と考えられる期間を設定することを考えております。
現行の著作権者不明等の場合の裁定制度による利用に当たりましては、著作権者をインターネットや新聞広告などにより探索する手続を取ることとしておりますが、その期間は一週間、一週間程度とされておりまして、こうした現在の運用も参考にしたいと考えております。
今委員御指摘のいろんなパターン、いろんなことにつきましては多分皆様も本当心配されると思いますので、我々もよく現場の声を聞きながら、そこの辺りをどのような形で皆様に周知していくか、よく考えてまいりたいと思っております。
吉良よし子
いろんなパターンについては配慮しながら対応していただくということで、是非、先ほどは権利制限ではないという御答弁でしたけれども、今回の裁定制度、どちらかというと利用円滑と権利制限でいえば権利制限の側面が強い制度でもあると思いますので、権利者に配慮した運用を是非心掛けていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
また、今回の裁定制度により、著作物の利用が認められた場合でも、著作権者等が申し出ればその利用は一旦中止してそれまでに支払われた補償金が権利者に支払われると、こういう仕組みなわけですが、じゃ、この著作物の利用期限が過ぎて利用が終わった後はどうなるのかと。この裁定制度による著作物の利用期限が過ぎた後でも権利者が申し出ればその補償金受け取れるという仕組みなのか。その補償金の受取の期限というのはどのようになっているのか、お答えください。
政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
補償金につきましては、裁定による利用期間経過後におきましても、権利者は指定補償金管理機関に請求することにより受け取ることが可能です。また、法律上、補償金を受け取る期限は設けられてはおりません。
ただし、この債権は通常の民事上の債権でございますので、こうしたことから民法の定める債権の消滅時効に掛かることとなります。
具体的な消滅時効の期間といたしましては、著作権者が補償金の支払を請求できることを知ったときから五年間又は請求できることを知っているか否かにかかわらず支払を請求できるようになったときから十年間となります。
吉良よし子
基本的には期限設けずに補償金を受け取れると、ただ民法の制限もありますので注意してくださいねということだったと思うんですが、いずれにしても、この裁定制度によって、特に権利者等、不利益被る人がいないように丁寧に対応していただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。
こうして丁寧な対応を求めるのはなぜかといいますと、それは現状でも著作権者等が二次利用料をもらっていないとか、あるいは本来の権利者が承知していないところで勝手にその二次利用等がされてしまっている実態があるとの指摘もあるからです。
日本芸能従事者協会が行った芸能実演家の契約に関する実態調査によれば、著作隣接権によるこの二次利用料についても契約をしたいという方は六割以上いるにもかかわらず、その二次利用については、そもそも契約していないし、どうなっているか分からないという方が八割いて、実際に御自身が出演したり権利者として関わったりした作品の再放送や再利用の状況が分からないよという方も九割近くいるという状況だと。
寄せられた声には、演芸の場合、何度も何度も再生され、作品への冒涜だと思うという声や、せめて再放送の都度確認してほしいし、再放送料をもらいたいとか、でも二次使用料に関して問合せしてもぞんざいな対応をされることが多々あり悔しい思いしていますとか、こういう声が届いているわけですが、大臣、改めて、こうした著作物の二次利用について、その実演家などの権利者がほとんどその情報を知らない、契約時にもそうしたことが明示されない、利用料の支払もほとんどないという状態は著作権侵害としても問題であり、やはり改めていくべき課題であるかと思いますが、いかがでしょう。
国務大臣(永岡桂子君)
お答え申し上げます。
著作権法におきまして、実演家は著作隣接権というものを有しております。実演の利用に当たりましては、実演家の許諾を得ずに無断で利用することは、これは著作権等の侵害に当たります。この実演家が有します著作隣接権の行使につきましては、著作権法に定める権利が私権であるため、当事者間の契約で取り決めることが基本となっております。
文化庁では、令和四年の七月ですが、文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインというものを公表したほか、研修会の実施や弁護士によります相談窓口の開設を行っているところでありまして、様々な機会を通じまして十分な意見交換に基づいた適切な契約が結ばれるように周知をしてまいります。
