外苑再開発 与党政治家の意向か
要約
日本共産党の吉良よし子議員は27日の参院決算委員会で、樹齢100年を超える貴重なイチョウ並木などを伐採する神宮外苑再開発事業計画の中止を求めました。
同計画の柱となる秩父宮ラグビー場の移転新築は文部科学省所管の独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が実施します。吉良氏は東京都公表の資料から、外苑全体の再開発について、2012年の国立競技場建て替え検討の開始前から森喜朗元首相や自民党の萩生田光一衆院議員らが水面下で都などと協議していた事実を指摘。都や一部政治家の意向を受け水面下で調整してきたのではとただしました。
JSCの芦立訓理事長は「確認できない」などと説明を拒否。吉良氏は、知らないでは済まないと厳しく批判しました。
吉良氏は、文化遺産に関わる非政府組織「国際記念物遺跡会議」(ICOMOS=イコモス)が昨年9月に計画見直しを求めたヘリテージ・アラート(文化遺産危機警告)で、国は都だけの問題とせず、協議の場を設け、説明責任を果たすよう求めたとして、見解を質問。盛山正仁文科相と斉藤鉄夫国土交通相はともに「事業者や東京都が適切に対応する」などと責任逃れに終始しました。
都が昨年9月に樹木保全策を出すよう要請したことから、樹木の伐採は現在中断中です。吉良氏が保全策提出についてただすと、芦立理事長は「時期は未定だ」とし、ラグビー場以外の地域についての対策とあわせて提出するとしました。
吉良氏は、移転新築する限り、樹木は伐採され、ラグビー場の機能も観客数減などで低下するとして、財産処分を認可すべきでないと主張。盛山文科相は「仮定の話についての答えは差し控える」などと拒否しました。
議事録
吉良よし子
日本共産党の吉良よし子です。
本日は、神宮外苑の再開発について伺っていきたいと思います。
緑豊かな都心のオアシス、歴史ある近代日本の文化的遺産というべき神宮外苑の再開発事業が進められています。
資料一、御覧ください。
これ、三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮、そして独立行政法人日本スポーツ振興センター、JSCの四事業者とともに東京都が進めている事業で、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替える、その結果、高さ百九十メートルとか百八十五メートルなどの超高層ビルが建てられる、それによって大量の樹木が伐採され、外苑の象徴ともいうべきイチョウ並木も存亡の危機にさらされるという事業で、多くの皆さんからこれに対する抗議の声が上がり、広がっているところです。
この再開発の最大の問題というべきは、この文科省所管の独立行政法人であるJSCが管理している秩父宮ラグビー場を移転して建て替えるということです。この移転、建て替えによって百年の森ともいうべき建国記念文庫の森の大量の樹木が伐採されることになってしまいます。
JSC理事長、来ていただきましたので伺いますが、神宮球場と秩父宮ラグビー場を入れ替えて建て替える、この構想というのはいつから検討を始めたのか、それを誰が言い出したのか、お答えください。
参考人(独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長 芦立訓君)
お答え申し上げます。
今委員御指摘の点について申し上げますと、平成二十八年、二〇一六年七月に、東京都から、神宮外苑地区の再整備構想の素案におきまして、スポーツ競技の継続に配慮しながら各施設を連鎖的に建て替える施設配置等のイメージが示されたところでございます。
これに基づきまして、私ども、あるいは東京都と関係権利者がまちづくり基本計画の検討を詰めるということで合意をしたということでございます。
吉良よし子
二〇一六年に東京都の方から提案があって、それを基にして事業者の皆さんが議論を始めたんだという御答弁でしたけど、本当にそうなのかという疑問があるんです。
これ、資料三、お配りしました。御覧ください。
これは、日本共産党の都議団が情報公開で入手した資料で、現在は東京都のホームページ、お配りした資料二に当たる、岸記念体育会館の移転等に関する主な経緯のページに掲載されている資料の一つとなるわけです。
この二〇一二年五月十五日、神宮外苑再整備についてと題するペーパーがこの資料三に当たるんですが、これが、当時の東京都佐藤副知事と安井技監が森喜朗衆議院議員に説明した際の記録ということなんですね。
