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吉良よし子

参議院議員

吉良よし子 国会質問

国会質問

2021年・第204通常国会

【国大法改定案】学長選考 意向投票こそ

要約

 参院文教科学委員会は13日、学長選考会議や監事の学長監視機能の強化を柱とした国立大学法人法改定案を、自民、公明、維新、立憲民主、国民民主の各党の賛成多数で可決しました。日本共産党とれいわ新選組は反対しました。

 日本共産党の吉良よし子議員は質疑で、国立大学の法人化への移行後、学長選考会議が教職員の意向投票の結果を覆した事例が24校29回に上るとの報道を紹介。選考過程も不透明で説明責任が果たされないことが、学内構成員の執行部に対する不信を強める原因になっているとし、選考会議の議事録公開を法律に明文化するよう求めました。文科省の伯井美徳高等教育局長は「透明性を確保した会議の運営はこれまで以上に求められる」とし、選考会議の審議経過を記録として残すことなどを検討していくと答弁しました。

 吉良氏は、意向投票結果を尊重しなくてよいとする2014年の文科省通知や19年の閣議決定によって、意向投票を廃止した国立大学が14年以降3校から14校に増加したと指摘。学長の独裁的な大学運営によって学生や市民が深刻な被害を受けている福岡教育大学や旭川医科大学の事例を示し、「学長選考のプロセスに意向投票をきちんと位置づけることこそ、けん制機能の強化だ」と通知や閣議決定の撤回を求めました。萩生田光一文科相は、撤回はしなかったものの「意向投票はやってもいい」と答弁しました。

しんぶん赤旗2021年5月14日付より抜粋

議事録

吉良よし子

 日本共産党の吉良よし子です。
 本改正案では、学長への監視機能の強化を目的に、学長選考会議の牽制機能及び監事の監査体制を強化するということです。が、果たしてそれだけでガバナンスの透明性、公正性が担保され、自浄作用が機能するのかということは問われていると思うわけです。
 一方、近年、多くの国立大学で、学内構成員の意見である意向投票の結果を学長選考会議が覆すという事態が起こっております。今年一月の毎日新聞の国立大学への独自アンケートによりますと、法人化以降の間に実施された教職員の意向投票のうち、学長選考会議によって投票結果が覆され、投票結果と異なる学長が選ばれた事例というのが二十四校、二十九回に上るとのことです。
 こうした中で、今、学長と教職員との意思疎通に大きな問題が起こり、法人運営に支障を来しかねないような事態が起きていると思うんですけれども、これ、つまり、意向投票の結果と違う学長を選んだことのみならず、問題は、そういうところで全く説明責任が果たされていないというのが重大な問題だと思うわけです。
 なぜ意向投票の結果と違う学長が選考会議で選ばれたのか、それを説明しなくてはならない、それは選考会議の責任だと思うんですけれども、それがほとんど行われず、選考会議で何が行われているのかが不透明、ブラックボックス化しているということが執行部への不信につながっていると思うわけです。
 改めて、こういうことをなくすためには、まずはやっぱりどのような議論を経て学長選考がその会議で行われたのか、そのプロセスを明らかにするのは当然のことであり、牽制機能の強化というのであれば、この学長選考会議の議事録を公開すること、これを法律に明文化すべきと思いますが、大臣、いかがでしょう。

文部科学省高等教育局長(伯井美徳君)

 御指摘のように、国立大学法人が自律性を高めると同時に、広く社会から信頼される経営を実現という意味では、法人自身の自浄能力を高めるためのガバナンス体制を充実すると。その中で、学長選考会議につきましても、今回、牽制機能を強化するということでありますので、よりその透明性を高めるというのも、御指摘のとおり、透明性を確保した会議の運営というのはこれまで以上に求められるというふうに考えております。
 現在、省令で学長の選考理由や選考過程、すなわちプロセスについて公表することを義務付けておりますが、今後、学長選考会議の審議記録、審議経過ですね、審議の経過を記録として残すということ、あるいは学長の選考理由や選考過程について、学内外へのステークホルダーに対する説明責任が果たされるような公表内容を充実すべきことなどをお示ししていただくことを検討していきたいというふうに考えております。

