教員の長時間労働 残業代不支給やめよ
要約
日本共産党の吉良よし子議員は23日の参院文教科学委員会で、教員の異常な長時間労働の問題を取り上げ、月給の4%を一律支給する「教職調整額」と引き換えに、公立学校の教員に残業代を払わない「給特法」の残業代不支給制度の廃止を求めました。
吉良氏は、文部科学省の2022年度調査の小中学校の教員の勤務時間が06年度の調査を上回り、精神疾患による休職者も千人以上増えたと指摘。同省の「働き方改革」の延長では長時間労働は解決しないと主張しました。
吉良氏が労働基準法で残業に割増賃金を払うと定めている意義を問うたのに対し、厚生労働省の担当者は法定労働時間を守らせるための「一つの支柱」だと回答。吉良氏は「教員への残業代支給は対価を払うにとどまらない、長時間労働是正の効果がある」と力説しました。永岡桂子文科相は「総合的に検討していく」とし、残業代支給には一言も触れませんでした。
吉良氏は、自民党が提案する教職調整額の10%への引き上げに必要な経費は総額2000億円(国費690億円)で、かつて文科省が試算した残業代の9000億円(国費3000億円)の5分の1程度にすぎないと批判。残業代不支給制度を廃止してこそ、教職員定数の抜本改善や授業時数の見直しなどの業務改善が進むと訴えました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
今日は、教員の働き方について質問したいと思います。
四月二十八日に令和四年度教員勤務実態調査の速報値、これが公表されました。大臣は、調査結果について、働き方改革の取組に一定の進捗が見られると評価しています。
果たしてそうなのでしょうか。今回の勤務実態調査の結果でも、文科省指針、月四十五時間以上の長時間労働をしている教員というのは半数以上、小学校でも六四・五%、中学校でも七七・一%の多数派となっているわけです。到底、所定の勤務時間、七時間四十五分で収まらない業務量をこなさざるを得ない実態が学校現場にあるということは明らかです。昨日の中教審の総会でも同様の指摘、本来業務のところでスポットを当てても七時間四十五分の中に収まらない状況があると、そういう指摘があったと聞いているわけです。
そもそも、この教員の長時間労働の実態が明らかになったのは、前回の二〇一六年の調査ではありません。その十年前、二〇〇六年に政府が教職調整額四%と定めて以来の四十年ぶりの勤務実態調査を行われたときに、初めて教員の長時間労働の実態が可視化されたと承知しているわけです。
では、その二〇〇六年の勤務実態調査の結果はどうだったのか。小学校、中学校それぞれの教員の平日一日当たりの在校等時間、答えてください。
文部科学省初等中等教育局長(藤原章夫君)
前々回の調査である平成十八年度の教員勤務実態調査でございますけれども、これにつきましては、学期中である十月、十一月の教諭の一日当たりの平日の在校等時間は、小学校において十時間三十二分、中学校において十一時間となっていたところでございます。
吉良よし子
今回、二〇二二年の調査では、教師の一人当たりの在校等時間、小学校で十時間四十五分、中学校で十一時間一分なので、その二〇〇六年と比べればほぼ同じ、むしろ二〇〇六年より長いというのが今回の調査結果なわけです。
まして、今回の調査というのはまだコロナ禍の影響が残る時期のものであり、識者のコメントでも、忘れてはならないのは二〇二二年度の特殊性であると、臨時休校が明けても自粛モードが終わらず、調査が行われた二〇二二年になっても運動会などの行事が中止、縮小されたのは御承知のとおりということで、それを考慮しないで在校等時間が減っていると単純に解釈するのは危険でしかないと指摘がされているところです。
そして、コロナ禍の、コロナの下であっても、教員の過酷な勤務実態は深刻化しているという状況を表すデータもあるわけで、二〇二一年度、精神疾患による病気休職者の人数というのは何人になっていますか。局長、お願いします。
政府参考人(藤原章夫君)
お答えいたします。
昨年十二月二十六日に公表した令和三年度公立学校教職員の人事行政状況調査の結果によれば、直近の令和三年度には、公立学校の教育職員の病気休職者は八千三百十四人、そのうち精神疾患による病気休職者は五千八百九十七人となっているところでございます。
吉良よし子
五千八百九十七人が精神疾患による病気休職となっているわけですが、これ過去最高の数なんです。