これ中身読んでいきますと、赤線部分、東京都の側が、神宮外苑の再整備について東京都として考えているイメージを御説明に上がったとして、オリンピック終了後に第二段階の整備をスタート、神宮球場とラグビー場の敷地の入替えの利点、青山通りの沿道の民間再開発の動向について説明をしたと。で、森氏からは、すばらしい案じゃないか、長生きしないとと述べたとされているわけですね。
つまり、この時点、二〇一二年の五月の時点で、この神宮球場と秩父宮ラグビー場を入れ替える、そういう計画内容、でき上がっていたんじゃないですか。いかがですか。
参考人(芦立訓君)
ただいまの御指摘につきましては、そのような事実は確認されていないところでございます。
吉良よし子
事実確認されていなければ、何でこんなペーパーがあるわけですか。これ、理解ができないですけど、都の公表している資料なんですよね。ここでもう既に東京都の側でラグビー場と神宮球場入れ替える、そういう議論があった、これペーパーとして残っているじゃないですか。なぜ事実がないと断言できるんですか。
参考人(芦立訓君)
この東京都から提案がある前に、二〇一五年から我々事業者及び東京都で協議を始めていたわけでございます。
その中においては、我々に対しまして、連鎖的な建て替えという提案、あるいはそういった情報は一切提示されてきていなかったところでございます。
吉良よし子
この東京都から提案がある前に、二〇一五年から我々事業者及び東京都で協議を始めていたわけでございます。
その中においては、我々に対しまして、連鎖的な建て替えという提案、あるいはそういった情報は一切提示されてきていなかったところでございます。
参考人(芦立訓君)
私どもには資料はなく、その部分については確認ができません。
東京都のホームページにおいてそのような情報が開示されていることは当然承知をいたしております。
吉良よし子
これ、JSC自身の話ですからね。知らないでは済まされないんですよ。
ちなみに、日本共産党の都議団が入手した資料では、二〇一二年七月三日にJSCの藤原理事と河野理事長が東京都とともに森元首相を訪問したという記録も、ここ、手元にあるわけです。
ちゃんと先ほどのペーパーどおりに、JSCの藤原理事と会談もしたし、何だったら森元首相ともしっかり会っているし、そういう話の中で、このラグビー場と神宮球場を入れ替える案、若しくは神宮外苑全域を開発の対象としていくということをもう事前にこうして話を進めていたと、そういう事実があるわけじゃないんですか。いかがですか。もう一度お願いします。
参考人(芦立訓君)
お答え申し上げます。
私どもの立場で申しますと、国立競技場を東京オリパラ開催を見据えて建て替えるということになりましたときに、初めて有識者の皆様方を御参集をいただいて、どういう形で変えていくかという議論をスタートさせたというのが、私どもとしての今残っている記録でございますので、それ以前に何か議論をしたという記録は見当たりませんので、私どもとしては確認できないと先ほどから申し上げている次第でございます。
吉良よし子
いやもう東京都が公表している資料で明らかな事実ですからね。藤原さんと会ったというのももう手元にありますから、これ知らないと言い抜けできるとは思えないんです。
この藤原理事が、じゃ、何で会うことになったのかということについていくと、先ほどの資料の四、見ていただきたいんですけど、藤原理事の名前が出てくる直前のところに東京都の安井氏が発言しているところで、この整備計画について都が、東京都が素案を実質的に作り、NAASHからそのまま提案させるような形にさせたいと発言しているわけです。
これ事実だとすれば、つまり、国立競技場だけじゃなく、周辺地域、つまり外苑一帯をこの都市整備の再開発の対象とする計画というのを、都が素案を作って、それをそのまま提案するという役割をJSCが担わされていたということじゃないのかと。
そして、その後の経過見てみても、先ほど言ったように、七月にJSCの関係者が森氏、東京都と面談をしているわけです。さらに、その後、二〇一二年の十一月十五日に行われた第三回目の国立競技場将来構想有識者会議、これお配りした資料五になるんですけど、参考資料という配付資料が配られまして、これ見ると、外苑一帯を赤線で枠で囲んだ、都市計画の対象として示していると。こういう資料をJSCが配付をして、当時のJSC河野理事長が、明治神宮外苑地区全体を環境の向上を図るための既存の都市計画の見直しを行うことになります、青山通り、国道二四六号線に面するところですね、そこにつきましても追加をしております、説明したという議事録が残っているわけです。
