【日本語教育機関法案 質疑/反対討論】人権尊重を最優先に 留学生政策転換求める
要約
日本共産党の吉良よし子議員は5月25日の参院文教科学委員会で、外国人留学生を受け入れる日本語教育機関の認定などを定める日本語教育機関法案(同26日に参院本会議で可決、成立)で質問し、人権尊重を最優先にする留学生受け入れ政策への転換を求めました。
日本共産党は、留学生の人権を侵害する実態を変えるものにはならないとして同法案に反対しました。
吉良氏は、多くの留学生は、借金を抱えて来日し、学費や生活費のために深夜に長時間、働かざるを得ない実態があるなか、現行の法務省基準の日本語学校の中には、留学生を安い労働力として搾取する悪質な学校があると指摘。「文科省による新たな認定基準で悪質な日本語学校を除外、是正できるのか」と質問。永岡桂子文部科学相は「不適切な事案には、認定後、勧告、命令、認定取り消しなど段階的に措置する」と答えるにとどまりました。
吉良氏は、妊娠、出産した留学生は、退学のみならず在留資格を奪われ、借金を残したまま日本を追われるとして、「妊娠を理由とした不利益な取り扱いは改め、在留資格の延長など柔軟な対応をとるべきだ」と主張。永岡文科相は「妊娠、出産を理由に本人の意に反した退学はあってはならない」と答弁しました。
吉良氏は「妊娠、出産も含め、留学生の人権が尊重される体制をつくるべきだ」と訴えました。
議事録
吉良よし子君
日本共産党の吉良よし子です。
初めに、今お配りしている資料を御覧いただきたいと思うんですけれども、先週、五月十七日の未明に、東北道で故障したバスにトラックが追突するという悲惨な事故が起きて、三人の方が亡くなられました。被害に遭われた皆様に心からの御冥福とお見舞いを申し上げるものですが、この事故で私が注目したのは、このトラックに追突されたバスに乗っていた乗客四十人は全てネパールやバングラデシュからの留学生だったということです。仙台市内の専門学校や日本語学校などに在籍していて、十六日の夕方、学校が終わった後に仙台から岩手県一関市にあるリクシルの工場の夜勤アルバイトにバスで向かう途中で事故に遭ったということです。
驚いたのがこの留学生たちの働き方で、夜勤アルバイト、この日だけじゃなくて、週に三回程度、夜の九時から翌朝の六時まで、休憩挟みつつ一日八時間働いていたとのことで、毎回四時頃に学校が終わった後、仙台市からバスで一関の工場へ行って、仕事が終わった早朝にまたバスで仙台に戻って、恐らくそのまま学校に通う生活をしていたのではないかということなんです。
先日の本会議で法務大臣は、留学生については、学業を阻害しない範囲で、一定の範囲内での就労活動を認めているものですと答弁をされました。
文科大臣、この留学生たちの深夜アルバイトの実態というのは、学業を阻害しない範囲での就労だと思いますか。
国務大臣(永岡桂子君)
外国人留学生には、我が国での修学を通じまして培った力を生かして修学後に各方面で活躍いただくために、我が国に滞在をして、そして大学等で学習しているものと承知をしております。このため、文部科学省においては、各大学等に対して毎年発出している通知の中で、資格外活動は週二十八時間以内に限り認められていることを留学生に十分理解をしていただくよう対応を求めているところでございます。
一方、資格外活動につきましては一日当たりの上限等は定められておりませんで、このため、個別の事案においては、これは学業を阻害することにつながるかどうかは総合的に判断をする必要がありますが、一般論といたしましては、大学等において終日にわたって授業を受けているにもかかわらず、深夜八時間労働が連日続くようなことがあれば適切ではないと、そう考えます。
吉良よし子君
私も、やはり毎回、この学校が終わって、バスで一時間から二時間掛けて工場に通って、深夜働いて、またバスに乗って学校に行くと、恐らく授業は眠くて聞いていられない状態なんじゃないかと思うわけで、こういう事案というのは学業を阻害しない範囲とは言えないような事例なんじゃないかと思うわけです。
ただ、問題は、これ、そういう働き方している留学生が悪いのかとかそういうことではなくて、やはり多くの留学生が、学費や生活費又は母国への仕送り、若しくは借金返済のためにこうやって無理して働かなければならない状態に置かれているんだということなんです。そして、そういう状態に置かれている留学生を利用して搾取するような日本語学校が残念ながらあるということがやはり最大の問題であり、こうした悪質な日本語学校の是正ができないままなのではないかということを本会議でも指摘したところなんです。
