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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2019年・第200臨時国会

【給特法改定案 反対討論】変形労働時間制導入は長時間労働を助長

要約

 日本の農林水産業や地域経済に大打撃を与える日米貿易協定承認案と、公立学校教員に1年単位の変形労働時間制を導入する公立学校教員給与特別措置法(給特法)改定案が4日、参院本会議で自民、公明、維新などの賛成多数で可決・成立しました。日本共産党と参院会派「立憲・国民.新緑風会・社民」、沖縄の風、れいわ新選組、碧水会などが反対しました。

 給特法改定案の採決では、日本共産党の吉良よし子議員が反対討論。教員の多忙化の原因となっている業務を増やし続け、残業代不支給の給特法の仕組みはそのままに、「長時間労働を助長する変形労働時間制を公立学校現場に導入することなどあってはならない」と採決に抗議。「教員の長時間労働の是正は、日本の教育の現在と未来のかかった国民的な課題」として、教員の業務の削減や給特法を抜本改正して残業代を支払い、教員を抜本的に増やすことなどを求め「学校の異常な長時間労働をなくすため全力をあげる決意だ」と表明しました。

 共同会派を代表して国民の横沢高徳議員が「今すぐ矛盾に満ちた給特法の抜本的な見直しを」と反対討論しました。

しんぶん赤旗2019年12月5日号より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 私は、会派を代表して、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 冒頭、一言申し上げます。
 桜を見る会の疑惑について、首相は全く説明責任を果たしていません。さらに、与党は、総理を守るためなのか、野党が要求する総理出席の予算委員会集中審議には背を向けています。一方で、国民に重大な影響を与える法案は次々と押し通す。このような政府・与党の姿勢は絶対に許されない、このことを申し上げ、討論に入ります。
 教員の長時間労働は依然として深刻で、過労による休職や痛ましい過労死が後を絶ちません。教員の長時間労働の是正は、まさに日本の教育の現在と未来の懸かった国民的な課題です。
 教員の長時間労働は、学習指導要領の改訂で教員の持ちこま数が増やされる一方で、それに応じた教員定数が増やされず、全国学力テストや多過ぎる行政研修など、多忙化の原因となっている業務を文部科学省が増加させてきたことに原因があります。
 そして、給特法では、四%の教職調整額の支給と引換えに、労働基準法第三十七条の割増し賃金の規定を適用除外し、残業代を支給しないこととしています。それが時間外労働を規制する手段を奪い、際限のない長時間勤務の実態を引き起こしてきたのです。ここに手を付けずにどうして教員の長時間労働が是正できるというのでしょうか。
 本法案は、教員に長時間労働を押し付けている給特法の枠組みには一切手を付けず、公立学校教員に一年単位の変形労働時間制を導入しようとするものです。
 厚生労働省の通知によると、この制度は、恒常的な時間外労働がないことが前提だとあります。一方、文部科学省が行った二〇一六年の勤務実態調査によると、公立学校の教員の時間外勤務は、小学校で月五十九時間、中学校で月八十一時間にも及びます。このような恒常的な時間外労働が蔓延している公立学校に制度を導入できるわけがありません。
 この間、文部科学大臣は、時間外労働の上限を月四十五時間、年間三百六十時間とする上限ガイドラインの遵守が制度導入の大前提だと答弁しています。しかし、勤務実態調査を行った二〇一六年の段階で、小学校では六割、中学校で七割以上の教員が月四十五時間以上の時間外勤務を行っている現状も質疑を通して明らかになりました。
 勤務時間の把握もこれからです。タイムカードを導入した学校現場でも、虚偽の時間把握が蔓延しています。目標達成ができなくなるので五時半には打刻してくれと管理職に言われている、校長先生が、勤務時間を過ぎたらとにかく退勤と押してくれと指導している、また、どんなに朝早く学校に来てもタイムカードは勤務時間になってからとか、朝七時前に出勤しても打刻は八時半にしか付けられないなど、全国各地から同様の訴えが出ています。しかし、文部科学省は、こうした実態すら把握していません。