また、著作権の仕組みを権利者、利用者双方がよく理解をして、そして適切に取り扱うことが重要でございまして、引き続きまして著作権に関する普及啓発に広く取り組んでまいります。
吉良よし子
つまり、実演家の出ている作品の再放送、二次利用に関して、二次利用料を払わないとか、それについては元々契約で取り決めていないとかというのは著作権侵害に当たるわけで、やはり契約でちゃんと取り決めなきゃいけないよねという話だったと思うんですが。
この契約について、文化庁が行った文化芸術活動に携わる方々へのアンケートの調査結果で、この契約に当たって書面のやり取りをしていますかとの問いで、書面によりやり取りをしていない人というのはどの程度に上ったのか、文化庁次長、お答えください。
政府参考人(杉浦久弘君)
文化庁では、文化芸術の担い手である文化芸術家等の実態を捉え、芸術家等の活動基盤を強化していくため、新型コロナウイルス感染症の影響と活動実態を捉えることを目的として、令和二年九月に、委員御指摘の文化芸術活動に携わる方々へのアンケート、これを行いました。
その調査結果でございますが、お尋ねの文化芸術を行う団体、企業、個人事業者との契約等に当たって、以下のような書面のやり取りをしていますかという問いに対しまして、複数の選択肢から一つだけ選んでくださいという形で回答をお願いしたところ、特に文書のやり取りはなく、メールのやり取りしかない、又は特に文書のやり取りはなく、電話、対面での口頭でのやり取りしかないと回答された方は合計で全体の六二・八%に上りました。
吉良よし子
半数超える方々が書面で、正式な書面での契約のやり取りをしていないということなんですね。
それによりどのようなことが起こるのか。同じくこの文化芸術活動に携わる方々へのアンケートの調査結果で、これまで依頼者や雇用主との関係でどのようなことがありますかの問いで、多いもの、一番目、二番目、お答えください。
政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
一番多かったものが、依頼を受ける際に報酬や仕事に係る内容について明示されていなかった、これが一九・六%でございました。次いで、給与や、失礼しました、報酬や給与が低過ぎるなど不利な条件での仕事の受託を求められたと回答された方が一三・三%でございました。
吉良よし子
要するに、この契約がないことで、先ほどの二次利用の支払も含め、報酬が低過ぎる不利な条件で働かされる状況が出ていると。
こうした契約がない問題を解決するために先ほどあったガイドラインというのが取りまとめられたと承知しているわけですが、このガイドライン見てみると、二次利用という言葉は直接的にはガイドラインの中のこのひな形例というのを細かく見ないと出てこないんですよね。著作権、権利について、許諾の場合の利用範囲や譲渡の範囲などは十分に考慮しましょうねということはあるんですけれども、やはり、大臣、改めて、このガイドラインの言う十分考慮すべき許諾の場合の利用範囲の中に先ほど来話している二次利用の扱いも含まれるんだと、で、契約時若しくは二次利用を行う際にきちんと実演家含む権利者の許諾得てその二次利用料を払うことが必要なんだということもちゃんと周知していくべきと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(永岡桂子君)
文化庁では、令和四年の七月に公表いたしました文化芸術分野の適正な契約関係構築のためのガイドラインにおきまして、著作権等の二次利用等に応じた適正な金額となるよう双方で十分に協議すべき、また、具体の権利の取扱いを明確にし、対価の決定時に十分考慮すべきこと、契約内容の範囲を超えた利用については別途追加報酬を設定することなどを示しているところでございます。
こうしたことから、文化庁では、令和四年度から研修会の実施ですとか弁護士によります相談窓口の開設を行っているところでございまして、令和五年度につきましても引き続き実施をすることで、二次利用の取扱いを含めガイドラインの考え方の普及啓発を図りまして、芸術家等が本当に適正な契約関係を構築できるように取り組んでまいりたいと思っております。
吉良よし子
是非そのことを周知していただいて、この二次利用に関わって実演家や権利者が泣き寝入りしないで済むようにしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。
あわせて、先ほど来議論になっておりますAIによる著作物等の利用についても私も伺っておきたいと思います。
AIが普及しつつあり、今、様々な場面での利用が始まっている中で、様々懸念、不安が出ているわけで、アメリカやハリウッドではこのAIの利用等について脚本家一万一千五百人以上が大規模ストライキを行ったとか、日本の場合でも、芸能従事者などが、AIの芸術、芸能分野への参入は、芸術、芸能従事者の著作権やその他の権利の十分な保護を伴う必要があり、必要な法的保護を導入するようという要望書を国に提出したと聞いているわけですが。