法務省に改めて現状を確認したいと思うんですけれども、二〇一六年に告示基準が策定されて以降、その告示基準違反で法務省が告示の抹消処分というのを行ったのは僅か二件のみだったと聞いていますが、これは間違いないですか。
政府参考人(君塚宏君)
御指摘いただきました日本語教育機関の告示基準というのは平成二十八年七月に策定されているところでございまして、それ以降におきまして、入管庁がこの告示基準への違反ということで、例えば、生徒に対する人権侵害行為、あるいは留学生が在籍しておらず日本語教育機関としての運営実績が認められないなどとして告示から抹消した件数は、おっしゃるとおり二件でございます。
吉良よし子君
二〇一六年から七年間の間に二件しかその処分をしていないと、私、これやっぱり少な過ぎるんじゃないかなと思うんです。
法務省では、その告示校の在籍管理などが適正か否かの選定を現在も行っているといいますが、現在、その選定の中で非適正校とされている日本語学校というのは何校あるのでしょうか。
政府参考人(君塚宏君)
今御指摘ございましたこの留学生に係る入国・在留審査を適切かつ円滑に行う観点から、毎年、留学の在留資格により留学生を受け入れている教育機関の中からこの留学生の在籍管理が適正に行われていると認められる教育機関を選定しているところでございまして、これにつきましては、提出書類の一部省略などの簡素化を図っているところでございますけれども、今お尋ねの数字でございますが、令和四年、直近でございますけれども、令和四年における適正校の選定対象であった日本語教育機関、これ八百十九対象ございましたけれども、このうち適正校として選定されなかったところはおよそ百二十校、率にして全体の一五%でございます。
吉良よし子君
直近で約百二十校程度が非適正校だというふうに選定されたということですが、告示基準違反で処分されたのは二校にとどまるけれども、非適正というのは百二十校以上もあるわけですね。
先ほど御説明もありましたが、この非適正校というのは、つまり、その学校内での在籍管理に何らかの問題があるとされている学校であって、恐らくその中には留学生を搾取しているような悪質な学校も含まれている可能性は高いんだと私は思うわけですけれども、この非適正校というのは本法案で文科大臣認定となった場合、そのまま認定されるのでしょうか。次長、いかがですか。
政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申します、申し上げます。
現在、法務省では、在籍管理が適正に行われていると認められない教育機関を選定しているものと認識しております。本法律案の施行後においても、認定日本語教育機関における生徒の在留管理については法務省と緊密に連携していくこととしており、これまでの法務省の御知見等も踏まえまして適切に判断することが必要と考えております。
また、文部科学省では、教育の質の確保という観点から指導監督を行っていくこととしており、法務省と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。
吉良よし子君
適切に判断、適切に対応って言いますけど、そのまま認定するのかどうかというところははっきりおっしゃらないんですね。当然、もちろん非適正とされている学校全てが本当に悪質かどうかは分からないと思うんですけれども、しかしやはり、その認定をする際の審査というのは、やはり適正校というよりは非適正の方は慎重に審査する必要があるんじゃないかと思うんですね。
衆議院で大臣は、現行の日本語教育機関の中には制限を超えて不法に留学生を就労させるなど課題のある事例もあるものと承知していると、事案によっては、教育上の観点からも学習に支障を来し、認め難いというものが生じかねないと答弁をされているわけです。
非適正か適正かというのは一旦脇に置いたとしても、現時点でもそういう不法に留学生を働かせるような悪質な日本語学校があるというのは文科大臣も認めているわけで、そういう、文科大臣の言う、教育上の観点からも学習に支障を来し、認め難い日本語教育機関も、まあ今は告示校として告示されているわけですけど、そのまま文科大臣認定するのかということを伺いたいんですが、いかがですか。
政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