そして、資料二の二枚目、二つ目の星印にあるとおり、その後の二〇一二年の十二月、JSCが東京都に対し神宮外苑地区地区計画の企画提案書を提出、東京都が受理したという計画になって、経過になっているわけです。
確認します。この企画提案書というのは、JSCが東京都の素案をそのまま提出したものということでしょうか。
参考人(芦立訓君)
お答え申し上げます。
結論から申し上げますと、そのまま提出したこの素案というのが一体何を意味するか、まず分からないわけでございますけれども、私どもの対応について改めて申し上げますと、先ほど申しましたように、オリンピック・パラリンピックの開催を念頭に置いたときに、国立競技場を大規模に改築する必要があるということでございます。そういたしますと、既存の都市計画では改築できない、大規模な改築はできないということでございましたので、都市計画の見直しも含めて議論する必要があるという状況にございました。
このため、私どもでは、国立競技場の有識者会議を設置して、東京都知事にも御参画いただいて、今後の在り方について御議論を進めていただいたというのが時系列的な話でございます。
今委員も御紹介になられましたように、有識者会議の議事録はJSCのホームページに掲載しているところでございますが、この中で、例えば石原知事からは、国立競技場の建て替えだけではなく、神宮外苑地区全体の構想が必要ではないか、あるいは他の委員からは、災害時の帰宅困難者の受入れなど災害時の位置付けを明確にしてはどうか、さらには、周辺関連施設も含め、最寄り駅からメインエントランスへの段差のない広い通路やエレベーターなどの設置などバリアフリーの施設を造っていただきたいなど、様々な御提案をいただいたところでございます。この御提案は、必ずしもJSCの敷地内だけではないところに係る御提案でございました。
私どもでは、こうした観点から、国立競技場だけではなく周辺環境を含めた町づくりが必要であるという認識の下に、有識者会議において神宮外苑地区全体を都市計画の見直しを行う範囲とすることについて御了承いただいた上で、東京都に都市計画の見直しの企画提案書を提出したという経緯でございます。
吉良よし子
有識者会議で意見が出たからこういう提案をしたんだというふうにおっしゃっていますけど、先ほどのお示ししたペーパー、資料の四ですね、これ、二〇一二年二月のときのペーパーなんです。
有識者会議が最初に開かれたのは二〇一二年の三月なんです。この有識者会議が行われる前に、萩生田氏が森元首相の代理としてこの東京都との打合せに出て、ここで、国立競技場だけじゃなくて更に広い範囲のエリアで考える必要があるよねと、こういうことを示していて、それに基づいて東京都も計画を進めていると。それを基づいて有識者会議でも発言もあってと、そういう話になっているわけで、やっぱり最初はこちらの二〇一二年二月の方の打合せが有識者会議よりも先なんですよね。
やっぱり、こういった特定の政治家、森元首相などの意向が今回の神宮外苑再開発、その事業を進める中で深く影響した、これ事実なんじゃないんですか。もう一度いかがですか。
参考人(芦立訓君)
お答え申し上げます。
国立競技場を建て替えるような極めて大きなプロジェクトの場合には、様々な方々、これは国会議員の先生方含めて、あるいは民間企業の方々含めて、様々な議論がなされ、様々な御意見が出されていたと考えているところではもちろんございます。
しかしながら、私どもの手続といたしましては、有識者会議での議論を踏まえて変更提案書を提出したということになっているところでございますので、それ以外の部分についてどう反映されているかということは必ずしもつまびらかではない。少なくとも、今公表されている有識者会議の議事録を御覧いただければ、その中で指摘された内容になっているということは言えるのではないかと私どもとしては考えているところでございます。
吉良よし子
いや、もう事実としてこのペーパーがあるんです。
そして、有識者会議で全部進んでいったと言いますけれども、有識者会議で出てこなかったラグビー場と神宮球場の敷地の入替えという話がこの二〇一二年の五月の時点で森元首相と話し合われていたんだと、それはJSCにも伝わっているんだということはこれらのペーパーからもう示唆されている話で、それを知らないなんて言えるはずがないんですよ。
実際に行われた十二月のこの神宮外苑地区地区計画の企画提案書、これは素案のとおりに出したものではないと、そういうことをおっしゃるわけですけれども、先ほどのこの二月のペーパー、五月のペーパーなどの議論踏まえた対応そのものだとしか言いようがないわけですよ。何だったら、十一月の有識者会議での理事長の提案だって、もうこの流れに乗った提案だとしか言えないじゃないですか。つまり、森元首相とか萩生田氏という政治家、若しくは東京都の意向を受けて、都の描いた素案をそのままJSCが提案をする、そういう役割を担ってきたということなんですよ。