 変形労働時間制導入に不可欠な正確な勤務時間把握すらできていない現状を見れば、制度導入の是非を議論できる段階などではないのは明らかです。
 一年単位の変形労働時間制の導入は、長期にわたり八時間労働の原則をあってなきものとする重大な労働条件の不利益変更です。だからこそ、労働基準法は、その適用条件として、過半数労働者の同意を必須とする労使協定の締結などの厳しい条件を課しているのです。
 本法案で、地方公務員である教員に労使協定さえ結ばずに条例で変形労働時間制の導入を可能とするのは、労使対等原則を踏みにじるものです。そもそも公立学校教員は、憲法二十八条に保障された団体交渉権、争議権が制約されています。勤務条件条例主義を盾に取り、労使協定さえ不要とすることは、教員の労働者性を否定するものにほかなりません。
 変形労働時間制で定時を延ばせば、ますます長時間労働への歯止めが掛からなくなります。委員会での参考人質疑では、現職教員の方から、勤務時間が延びれば業務は確実に増えることが指摘され、その後の残業時間で授業準備となると、くたくたで授業の質も保証できません、精神的、時間的にゆとりのない中では、教師の質、授業の質、日常の生徒対応、公教育の質がもはや保証できませんとの陳述がありました。
 学校現場は日々、子供や保護者など人を相手にする仕事です。予期し得ない予測不能な事態、事故も起こり得る場所です。あらかじめ労働日、労働時間を定め、その後は変更ができない変形労働時間制を導入することなど、どだい無理なのです。
 また、問題は、教員一人一人の長時間労働だけではありません。制度導入で、校長、副校長、教頭といった管理職の負担も増えます。
 実際に変形労働時間制を運用するとなると、校長らが一人一人の教員の個々の事情を聞き取り、対象となる教員を決め、年間スケジュールに合わせて月ごとの労働日、労働時間を定め、毎月三十日前までに次の一か月の勤務スケジュールを提示することになっています。各学校に対象になる教員、ならない教員がいて、対象になった教員については、学年ごとに年間スケジュールが違うので、一つの学校で何パターンもの勤務時間の配分を行い、管理をしなくてはならなくなる。参考人質疑でも、今まで全くやっていなかったものをするわけですから、業務は増えるに決まっているとの声もありました。
 業務削減を進めると言いながら、変形労働時間制によって業務負担を増やすなんて本末転倒も甚だしいではありませんか。教員勤務実態調査においても、副校長、教頭の勤務時間がほかの教員より長いことが明らかになっており、その管理職の業務を増やす制度改正などあり得ません。
 政府は、この制度は休日まとめ取りのための制度と説明していますが、年休や代休の活用など、変形労働時間制以外の手段で休日をまとめ取りすることは可能です。
 むしろ、休日を取りたくても取れない、右肩上がりで業務が増え続けていることが問題です。道徳の教科化や、小学校での英語の教科化など、授業時間が増えています。プログラミング教育も導入されます。道徳は、担任が子供一人一人の評価を文章で毎学期の通知表にも年間の指導要録にも書かなければなりません。英語に至っては、英語の免許を持った教員が足りず、英語教育の専門性のない教員が英語を教えなければなりません。プログラミング教育も初めてのことです。
 しかも、弊害しかない全国学力テストや教員免許更新制、様々な行政研修などを文部科学省がやめたり減らしたりしないことも質疑の中で明らかになりました。
 業務は減らさず、増やし続ける一方で、教員は増やさない、そのまま長時間労働を助長する変形労働時間制を公立学校現場に導入することなどあってはなりません。
 日本共産党は、全国学力テストや多過ぎる研修など、多忙化の原因となっている業務を文科省が削減すること、給特法の残業代不支給と労働基準法第三十七条の適用除外の規定を削除し、教員に働いた分の残業代を払う抜本改正を求めるとともに、教員を抜本的に増やすことで学校の異常な長時間労働をなくすため、全力を挙げる決意を申し上げ、反対討論といたします。(拍手)