例えば、日本でもAIタレント事務所などが立ち上がったということも聞いているわけです。つまり、AIのつくったタレントが洋服などのブランドの着用モデルとして活用されるとか、様々な場面で既にそういうふうに活用されている事例もあるというふうに聞いているわけですが、このAIがつくったとは言いますが、勝手にAIがゼロのところからつくるわけではないわけで、先ほど来議論あるとおり、その前の段階で必ず基となる俳優さんの顔とか姿、形、動作、若しくは声優さんの声とか、またそうした俳優や声優が活動しているような動画作品であるとかイラストとかも含めて様々な著作物等を取り込んで作成されたものだとなるわけですね。つまり、基となる著作物や実演家等がいる、あるのが前提だと思うわけです。
現在の著作権法上、先ほど来指摘ありますが、そのAIについては、ディープラーニングをする場合には無許諾で著作物が利用できると。ただ、このディープラーニングというのは、当時の法案の説明によると、人の知覚による認識を伴わない利用だということなんですね。だから、つまりは、たとえディープラーニングをしたとしても、その後ですよね、その内容を人の知覚で認識できるような形で公表すると、そうした段階ではすなわち基の著作権者に対して許諾を得る必要があると思いますが、いかがですか、次長。
政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
おっしゃるとおりでございまして、AIで生成される、生成されたもののコンテンツにつきましては、やはりそれは著作物としてのものが、著作権の問題がどうなっているかということはきちっと処理しなければならないというふうに考えております。
AIによって生成されたコンテンツにつきましては、まず、著作権として成り立つかどうかというところで申し上げますと、既存の著作物と創作的表現が同一又は類似であること、いわゆる類似性があるかということと、あと既存の著作物を基に制作したなということ、いわゆる依拠性というふうに申し上げていますけれども、この二つが認められる場合には、その既存の、基の著作物の著作権者に許諾を得るという必要が出てまいります。
吉良よし子
つまり、AIが作成したものであっても、その基となる著作物等の類似性や依拠性というものが認められればそれに対しての許諾を取っていく必要があるし、必要に応じて利用料等を払っていかなきゃいけないと、そういうことなんですね。
ただ、問題は、結局そういう許諾というのが適正に行われていなくて、著作権者、権利者が知らないうちにそうしたAIのデータ生成等が行われてしまっているということなんですね。
このAI規制を求める要望で集められたアンケートでは、自分の作品が知らない間にAIに取り込まれて再利用されていくことに憤りを感じますと、これ作るのにどれだけの時間掛かったのかと、そういう声が上がっているわけで、やはり大臣、今の法体系の下でもその許諾を取る仕組みというのをちゃんと整えていくことはできるし、必要なんじゃないかと。AIにより作成された表現の基となった著作物等の権利者から許諾を得るための仕組み、利用料の徴収などのルール化、進めていく必要あるのではないかと思いますが、大臣、最後、いかがでしょう。
国務大臣(永岡桂子君)
著作権法の第三十条の四につきましては、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用ということにつきまして、著作権者の許諾なく著作物の利用を可能とするということになっております。このような利用は、著作物に係る対価回収の機会を損なわずに、著作権法が保護する著作権者の利益を通常害しない行為と考えられることから、同条におきましては著作権者に対する補償金や利用の許諾といった仕組みとはなっておりません。
文部科学省といたしましては、今後もAIの進展や新たな技術の展開等も踏まえまして、随時研究を行いまして、引き続き著作権制度について分かりやすい説明に努めてまいりたいと考えております。
吉良よし子
大臣、私もそのディープラーニングをする段階で許諾を得る必要がないというのは理解しているんですが、その後にAIがその基になった著作物と類似であったり依拠性があるものを表出した場合には許諾を取る必要があるわけだし、その許諾をするための仕組みをつくることが必要ですよねということを申し上げているつもりです。
時間がありませんが、少なくとももう各国でこうしたAIの利用に関しての著作権等の在り方について議論進んでいるわけで、お隣の韓国でももう協議会などが立ち上げられてクリエーター等の保護の必要性についての議論進んでいると聞いているわけで、是非日本でも、この時代に合わせて、AI利用とクリエーターへの権利の保護の在り方についてルール化、議論を進めていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。