これ、二〇一二年当時からこの神宮外苑全体の再開発を進めるんだと、この百年の歴史を持つ文化遺産とも言える緑を破壊する事業を積極的に進める役割を果たしてきたということじゃないかと。これはスポーツ振興を目的とする独立行政法人としてのJSCの役割から踏み越えているんじゃないかと思うんです。文科大臣、いかがですか。
国務大臣(文部科学大臣 盛山正仁君)
先ほど来、芦立理事長の答弁にあったとおりでございますが、大規模スポーツ施設である国立競技場の建て替えに当たりましては、日本スポーツ振興センター、JSCに設置された有識者会議の議論を踏まえ、地域全体の在り方も考慮していかなければならないという考えの下、御指摘の都市計画見直しの提案がなされたものと承知をしております。そういう点で、JSCのその役割を超えているというふうには考えておりません。
吉良よし子
国立競技場の建て替えのためなんだと、あくまでもそうなんだと言いますよね。でも、国立競技場といったら、神宮外苑全体のごくごく一部の場所なんです。この地図でいえば左の上の側ですよね。その程度のところなのに、この二〇一二年の十一月に示された都市計画というところでいくと、対象となっているのはもう更に広い神宮外苑全体を都市計画見直しの対象としていると。もうこれは国立競技場の建て替えの範疇を超えている話としか言えないわけです。経過を見れば、森元首相や萩生田氏などの政治家などの意向も受けていた提案なのも明らかなわけです。しかも、この計画によって、単に百年の森が失われるだけではないんですよ。秩父宮ラグビー場と神宮球場の移転に伴って、明治神宮のテニスクラブ、これが移転を余儀なくされて、結果、多くの少年野球団等が利用していた軟式野球場、これが潰される計画になっていると。スポーツ振興どころか、市民や子供たちがスポーツに親しむ場も奪われる、そういう事業になっているんですよ。
このJSCの独立行政法人日本スポーツ振興センター法においては、そのセンターの目的は、スポーツ振興等をもって国民の心身の健全な発達に寄与することを目的とすると書いてあると。そういう目的から完全に逸脱した役割果たしているとしか言えないと私は思うんです。
しかも、問題は、こうした二〇一二年時点で、ずっと水面下で、ラグビー場と神宮球場を入れ替える、そういう神宮外苑全体を対象とした開発を進めるんだ、議論が進められていたにもかかわらず、これが表に出たのは二〇二〇年になってから。こんな無理な計画を国民、都民、地域住民にひた隠しにずっと水面下で議論が進められてきた、これも重大問題ですよ。
先ほど来、JSCに資料がないとおっしゃっていますが、こういう水面下の議論も含めた全ての経過、JSC、明らかにするべきではありませんか。いかがですか。
参考人(芦立訓君)
お答え申し上げます。
今委員から御指摘をいただきました経緯の背景につきましては、私どもといたしましては、国立競技場の有識者会議の議事録によって尽きているのではないかと考えているところでございまして、その点につきまして、ホームページでアクセス可能でございますので情報は開示されていると、かように考えているところでございます。
吉良よし子
いや、有識者会議の議事録では説明が尽きていないから言っているんですね。もう実際に東京都のホームページには、こういう水面下の議論があったというペーパーが明らかになっているわけなんですよ。そうしたことを踏まえて、ちゃんと事実経過調べ直して、説明責任果たすべきだと思うんですよ。
ちなみに、この神宮外苑の再開発というのは、都市計画法を根拠にした都市計画公園での事業です。
国土交通大臣は、この間、国交委員会などで、個別の都市開発事業については法令にのっとり事業者や地方公共団体において適切に対応されるべきと考えているとおっしゃっているわけですが、この間、もうこの経過を見ても、この二〇一二年から二〇二〇年まで、少なくとも八年もの間、住民にひた隠しにしながら水面下でこういう都市計画公園を大きく変えるような事業が進められていた、そういうこと、これは適正だと言えるのでしょうか。大臣、いかがですか。
国務大臣(国土交通大臣 斉藤鉄夫君)
御質問の趣旨は、地域住民との連携、知らせて、しっかりと地域住民の声を聞くべきだと、こういう御趣旨かと思います。
都市計画法では、都市計画案の公告縦覧、意見書の提出に加え、計画の原案作成において必要があると認めるときは、公聴会、説明会の開催など住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずることとされております。