先ほど勤務時間の比較をした二〇〇六年度のときの精神疾患による休職者数というのは四千六百七十五人。この当時でもこれ過去最高の数字だったわけですが、それよりも千人も増えていると。もうこのことだけでも在校等時間だけでは測れない学校現場の過酷さというのは表れていると思いますし、その結果、教員希望する人が減少したり、四月に担任がいないなどの教員不足、どんどん深刻化していると思うわけですが、大臣、改めて、今回の結果というのは、この二〇〇六年度の調査結果との比較、若しくはこの精神疾患による病休者数の推移などのデータを加味すれば、決して一定の進捗が見られるなどと楽観視できる状況ではないんじゃないかと。
これまでの働き方改革の延長ではない、抜本的な対策が必要な状況だということが今回の結果からも明らかだと思いますが、いかがですか。
国務大臣(永岡桂子君)
令和四年度の勤務実態調査の速報値におけます一日当たりの在校等時間につきましては、平成十八年度と比較をして、必ずしも同じ調査手法ではないという点に留意をする必要があるものの、職種等によりましては一部改善している項目がある一方で、教師につきましては平成十八年度の水準までには至っていないと承知をしているところでございます。
なお、平成二十八年度の前回調査との比較では、全ての職種で平日、休日共に在校等時間が減少しておりまして、働き方改革の成果が着実に出つつあると考えております。
一方で、依然として長時間勤務の教師も多く、引き続きまして取組を加速させていく必要があると、そういう認識でございます。
このため、文部科学省におきましては、令和元年のこれ給特法ですね、この改正を踏まえまして、勤務時間の上限等を定める指針を策定するとともに、教職員定数の改善や支援スタッフの充実、学校DXの推進等を含めまして総合的にこれ進めているところでございます。
そして、今回の調査の速報値等を踏まえまして、質の高い教師の確保のための環境整備について、これ、昨日でございますが、中教審に対しまして諮問をいたしました。
私といたしましては、教育の質の向上に向けまして、働き方改革、処遇の改善、それから学校の指導、運営体制の充実、これを一体的に進めていきたい、そういうふうに考えております。
吉良よし子
引き続き取り組むということですけど、私、引き続きの取組では話にならないんだと、やはり抜本的な取組が必要だと。教員の定数を抜本的に改善する、業務を本気に減らしていくということが必要だと思うし、そして何よりも、給特法により公立学校の教員だけに適用されている残業代不払、不支給制度を廃止することなしに、この長時間勤務を是正する抜本的な改善はできないと思っているわけです。
先ほど、中教審において教職調整額の在り方についても含めて諮問されたという話がありましたけれども、これ、やはり給特法によるこの残業代不払制度の廃止、これを本格的に議論すべきではありませんか。大臣、いかがでしょう。
国務大臣(永岡桂子君)
教師の処遇を定めました給特法の在り方も含めて今後具体的に検討していくべき課題と認識をしておりまして、昨日、中教審に対しましてこれ諮問いたしたわけでございます。今後、勤務実態調査の速報値等を踏まえつつ、また、論点整理を基に総合的に検討していただくこととしております。
私といたしましては、やはり教育の質の向上に向けまして、働き方改革、処遇の改善、そして学校の指導、運営体制の充実、これ一体的に進めていきたいと、そう思っています。
吉良よし子
総合的にとおっしゃいましたけど、この残業代不払制度の廃止、これは総合的の中に含まれているんですか。
国務大臣(永岡桂子君)
先生がおっしゃいますのは、やはり給特法等の処遇の改善かと思っております。
抜本的にという御意見でございますが、しっかりとそこは中教審におきまして議論をしていただきたいと思っております。
吉良よし子
処遇の改善ではなくて、残業代不払を廃止するべきじゃないかということを言っているわけです。決してそれを廃止するとはおっしゃらないわけですね。しかし、本来、労働行政において、この残業代不払というのは認められないはずなんです。
今日、厚労省にも来ていただいたんですけど、労基法三十七条、時間外労働させた場合には使用者が割増し賃金払うこと、義務付けられているわけですが、これに違反してしまった企業はどうなるのかと。最終的には罰則の対象になるのではないかと思いますが、いかがですか。
厚生労働省大臣官房審議官(青山桂子君)
お答え申し上げます。
労働基準法第三十七条におきまして、使用者は、時間外労働、休日労働、深夜労働に対して割増し賃金を支払わなければならないと定められておりまして、同法第百十九条において、この第三十七条の規定に違反した者は六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処すると定められております。
労働基準監督署における監督指導の結果、この割増し賃金の不払が認められた場合には、その是正を指導するとともに、悪質な事業場につきましては、捜査の上、書類送検を行うなど、厳正に対処しているところでございます。