一般論としてではございますけども、在留管理が適正に行われていると認められない教育機関、このうち法務省の指導を経て着実に改善が認められるというような場合は、そうした場合は認定される可能性は出てくるとは考えられますけれども、一方、改善の兆しが見られないといったような場合にはやはり認定は難しいというふうに見込まれると考えております。
吉良よし子君
法務省の指導を経て改善されれば認定されるんだと、そうでなければそうとは限らないというお話でした。
一方で、この本法案では、この一定の基準を満たした学校は認定をするんだということはおっしゃっているわけです。じゃ、その基準とはどんな基準なのかと。現在の法務省告示基準の下でも、先ほどあったような課題のある事例、認め難いものがあるということなわけですが、とすれば、文科大臣認定の基準というのは、そうした認め難いものを排除できるような、現行の法務省告示基準よりもより厳しい基準にしていくんだと、そういうことでよろしいですか。次長、お願いします。
政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
本法案では、認定日本語教育機関に対し、登録日本語教員の配置、日本語教育の実施状況について毎年度の定期報告、教育課程、教員組織等の学習環境に関する情報公表など、法務省告示制度にはない制度が定められているところで、定められておりまして、こうした意味で、現行よりも新たな義務が課されているものと考えております。
また、認定基準につきまして、法案成立後、審議会等において検討することとしておりますけれども、一定の基準を満たした質の高い日本語教育機関が認定を受けられることとしております。
さらに、定期報告等を通じて指導や勧告、命令、認定取消しの段階的な是正措置をとることができる仕組みも新たに設けられているところでございます。
吉良よし子君
つまり、もう一度お願いしたいんですが、法律の立て付けのところでは一定の上乗せがあるということですけど、認定基準、これについては、法務省告示基準と比べた場合により厳しくなるということですか。
政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
先ほども申し上げたとおり、文部科学大臣の認定の方につきましては基本的には教育の観点、それから、委員御指摘の在留管理の観点につきましては基本的には法務省の方の所管でございますので法務省の方の御指導の下で動くという形で、二人三脚でこの制度が全体が動くというまず仕組みでございます。
そうした観点から、今申し上げたように、文部科学省の方では、どちらかといいますと主にそうした教育の観点の基準ということでございますので、法務省告示の基準と重なるところがあるかと言われますと、ここはちょっと、論理的には実は一応分けてはおりますけども、現場の中においてどのようなことになるかというのは、これはまた実際よく実態の見てみなければならないところはもちろんあります。ありますが、基本的には今申し上げたように、制度上は分かれているということと考えております。
ただ、いずれにせよ、現場の学校におきましてはそうした基準がしっかりと見られることとなりますので、よりきちんとした運営をしなければならないという状況に入っていくものと、このように考えております。
吉良よし子君
つまり、教育的な観点については、基準の上でも一定今よりは厳しくなる可能性はあるということだと思うんですが、法務省の所管だとされたその在籍管理に関わる部分というのは、じゃ、その更新されるのかどうかというのは現状でははっきりは分からないということだと思うわけです。
つまりは、そういう、その在籍管理に関わる部分などが法務省告示基準と同等の基準だともし仮にするならば、やっぱり現行の告示校がそのまま文科大臣認定されていくだろうと、今八百三十二機関あるわけですけど、大体その数そのまま認定されるんじゃないかと。
となっていくと、結局、大臣の言う教育上の観点からも学習に支障を来し、認め難いような悪質な日本語学校にもまずはお墨付きを与えてしまうと、そういうことになるんではありませんか。
国務大臣(永岡桂子君)
本法案では、教育の質を担保するため、教職員体制ですとか日本語教育課程の編成等について基準を設け、そして、一定の要件を満たす場合のみ日本語教育機関を認定するということとしております。
その上で、認定された機関で不適切な事案があった場合、事実関係を確認した上で、勧告、命令、認定取消しの段階的是正措置によりまして厳正に対処をすることとしているわけでございます。