御質問の神宮外苑再開発における都市計画につきましては、都や事業者において、都市計画法や都の条例に定める住民などの合意形成のために必要な手続を経たものと聞いておりますが、必要な手続を経て決定されたこの都市計画等について、国土交通省としてその評価を申し上げることは差し控えたいと考えます。
吉良よし子
必要な手続なされたと言いますけど、適切な対応なされていないから言っているんですね。
適切というのは法令上の瑕疵がないという話じゃないんですよ。たとえ形式として法令にのっとっていたとしても、実態として、こうやって特定の政治家などの意向で町づくり、何だったら町壊しが進められて、住民にまともな説明もないままひた隠しにして進められてきた、これが大問題じゃないですかということを言っているんです。いかがですか、大臣、国交大臣。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
しかし、記録を見ますと、ここで一つ一つ言うと時間が掛かりますので省略いたしますが、例えば、令和二年一月に、また令和三年六月に事業者による説明会、令和三年十月に都市計画法に基づく説明会、令和三年十二月に都市計画法及び都市計画案の公告縦覧及び意見書の提出が行われたと東京都から聞いております。
住民からの意見聴取等もしっかり行われていると認識しております。
吉良よし子
大臣おっしゃったのは、二〇二〇年以降の対応ですよね。私が言っているのは、二〇一二年時点でもうこういう計画の素案ができていて水面下でずっと調整が進められていたのに、そういう経過が全く公表されないまま進められていることが問題じゃないかということを言っているわけです。
昨年九月、ユネスコの諮問機関であり、世界文化遺産の登録審査や保護等の役割を果たしている国際記念物遺跡会議、ICOMOSが、この神宮外苑の再開発について、再開発において計画されている三棟の高層ビルの建設と既存の野球場とラグビー場の新球場への建て替え移転は、過去百年にわたって形成され育まれてきた都市の森を完全に破壊することにつながると、ヘリテージアラート、神宮外苑地区再開発事業の撤回に向けた緊急要請というのを発表しています。
これにおいては、東京都は都民や関係者との適切な対話もないままこの再開発計画を承認したことについても厳しく批判されているわけです。さらに、このヘリテージアラート、政府に対しても、国は東京都だけの問題とすることなく介入せよと、適切な対応をせよと、それを提案しているわけです。地元住民からも再三、この問題に対しての協議の場、説明責任を果たせという声が上がっているわけです。
これ、ヘリテージアラートというのは文科大臣、国交大臣宛てにも出されているわけですけど、両大臣、改めて、国の責任で、国としてこの神宮外苑の事業について地元住民や専門家などとちゃんと協議をする場、設けるべきじゃないですか。対応すべきじゃないですか。
国務大臣(盛山正仁君)
神宮外苑地区の再開発事業については、ヘリテージアラートも含め様々な御意見があることは事実です。そして、そうした御意見を踏まえ、事業者においてこれまで説明や情報発信が行われてきたものと承知しております。
本開発、本再開発事業は、事業に関連する許認可権限を持つ東京都及び新宿区、港区において、地権者を始めとする関係事業者と協議しながら適切に対応していくべきものと考えます。
文部科学省としては、関係者間の協議の結果、良い結論が出されることを期待したいと考えております。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
昨年九月七日のICOMOSのヘリテージアラートにおきましては、神宮外苑の将来に関する情報が広く一般に周知されることを要望する、多様な利害関係者が議論に参加できる場を設けるべきであるとの御指摘があったところです。
本件につきましては、事業者や都市計画等に係る権限を有する東京都などにおいて、必要に応じ適切に対応されるものと考えております。
吉良よし子
あくまでも事業者任せ、東京都任せだと、両大臣、そういう御答弁だったと。これでは国の責任果たせませんよ。ヘリテージアラートにも応えていませんよ。
このヘリテージアラート、これ東京都、まだ、いまだに協議の場、設けていないんですけれども、このヘリテージアラートを受けて、その東京都ですら神宮外苑地区のまちづくりにおける樹木の保全についてという要請を出して、事業者に対して樹木保全に関する具体的な見直し案示すように要請をしていて、それに基づいて今事業者の側も見直し案を作成している途中で、樹木伐採、一時中断している状況なんですが。