吉良よし子
つまり、残業代不払は罰則がある、そういう規定なわけですよね。罰則によって規制をされていると、伴う規定として割増し賃金、残業代の規定が置かれているわけです。
なぜこうした罰則も科されるような規定として残業代を支払うことが義務化されているのか。労働基準法第三十七条でこうした残業代、割増し賃金を支払うことを使用者に義務付けているその意味、趣旨についてお答えください。
政府参考人(青山桂子君)
お答え申し上げます。
労働基準法コンメンタールによりまして、労働基準法第三十七条に規定する割増し賃金制度の趣旨につきまして、まず、いわゆる時間外労働と休日労働に対する割増し賃金は、法定労働時間制又は週休制の原則を確保するための一つの支柱でありまして、また長時間の労働に対する労働者への補償でもございます。また、深夜の割増し賃金の方は、労働時間の位置が深夜という時刻にあることに基づきまして、その労働の強度等に対する労働者への補償としてその支払が要求されているものとされております。
吉良よし子
つまり、労基法三十七条の割増し賃金の規定というのは、この法定労働時間制また週休制の原則を確保するための支柱だと。つまりは、一日八時間、週四十時間の労働時間の原則を守らせるための仕組みが割増し賃金、残業代だということなんです。つまり、長時間労働を防ぐための仕組みが残業代を支払う制度だということなんです。これを、残業代をもし支払うのが嫌だとするならば、若しくは人員を増やすとか又は業務を減らすなどの措置を講じる必要が使用者の側に、企業の側にあるということであり、この公立学校の教員にももし残業代を支払うようにするようになれば、単に働いた分の対価を払うにとどまらない、長時間労働を是正する効果があるというのは私間違いないと思うんです。
文科省は、この残業代不支給制度、絶対に廃止するとは先ほど来おっしゃっていないわけですが、じゃ、この残業代不払を改めてちゃんと公立の学校の教員に残業代を支払うようにする、これそんなに難しいことなのかと。一体何が課題になるんですか。局長、お答えください。
政府参考人(藤原章夫君)
教師への時間外勤務手当の支給につきましては、前回、平成二十八年度の勤務実態調査を踏まえた中教審での議論におきまして、給特法を見直した上で時間外勤務手当化すべきであるとの指摘がある一方で、教師の職務の本質を踏まえると、教育の成果は必ずしも勤務時間の長さのみに基づくものではないのではないか、また、給特法だけではなく、一般公務員に比して優遇措置を定めた人材確保法によっても形作られている教師の給与制度を考慮すると、必ずしも処遇改善につながらないのではないかといった懸念も示されたところでございます。
また、有識者等から構成される調査研究会が本年四月にまとめた論点整理におきまして、仮に時間外勤務手当を支給することとした場合の留意すべき観点として、個別具体の職務について学校管理職が学校において時間外勤務として承認することが実務上できるのかどうか、また、都道府県が給与負担者である県費負担教職員制度の中で、服務監督権者である市町村教育委員会に時間外勤務を削減するインセンティブが民間企業の場合と同様に機能するのかどうかといった論点などが盛り込まれたところでございます。
吉良よし子
まあいろいろおっしゃられたわけですけれども、例えば個別具体の職務に応じて残業時間を計るのが難しいと、困難だというお話ありましたけど、もう現在の在校等時間のように、校内で行うテストの採点とか子供の成績付けとか最低限度の始業準備、若しくは校長への報告文書の作成など、労働時間としてカウントすることが可能な時間というのはあるわけで、だからこの所定の七時間四十五分以上の残業があるということが今の勤務実態調査でも明らかになっているわけですよね。そういうところに残業代支給すればいいんじゃないかという話だと思うんです。
そして、残業代支給にはインセンティブがないと、市町村教委でのこの残業代、長時間労働を是正するためのインセンティブがないという指摘もありましたけれども、そもそも給与を負担し、教員の定数と業務量、権限を持っているのは国や都道府県なわけですが、それに対して、その国や都道府県に対して定数を改善させたり業務を削減させたりする、そういう強力なインセンティブになることは、それこそが私は重要なんだと考えるわけです。
ところが、自民党は、この残業代について、時間外勤務手当化については取るべき選択肢とは言えないと言い、教職調整額を一〇%以上に増額することを総理に提言したと聞いているわけです。
この教職調整額、仮に一〇%に引き上げた場合、国費としてはどの程度負担することになるのですか。局長、お答えください。
政府参考人(藤原章夫君)