吉良よし子

 既にやっているという話ですが、これまで以上にも必要だという御答弁もありました。ただ一方で、実際に今行われているその公表事例というのを大学のものを見てみると、本当に議事録、審議過程の公表というのがほとんどされていないところが多数あるわけです。
 資料をお配りしました。京都大学なんですけれども、京都大学の場合は、昨年、総長選考の際、意向投票において過半数の得票に達した候補者がいなかったと。でも、従来であれば、その際は決選投票となる再意向調査というものをやっていたわけですが、それをやらないということを総長選考会議が決定したと。それについての議事録ということで出されている、ホームページに公表されているのがこれなんですけど、これ見ても、なぜ再意向調査を実施しないと決定したのかというその理由は一切ないんですね。再意向調査を実施しないことを決定したという文言のみが載っていると。
 これに疑義を持った京都大学教職員組合がその選考過程について公開質問状を提出したものの、この間、四か月たなざらしにされていると。ようやく、この法案、本法案の審議に入った、国会で審議に入った四月二十一日になってようやくこれから検討しますという回答が出てきたということなんですけれども。
 やっぱり大臣、これ、これを議事録の公表として言ってしまっていいのかと。やっぱり、こういうものじゃなくて、透明性を担保するための説明ということでいえば、どのような議論がそれぞれの選考会議で行われたのか、どのような意見が出されたのか分かる、そういう議事録の公表が望ましいと思いますが、大臣、いかがですか。

文部科学大臣(萩生田光一君)

 今回お認めいただく法律を施行する段階で、その透明性やまたプロセスの公開などについては当然細心の注意を払っていただくことを求めていきたいと思っています。
 ただ、人事のことですから、それぞれの候補者に対して、例えば評価だけじゃなくて批判も当然あるわけでありまして、そういったことまでつまびらかに一語一句を公開することが透明性だと私は思っておりませんので、この京都大学の件は非常に質素だなというふうに私も思いますけれど、きちんと説明を果たせるような環境というのは各大学がきちっとフォームをつくっていただけると思っていますし、また、それが足らざるところがあれば必要に応じて指導することも考えなきゃいけないと思っています。
 例えば意向調査のことをすごく皆さん心配されているんですけど、別にやってもいいんですよ。既に国立大学の五十以上は意向調査やっているわけですから。ただ、じゃ、その有権者をどうやって決めたのかと。教授会だけなのか、助手は駄目なのか、あるいは職員はどうなんだと、いろんなことを考えると、その一票の価値というものがしっかりしていない中での意向調査だから、文字どおり意向調査で、新しい学長さん、こういう人がいいよねと、この人の言っていることはこういう点は我々とは意見が違うよねという、そういう意向をくみ上げて選ばれた学長さんが是非いい学校マネジメントをしてもらいたいので。
 これは、組織票で、学部の数で、学生数が全然違う、学部のでかい教授がたくさんいるところとか職員がいっぱいいるところが票をいっぱい持っているような、そういうやり方での意向調査が優先するんだといったら、そういうところからしか学長は出てこなくなっちゃいますので、意向調査は意向調査として大いに学内で働く全ての人たちの考えを聞く、そういう役割を果たしてもらいたいと思いますが、是非、その後の説明責任というのは、今回法律で定めた形にのっとってしっかりやっていただくことを前提にしたいと思います。

吉良よし子

 まだ聞いていないことまでいろいろ御答弁いただいたわけですけれども、まずは、議事録の公表についてはやっぱり丁寧にやっていただくのが筋だと思うんです。やっぱりこの、特に、人事のことと言いますけど、再意向調査をしないことを決定したという辺りについては、やっぱり議論の過程公表することは可能だと思うんですね。そういうことも、議論の過程公表しないまま結果しか示さないということを様々な大学でやられているから、やっぱり不信というものが蔓延してしまうというのは問題です。議事録の公表、強く求めたいと思います。
 学長への牽制機能そのものについても伺いたいと思うんです。
 本改正案では学長選考会議メンバーから学長を外すとしていますけれども、外れたとしても、その学長選考会議の委員となる経営協議会や教育研究評議会の議長というのはもうやっぱり学長であり、その委員の指名というのは学長指名なので、結局学長の選んだ委員が学長を選ぶという仕組みに変わりはないという批判、指摘が十一日の参考人質疑でありました。
 確かに、この仕組みをそのままにしておくと、選考過程での公正性にも疑義が出てくるだけでなく、例えば解任要件に該当する報告が監事から出されたとしても、その学長が選んだ委員が公正にその問題について議論するのかどうかというのが疑問も出てくる可能性もあるわけです。
 だから、そういう意味では、この学長の意向に左右されないメンバーになり得る一般の教職員や学生からの直接請求による学長リコール制度についても法に明記すべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょう。

政府参考人(伯井美徳君)

 いわゆるリコール制度につきましては、それぞれの法人において学長選考会議における議論に基づきまして自主的に判断し、そういう制度を設けている法人も現在八十五法人中五十五法人ございますが、あくまで自主的に判断されるべきものというふうに考えております。