JSCに確認をします。
具体的な樹木保全の見直し案、いつ出す予定なのか。JSCが特に関わっているラグビー場の建設予定地にある建国文庫の森の樹木、どうやって守る予定ですか。お答えください。
参考人(芦立訓君)
お答え申し上げます。
今委員御指摘のような東京都から要請されました神宮外苑地区の町づくりにおける樹木保全につきましては、現在、代表施工者である三井不動産が中心になって検討をいたしているところでございます。また、見直し案につきましては、秩父宮ラグビー場のみならず、神宮外苑地区町づくり全体として樹木の保全に関する具体的な見直し案を報告するという考え方の下に整理をしているところでございまして、まだ全体がまとまっておらず、提出時期は未定ということになっているところでございます。
私どもといたしましても、スポーツを振興する上で自然環境との調和を図っていくことは重要なことであると考えているところでございまして、より環境に配慮した施設計画となるよう、樹木の保存について工夫をしたいと、このように考えているところでございます。
以上です。
吉良よし子
施設計画見直すということなんですけど、つまりそれは、現在の計画からこのラグビー場を縮小すると、そういうような話なんですか。
参考人(芦立訓君)
現在、各事業者においてアイデアを出し合って、東京都からの要請にいかに応えるかということで検討している時点でございますので、個々の内容についてはまだまとまっておらず、答弁できないことにつき、御容赦賜りたいと存じます。
吉良よし子
いずれも明言を避けられるということですけれども、樹木伐採を避けるということでいえば、少なくとも縮小しなきゃいけないでしょうし、というか、縮小では、しかし、それでも樹木伐採は免れないわけですから、そういう意味では、やっぱり移転をするということ自体を見直す必要があるんだと思うんです。
現在の秩父宮ラグビー場、収容人数は二万四千八百七十一人です。それが、今の計画段階で、新ラグビー場は、屋根付き、巨大モニターを入れることによって、収容人数が一万五千五百人に減るんです。イベント時になっても二万五百人と、現在の収容人数を下回る。フィールドでいえば、天然芝ではなくて人工芝になってしまうという計画で、JSCは、この移転をする理由として、現在地では機能更新ができないからと繰り返しているわけですが、もう現在の計画でも現在地よりも機能が後退してしまうということは明らかなわけです。それだったら、もう樹木を保全するためにも、機能を更新するためにも、これ、移転はやめるべきなんじゃないでしょうか。
今、この見直し案が出された後、このラグビー場移転に伴う権利変換手続、これに入ることになるわけです。権利変換に伴う財産処分の認可をするのは文科大臣ですが、大臣、こういうラグビー場としての機能も後退して、樹木も守れないような事業、権利変換、財産処分、認めるべきではないと思いますが、いかがですか。
国務大臣(盛山正仁君)
先ほど来やり取りなされているところでございますが、神宮外苑地区の再開発事業は、東京都が平成三十年に策定した神宮外苑地区のまちづくり指針等に基づき、具体的な町づくりを担う東京都及び新宿区と港区が地権者を始めとする関係事業者と協議しながら検討を進めてきたもので、土地再開発法に基づき令和五年二月に東京都が認可しております。
その上で、事業者の一人となります日本スポーツ振興センター、JSCは、その保有資産について、土地再開発法に基づく権利変換を行うため、独立行政法人通則法第四十八条の規定に基づく財産処分の認可が必要となります。その認可に当たっては、処分等の内容や方法が適正であるか、また申請のあった財産を処分等することによってJSCの業務運営が阻害されないことを確認することになります。
一般論として申し上げましたけれども、現時点においてJSCから認可申請をまだ受け取っておりませんので、仮定の質問についてのお答えは差し控えさせていただきます。
吉良よし子
適切な計画とは言えないから認可をしないでくださいということを申し上げているわけです。
ちなみに、文化庁自身、この明治神宮外苑イチョウ並木は名勝地に指定できるだけの、その候補になる場所だと、内苑と一体的に評価して保護する視点が重要だと指摘している、そういう場所なんですよね。それを壊すような事業計画をJSCが進めていいのかということを伺っているわけで、やはりこうした神宮外苑再開発はもう抜本的に見直す、中止するしかないんだということを申し上げて、質問を終わります。