これらによりまして、悪質な日本語学校がお墨付きをいただくということがないように取り組んでまいりたいと思っています。
吉良よし子君
でも、一定の基準を認められればということを言うんですけど、その基準が、先ほど確認したとおり、その在籍管理のところはもう現状そのまま維持されるんじゃないかという懸念があるわけですね。
大臣おっしゃっているのは、結局、認定をした後に厳正に対処していく、管理していきますという話なわけで、やはりその前に、やはり認定する段階でその留学生を搾取又は人権侵害を行うような悪質な日本語学校を除外できるようにしなければ、やはりお墨付きになってしまうし、そして、新たな留学生が更に搾取されるような被害に遭ったら本当に元も子もないわけですから、やはりここはしっかりしていただかないと困るし、ちょっとこのままでは不十分なのではないかと言わせていただきたいと思います。
また、日本語教育機関における在籍管理も今後徹底していくというお話もあるわけですけれども、私、大切なことは、日本語学校において留学生の学ぶ権利、人権が守られているかどうかという点だと思うわけです。例えば、留学生が妊娠、出産した場合の扱いはどうなるのかと。
上智大学田中雅子教授らが実施したアジア五か国、中国、ベトナム、ネパール、インドネシア、ミャンマー出身者に対するオンライン調査では、調査に回答した留学生の女性百二十六人のうち二十人、一六%が、妊娠したら帰国など何らかの警告を受けて来日していたと答えたそうです。中には、来日前に誓約書まで書かされる留学生もいて、実際、妊娠した段階で退学になってしまった留学生もいると聞いているわけですけれども。
法務省に聞きます。
現在、法務省告示校において、そうした妊娠や出産によって退学処分若しくは除籍となった留学生というのはどの程度いるのですか。
政府参考人(君塚宏君)
日本語教育機関において、退学、除籍により留学生の受入れが終了した場合、入管法第十九条の十七の規定、あるいは日本語教育機関の告示基準第一号、第一項第三十八号により報告を求めているところでございます。
ただ、この当該報告につきましては、在留外国人の在籍状況を受入れ機関ごとの入りと出のタイミングで把握する一環として行われるものでございまして、こうした現状におきまして、教育機関の退学、除籍の具体的な理由までは現在求めておりませんので、お尋ねについてはお答えすることはできません。
吉良よし子君
つまり、把握されていないということなんです。それでいいんでしょうかと。
田中教授らの調査でも、八人の留学生が妊娠を経験したと回答しているそうです。日本語学校に通う留学生で、妊娠を理由に退学を余儀なくされたという、そして結局、本国に戻って出産せざるを得なかったという、そういう事例も実際にあると聞いています。
また、日本語学校ではありませんが、専門学校に通う留学生が妊娠で退学となって、もう既に支払ってしまっていた学費、これの返還を求めたけれども認められなかったという例もあるわけです。多くの留学生、借金して学費払っている場合もありますから、そういうことになれば、借金だけ残って退学で、しかも子供を産むみたいな、そういう状況になるわけで、こうした妊娠を理由とした不利益な取扱い、このままにしていいんでしょうかと。
留学生とはいえ、主には十八歳以上の大人なわけです。つまりは、妊娠、出産というのは決して特別なこととは言えないと思うわけです。
実際、技能実習生に対しては、こうした妊娠、出産等を理由とした解雇若しくは不利益取扱いというのは法律で禁止をされていると思うわけですが、文科大臣、こうした技能実習生への対応踏まえるならば、日本語学校に在籍する留学生についても、妊娠した際に意思に反して退学とか除籍するなどの不利益な取扱いはしてはならないと思いますが、いかがですか。
国務大臣(永岡桂子君)
現行の法務省告示校の解釈指針の記載にもありますけれども、そもそも合理的な理由なく生徒の意に反して除籍や退学等をさせる行為はあってはならないものと考えます。
今後、日本語教育機関の認定基準の検討に当たりましては、教育面について文部科学省で検討を進めながら、在留管理に関わるところは、引き続きまして、所管します法務省とよく協議をしなければいけない、そう考えているところでございます。ここのところこそ、しっかりと法務省と連携していくということかと思います。
吉良よし子君