仮に教職調整額を一〇%にした場合ということでございますけれども、御承知のように、現在、国が義務教育費国庫負担金として三分の一を負担するとともに、残りの三分の二は地方財政措置で講じているところでございます。
その上で、国費負担分ということでございますけれども、これに必要な所要額は約六百九十億円と見込まれているところでございます。
吉良よし子
六百九十億円と。これ、お話あったとおり三分の一なので、地方負担分と合わせると二千七十億円程度となるわけですけれども、かつて、二〇一六年の勤務実態調査の結果を基に教職調整額を推定、つまりその段階の働いている在校等時間で支払うべき残業代というのを計算したところ、国費で三千億円、地方負担分と合わせて九千億円ぐらい必要だということを文科省が言っていたことがあります。
自民党提言案の一〇%というのは、その金額の五分の一程度でしかないわけです。残業代不支給はそのままにして、教職調整額を一〇%に引き上げるだけ、この程度の給与の増額で、あとは働かせ放題にしようというのでしょうか。
これで長時間労働が是正できると考えますか。大臣、いかがですか。
国務大臣(永岡桂子君)
学校におけます働き方改革は、給与ですとか教職員定数ですとか、また支援スタッフですね、勤務制度、それから校務の効率化の在り方など様々な論点が総合的、複合的に関わる課題であると考えております。
有識者などから構成されます調査研究会の論点整理におきましても、教師を取り巻く施策について、国、都道府県、市町村、そして各学校など、多くの主体が関わることを踏まえた一体的、総合的な検討が必要となる多岐にわたる論点が盛り込まれているところでございます。
教師の処遇を定めた給特法の在り方も含めて今後具体的に検討していくべき課題と認識しておりまして、昨日、中教審におきまして、これ中教審に対しまして諮問をしたわけでございます。
今後、勤務実態調査の速報値等を踏まえつつ、論点整理を基に総合的に検討していただくこととしておりますので、働き方改革、そして処遇の改善、学校の指導、運営体制の充実、これ一体的に進めていきたいと考えております。
以上です。
吉良よし子
ですから、処遇の改善ではなくて、長時間労働を是正するためにこそ、この残業代を支払うことが必要だということを私は申し上げているわけです。なのに、数百億円程度の調整額の引上げだけで、国費負担だけで数千億円分もの時間外労働をチャラにしようと、あり得ない話だと思うんです。
本田由紀東大大学院教授は、この一〇%の増額について、定額働かせ放題のままで定額を上げても元も子もないとコメントをされていますが、やっぱりそうじゃなくて、やっぱり残業代不払制度を廃止するんだと、で、残業代をしっかり支払わせる制度に改めてこそ、先ほど来申し上げているとおり、教員の給与を負担する、そして定数改善の権限を持つ国や都道府県が本気で定数改善を行ったり、教員採用数を抜本的に増やしたり、学習指導要領や総授業時数の見直しを始めとした業務改善を進める抜本的な働き方改革のインセンティブが有効に働くんじゃないんですかと、このことを申し上げているんですが、大臣、最後、いかがですか。
国務大臣(永岡桂子君)
今回の勤務実態調査の速報値におけます在校等時間は前回の調査と比べまして減少しておりまして、働き方改革の成果が着実に出つつあるものの、依然として長時間勤務の教師も多く、引き続き取組を加速させていく必要があると、そういう認識でおります。
有識者等から構成されます調査研究会のまとめた論点整理におきましては、仮に時間外勤務手当を支給することとした場合の様々な留意すべき観点ですとか、更なる働き方改革の推進のため、上限指針の実効性を高めるための仕組み、そして学校や教育委員会におけます取組状況の見える化ですね、これを枠組みとしているなど、多岐にわたります論点が盛り込まれているところでございます。
教師の処遇を定めます給特法の在り方も含めまして今後具体的に検討していくべき課題と認識をしておりまして、昨日、中教審の方に諮問をしたわけでございます。やはり、今後、勤務実態調査の速報値などを踏まえつつ、論点整理を基に総合的に検討していただくこととしているわけでございます。
以上です。
吉良よし子
全く真正面からお答えにならないわけですね。
一九七一年、かつて給特法が国会で成立したとき、当時の全ての野党が、残業代を不支給とすれば労働時間が無定量になるとして反対をしました。結果、給特法が成立した結果、学校現場には長時間労働が蔓延していると。精神疾患による休職者も増え続けている。過労死も出てくるような職場になってしまったわけです。この実態を改めるには、この給特法による残業代不支給制度、これを廃止するしかないんだと、このことを申し上げて、私の質問を終わります。