吉良よし子

 自主的に判断ということですけれども、やっぱりこういう直接のリコールというのも大事だと思うんですね。例えば、民間企業においても信任調査の結果に基づいて社長が辞任するなどという例もあるわけです。国立大学について言えば、学長の権限が余りにもこの間肥大化しているということを踏まえれば、教学側からの学長への牽制機能、今回も牽制機能を強化しなきゃいけないというわけですから、そういう意味では教学側からの牽制機能も強化しなきゃいけないと私は思うんです。
 先ほど五十五法人ということでしたけど、例えば旭川医科大学でも、今年二月二十四日、学長解任を求める署名が学内規定に達する条件に達したということで学長解任の審査を選考会議に請求しているところだと聞いているわけですけれども、全ての大学にそういう仕組みがあるわけではない。しかも、それどころか、その学長選考の際に、先ほど大臣はやってもいいみたいなことをおっしゃいましたけれども、意向投票すら行わない、むしろ、意向投票が廃止され形骸化している大学が増えているわけです。
 これ、もう一度確認します。一言でお願いいたします。
 これ、意向投票というのは法的に禁止されているものではありませんよね。大臣、お願いします。一言で。

政府参考人(伯井美徳君)

 国立大学法人法では意向投票についての規定はなく、法的には学長選考会議の権限と責任において学長を主体的に判断するという定めでございます。一方、いわゆる意向投票を行うことについては法令において禁止されているものではございません。

吉良よし子

 禁止されるものではないと。ただ、それを覆すのが、先ほど石川議員からもありました、二〇一四年の法改正時の、意向投票の結果をそのまま選考結果に反映させることは適切ではないと示した施行通知なんですね。そして、経済財政運営と改革の基本方針二〇一九、いわゆる骨太の方針においても、各大学が学長、学部長等を必要な資質能力に関する客観基準により法律にのっとり意向投票によることなく選考するとされ、実質、意向投票の禁止とも取れる方針が再三政府から出されてしまっているわけです。
 その結果、先ほどの毎日新聞の国立大学へのアンケートを見てみると、二〇〇四年の法人化当初は意向投票廃止した大学三校にとどまっていたのが、その二〇一四年の施行通知が出された以降、一気に十四校が廃止したということが明らかになっている。政府のこの方針がきっかけで意向投票を廃止する大学が出てきているわけですね。
 これ、二〇一四年の法改正時、当時の下村文科大臣も、いや、これから意向投票はやめるべきだということを国が言う考えはありませんとおっしゃっていた。けれども、実際には、この施行通知や骨太の方針で何か禁止と読める、そういうものが出されているのが、私、本当に問題だと思うんです。参考人質疑でも言われましたけど、この意向投票の廃止、形骸化によって学長が暴走する中で、影響を受けているのは学生であり、若しくは市民なんですね。
 例えば、二〇一三年に教職員の意向投票で敗れた現職候補を学長選考会議が学長に指名して、さらに、その後、選考会議が意向投票そのものを廃止した福岡教育大学では、小中高の一種免許取得が可能だった初等教育教員養成課程のカリキュラムを原則小学校一種の免許しか取れないように学長主導で変更してしまったと。これは、学生自身にも、そして近隣自治体の教員採用にも影響する変更だと思うわけです。
 また、先ほどの旭川医科大の事例でいえば、コロナ患者を受入れしようとした病院長が学長により解任されるという学長の暴走事案なんですけれども、まさに、一四年の通知では、過度に学内又は機構の意見に偏るような選考方法だと意向投票を言っているわけですけど、実際に起きているのは、学内じゃなくて学外のステークホルダーの利益を損ねていることだと思うわけです。
 改めて、この施行通知や骨太の方針見直して、学長選考のプロセスにちゃんと意向投票を位置付ける、これこそ牽制機能の強化だと思いますが、いかがでしょう。

政府参考人(伯井美徳君)

 先ほども申し上げましたように、法律、国立大学法人法においては、学長の選考、解任の申出に係る手続、方法について、学長選考会議が自らの権限と責任において判断し定めるということになっておりますので、あくまで同会議において検討すべきものというふうに認識しております。
 そういう趣旨で、通知、閣議決定においては、法の規定にのっとり、意向投票によることなくと、これ、意向投票をやることまでを禁止しているものではないですが、最終的に学長選考会議の権限と責任において適正に選考を行うということを示したものでありまして、この考え方自体は変わるものではございません。

吉良よし子

 考え変わらないと言いますけど、結局、実際に起きていることは政治主導による意向投票の禁止と取れるような事態なわけです。これは憲法二十三条で保障される学問の自由や大学の自治を侵すことにもつながる大問題だと思いますし、経営による教育や研究への支配というのは許されないということも申し上げて、質問を終わります。