現時点では合理的な理由なくその意に反して退学、除籍はないということでしたが、やはりそれしか書いていないんですね。つまり、妊娠や出産を理由として退学や除籍措置にしてはならないということは一言もどこにも書かれていないわけで、やっぱりそれを見た日本語学校が誤解をして、そのまま退学と処分するような事例もあると思うんです。
もし留学生が退学となった場合、学業ができなくなるだけじゃないわけです。つまり、学業をするために来日して在留資格を得ているわけですから、退学になった時点で、その在留資格を失って日本にいられなくなってしまうわけです。たとえ退学ではなく休学だという対応になったとしたとしても、これは本来の在留資格である、活動である学問をしていない状況であるということで、資格外活動であるアルバイト、これすることも違法となってしまう、なので、結局日本で生活できなくなるような留学生も出てくる可能性もあるわけです。
法務省では、現在、妊娠した留学生に対して出産するまでの在留資格の延長等も認めているといいますが、その際に、日本で生活できる経済状態かどうか確認するということを言っているわけですね。
休学中のアルバイトを認めない一方で、日本で生活できるかどうかが在留資格の延長の条件となれば、結局、妊娠が発覚した時点でその留学生はもう在留資格失うかもしれない状況に追いやられるんじゃないかと思うんですが、やはりこういった厳格なやり方ではなくて、妊娠した留学生については、やはり経済的状況等にかかわらず、一旦在留資格の延長を認めるなど柔軟な対応を取るべきだと思いますが、いかがですか。
政府参考人(君塚宏君)
日本語教育機関に在籍する留学生に関しまして、妊娠、出産等を主たる理由として、本人の意に反する形で退学を強要するなど不利益な取扱いをすることは適当ではないと考えております。
日本語教育機関に在籍している留学生から、妊娠、出産等を理由に休学をした後、活動を再開することを前提に留学の在留資格での在留期間更新許可申請がなされた場合には柔軟に判断することとしておりますし、その上で、この婚姻の成立、それから配偶者の存在、生活状況など、個々によって事情は様々でございまして、かつこれ本邦での安定的な在留にはある程度の生活費が必要であるということでございます。こういったことも含めまして、当事者からしっかり話を聞き、相談に乗り、その上で、適切な在留資格を付与できるかどうかについて適切に審査を行いたいということでございます。
いずれにいたしましても、先ほどの御指摘も踏まえまして、この留学生の人権に配慮する観点から、今後ともこの適切な対応に努めてまいりたいというふうに考えております。
吉良よし子君
様々な事情に配慮するとおっしゃっているんですけど、実態はそうなっていないんですよね。結局、借金抱えて日本に来て、結婚できればいいですけど、その結婚とかじゃなくて未婚のままで妊娠が発覚して、アルバイトしなければ生活できないし、母国にも帰れない状況なんだけれども、そういう多額の借金があることを理由にして在留資格の延長も認められないということで追い出されるような状況になってしまうような留学生もいるということなんですよ。
そもそも、母国で多額の借金があったとしても、留学生として受け入れてきたのは日本政府、入管庁の側なわけで、だからこそ、その留学生が妊娠した場合に、柔軟な、もっと柔軟な対応が必要じゃないかということを申し上げているわけですね。
さらに、仮に何とか日本で出産できたとしても、その生まれた子供の在留資格の問題も出てくるんです。日本語学校に通う留学生の場合、家族帯同というのは基本的には認められていないんですよ。だから、生まれた子供は最短で六十日で在留資格失って母国へ送られることになって、結局、母子共に日本に滞在できないか、母子分離ということになってしまうわけです。
一方、諸外国では留学生の妊娠、出産なんて当たり前なんです。先ほど言ったとおり、大人のことですからね、人間の営みとして当たり前に妊娠、出産はあるんだと。だから、そういう場合には母子共に在留資格延長するなどの配慮、当たり前に行われていると聞きますし、アメリカなどでは生まれた子には即アメリカ国籍が付与されるような国まであるわけで、それと比べれば、日本のこの状態って、妊娠、出産した留学生については、経済力厳しく取って、在留資格奪って、子供もろとも国から追い出すみたいな対応というのは余りに違うんじゃないかと。
政府は、大学の国際競争力の強化、優秀な人材獲得とかいいながら留学生三十万人、四十万人受け入れる、受け入れるだけ受け入れているわけですけど、けれども妊娠、出産した時点で切り捨てていくと。こういう留学生を人間として見ないようなやり方で、日本が魅力的な留学先になると思いますか。大臣、いかがでしょう。
