主張・政策

児ポ法改悪、創作物の表現規制に反対 TPPから同人誌とコミケを守ろう

2013年7月18日  

 

 先日、Sさんという方から「表現規制」問題についてメールで、3点にわたりご質問をいただきました。一つ目は「表現規制が強められても自分は同人誌の制作を続けることができるだろうか」、二つ目は「コミックマーケット参加者55万人と真剣に向き合ってくれるか」、三つ目は「はたして表現規制自体に意味があるのか」です。
 Sさんは、コミケに向けて鉄道関連の同人誌を制作しているそうです。性的または暴力的な表現は含んでいないとのことです。表現規制の強化によってコミケと同人誌が存続できるだろうかと心配されています。コミケの存続を求めて参加者たちが署名活動やデモに起ち上がったら、規制を見直してほしいと訴えています。
 Sさんは、実在しない架空のキャラクターの表現を規制することで、実在する子どもたちを性犯罪などから守れるのだろうか、そもそも表現規制自体が憲法21条「表現の自由」に抵触するのではないかと、疑問を提起しています。
 以下、お答えします。

児ポ法改悪による単純所持処罰化、創作物の表現規制に反対

 「表現規制」問題で、いま最大の焦点になっているのは、自民党、公明党、日本維新の会の3党が今年5月29日に衆議院に提出した児童ポルノ禁止法「改正」案ですので、まずこれに対する日本共産党の考え方を述べさせていただきます。
 「改正」案は、写真やデジタル画像など児童ポルノの所持を禁止する「単純所持の禁止」を導入し、「自己の性的好奇心を満たす目的」の所持には刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)を科しています。また漫画やアニメ、CG(コンピュータ・グラフィック)などと性犯罪などとの関連性を「調査研究」するよう政府に求め、施行から3年後に「必要な措置」をとるとしています。
 子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、そのような非人間的な行為は絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任です。現在、インターネット上などで流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。これを厳格に運用し、ネット上に流れている児童ポルノを一掃することが必要です。
 しかし、児童ポルノ法「改正」によって、単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。
 したがって、日本共産党は、「改正」案には反対です。与党と維新3党は、広範な国民の反対の声に背をむけ「改正」案を継続審議としました。選挙後の国会で、あらためて「改正」案への各党の態度が問われることになります。日本共産党は、人権や表現の自由を守る立場から「改正」案に反対するとともに、現行法での児童ポルノの厳格な規制強化をすすめることをつよく求めていきます。

同人誌とコミケを守るため、TPP交渉参加にも反対を

 さて、お尋ねの1つ目についてです。自公維提案の児ポ法「改正」によって、ただちにコミックマーケット開催ができなくなるわけではないし、性的または暴力的表現を含まない同人誌制作ができなくなるわけではありませんが、漫画等の表現活動にはさまざまな制約がおよぶようになり、その影響でコミケ全体が成り立たなくなる危険があります。
 そして、問題は児童ポルノ法「改正」だけではありません。安倍政権が推進しようとしているTPP交渉参加も、コミケを脅かすものです。TPPの「関連項目」の中に、「著作権侵害の非親告罪化」という項目があります。これは、著作権を「侵害」した人を、作者からの告訴がなくても検察が起訴・処罰できる、つまり行政当局が「この作品は著作権を侵害している」と判断したら起訴される、ということです。これは漫画同人誌にとっては重大なことです。なぜなら、漫画同人誌には既存のコンテンツのパロディ(2次創作物)が多いので、「著作権侵害」とされる危険性があるからです。
 よって、コミケを守るためには、自公維提出の児ポ法「改正」案とTPP交渉参加の両方に反対する必要があります。私はこの立場を貫いて国会でたたかうことをお約束します。

都条例改悪に反対つらぬいた日本共産党は、これからもコミケ参加者と一緒にたたかう

 次に、お尋ねの2つ目についてです。コミケを守り、表現の自由を守るためには、たたかいが必要です。そして、たたかえば勝利することができます。
 ご存知のとおり、東京都の石原慎太郎知事(当時)は、2010年2~3月の都議会に、漫画・アニメの性表現に新たな規制をおよぼす条例(青少年健全育成条例の改定)を提案しました。「非実在青少年」(18歳未満と認識される登場人物)の性的行為が描かれた漫画・アニメ等を、都が「不健全図書」に指定できるようにする改悪でした。これに対し、漫画家、作家、出版関係者、法曹界、そして漫画を愛する若者たちなど、広範な人々が反対の声をあげました。日本共産党東京都議団も「規制の基準があいまい、恣意的で、表現の自由を萎縮させる」と強く反対し、議会で都側を追及しました。「漫画・アニメ等での青少年の性的描写が青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害するとする学問的知見にはどのようなものがあるか」と質問し、都側から「学問的知見は見いだせていない」との答弁を引き出し、規制の根拠を崩して、反対運動に大きく貢献しました。条例案は継続審議となり、6月の議会で、自民党・公明党の賛成、民主党・共産党などの反対で否決されました。民主主義の勝利です。
 しかし、都民の意思を無視する石原知事は「実質的に前と同じ」と自認する条例案(今度は法規に触れる性的行為の表現が規制対象)を12月の議会に提出しました。反対世論はさらに広がり、共産党は反対をつらぬき論戦しましたが、民主党が態度を変えて賛成に回ったため可決されました。
 こうして、条例は改悪されましたが、この反対運動の存在が、その後も表現規制反対のよりどころとなっています。
 私は、日本共産党の一員として、国会でも以上の立場を貫き、コミケ参加者のみなさんとともにたたかうことを約束します。

日本の漫画・アニメ文化とコミケの豊かな発展を守るために全力をつくす

 最後に、お尋ねの3つ目に対する私の回答は、上記の「改正」案に対する日本共産党の見解、日本共産党都議団の立場と一致しています。したがって、Sさんのご意見に賛成です。

 日本のアニメや漫画文化は世界に誇るべきものであり、コミックマーケットも日本の文化の一つとして定着してきています。今後も、アニメや漫画文化がいっそう豊かに発展できるよう、私も力をつくしていきたいと思います。

以 上