国務大臣(永岡桂子君)
大学等の学生が在学中に妊娠、出産した場合には、各大学等において当該学生の個別の状況も踏まえ対応を行っているものと承知をしておりまして、妊娠、出産したことをもって本人の意に反して退学を余儀なくされるということは、日本人学生、留学生であることを問わず、あってはならないものと考えております。
留学生に日本を魅力的な留学先として選んでいただくためにも、学生として修学する上で必要な支援が提供されますように、これ、大学等における留学生受入れ体制の強化等も含めてしっかりと取り組んでまいります。
吉良よし子君
しっかり取り組むということですけれども、やはり今の現状では、妊娠した留学生が悪いと言わんばかりの対応になってしまっているんだということはお伝えしておきたいんです。
でも、それは決して留学生だけの責任じゃないわけです。そもそも、日本というのは避妊へのアクセスが余りに悪いんですよ。薬局、コンビニに行っても手に入るのはコンドームぐらいで、低用量ピルとか緊急避妊ピルというのは産婦人科に行かないと手に入らないわけです。だから、日本語がまだ流暢に話せない留学生にとってはとってもハードルが高いんですね。しかも、その費用も高いと。
一方で、留学生の母国であるネパールやフィリピンでは、ピルなんていうのは公的機関で無料で手に入るんだそうです。ミャンマーとかインドネシアなどでは、日本ではまだ認可されていない避妊注射とかインプラントなども手軽にできる状況で、それが日本に来た時点でほとんど手に入らないようになって、そういう中での予期せぬ妊娠なわけで、決して留学生本人だけの責任ではないですし、やはり留学生の安心、安全な妊娠、出産が保障されない、女性の人権が守られないような状況では日本が魅力的な留学先になるとは思えないわけで、留学生四十万人などという前に、日本語学校を始めとした留学生を受け入れる場所で、全ての場所で留学生の人権をちゃんと尊重できる体制こそ整えるべきです。
このことを申し上げて、質問を終わります。
〈反対討論〉
吉良よし子君
私は、日本共産党を代表して、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案に反対の討論を行います。
本法案は日本語学校を適正化するものといいますが、現行の法務省告示から文科省の認定に審査、認定する官庁を移し替えても問題の根本解決にはなりません。
現行の日本語学校の最大の問題は、留学生を安い労働力として利用することと一体に運営されていることです。日本語学校の六割が利益目的の株式会社立であり、中には多額の借金を抱えて来日し、学費や生活費、母国への仕送りのためにアルバイトに追われている留学生を利用し搾取する悪質な日本語学校もあります。
現在、法務省告示校は八百三十二機関あります。法務省によると、そのうち約一五%は在籍管理が不十分などの非適正校とされているとのことですが、法務省が告示基準違反で告示抹消処分を下したのは二校にとどまります。
本法案により法務省告示から文科大臣認定に移行するといいますが、新しい認定基準は法務省告示基準を参考に検討されるとされており、悪質な日本語学校を除外できる保証はありません。これでは、これまでの告示校がそのまま認定されるだけ、問題のある悪質な日本語学校に対しても文科大臣認定によってお墨付きを与えることになりかねず、容認できません。
政府は、留学生の受入れを二〇三三年までに四十万人を目指すとしていますが、留学生を安価な労働力として受け入れる構造そのものを改め、学問、研究を目的とする外国人は留学生として、就労目的の外国人は留学生としてではなく労働者として受け入れるべきです。
また、留学生の妊娠、出産を理由に、日本語学校などで退学、除籍処分を行い、在留資格を奪うような非人道的な対応を改め、学ぶ権利、人権を尊重する留学生受入れへと抜本的に見直すべきです。
本法案では、日本語教育機関で働く教員について、登録日本語教員として国家資格化も行うとしています。しかし、ボランティアや非常勤が中心で、常勤であっても多くが年収四百万円未満で、若い人が将来を見通して働き続けられる職業とはなっていない現状の改善につながる保証はありません。
日本語教員の処遇の改善を行うこと、各日本語教育機関において常勤雇用率を引き上げて地位の向上を図ることが必要であるということを申し上げ、討論といたします。