吉良よし子君
日本共産党の吉良よし子です。
 まず、NHKの予算案について伺います。
 現在、NHKにおいて職員の給与制度の改革を行っていると聞いておりますが、その内容、そしてそれを行う理由をお答えください。
NHK・福井敬君
給与制度改革につきましては、平成二十五年度以降全職員を対象としまして、年功序列的な要素を抑えまして、努力や成果による、幅広く的確に反映させるように見直すものであります。改革を進めることで賃金カーブを抑制しまして、基本賃金の一〇%を目安におおむね五年間で引き下げる方針であります。
 また、給与制度改革を進めるとともに、職員の評価をより適正に行うため、人事考課の充実にも取り組んでおります。納得性が高く、努力した者が報われる評価を行いまして、その結果を職員一人一人の育成や成長の実現につなげ、モチベーションの維持向上に努めております。
吉良よし子君
納得のいくもの、またモチベーションのというようなお話もありましたが、一方で基本賃金おおむね五年で一〇%削減というお話もありました。
 NHKは放送法十五条によって、公共の福祉のため豊かでかつ良い放送番組を作ることと併せ、放送事業の進歩発達に必要な業務を行うこととされております。それらを支えるのはNHKグループで働く職員の皆さんだと思うわけです。その職員の賃金の水準というのはどのようにあるべきと考えていらっしゃるのか、現時点での賃金水準がどうなっているのかという点と併せて、会長、お答えください。
NHK会長・籾井勝人君
給与水準につきましては、受信料で運営される公共放送であることは当然我々としても考えなければならないと思っております。一定レベルの水準のまた確保も必要だというふうに考えております。
 現状では、平均年間給与では、在京民放と比較しますと、まあ一概にはなかなか言いづらいんですが、大体二割から三割程度低い水準となっております。同業他社であるとか社会水準を注視しながら、我々としては給与水準を適正なものにしていきたいというふうに考えております。
吉良よし子君
同業他社とも比べながら、バランス取りながらというお話もありましたけれども、やはりNHKの番組制作、質の向上には、それを支える職員、社員に対する適正な水準というのは保障されてしかるべきだと思うわけです。公共放送として豊かでかつ良い放送番組作っていくために職員の賃金について適正な水準確保すること、強く求めまして、次に移りたいと思います。
 放送法についてです。この間、放送法をめぐって様々な議論がなされていますが、ここで改めて私はその成り立ちについて確認をしたいと思います。
 戦前、放送は、無線電信法により規律されていました。それが新たに、戦後、放送法を制定するに至ったと。その理由は、また歴史的背景、どのようなものがあったのか。放送法の逐条解説改訂版の二ページ、十一行目から二十四行目までのところ、御紹介ください。
総務省・今林顯一君
御指摘の部分を読ませていただきます。
 このような無線電信法改正の動きの中で、放送分野については、一、昭和二十年に民衆的放送機関設立ニ関スル件についての閣議決定がなされ、社団法人日本放送協会以外に民間放送事業者に対し許可を与えるという考え方が明らかにされた。これを受けて民間から放送事業の許可申請が多数なされたことから、放送事業の在り方について早急に法制化する必要があったこと。二、社団法人日本放送協会を国民の声を反映したものとし、公共の福祉に資するものとするため、この組織の在り方について明らかにする必要があったこと。三、無線電信法の規定は広範な裁量権を主務大臣に与えており、言論の自由を保障する新憲法の精神にそぐわないことから、民主主義的な考え方に立脚したものとする必要があったこと。四、放送の社会的影響力の大きさから、無線電信法に規定する電波の監理の面からの規律のみでは不十分であり、放送の自由、不偏不党、放送の普及等について規律する必要があったこと等から、放送分野については無線電信法とは異なる考え方により規律することが適当であるとの考え方に至ったというところでございます。
吉良よし子君
様々あるわけですけれども、やはりまず新憲法に照らしてというところ、また広範な裁量権を主務大臣に与えていた無線電信法では、言論の自由を保障するという、それが保障できないというところで放送法が必要だというところに至ったという話がやはり重要だと思うわけです。
 NHK出版から出されている「二〇世紀放送史」には、戦前の放送事業を唯一担っていたNHKの前身である日本放送協会がどのような形であったかということが書かれています。国営でも政府機関でもなかったにもかかわらず、その役員人事、事業計画、そして予算などについては、国が逓信大臣による承認、認可、命令、そして行政指導などを通じて細かくその事業運営に関与していたということが書かれておりました。さらに、逓信省内に置かれた放送監督官がその放送原稿を事前に検閲する、放送中も番組の監視が行われていた、問題があるとされた発言があれば放送監督官が中止を命じて放送が遮断されていた、東京中央放送局の聴取用の部屋が用意されていて、そこには押しボタン式の遮断装置まで置かれていて、その押しボタンも実際に何度も押されたというわけですね。例えば、一九三一年、三二年度、両年度中に二十六本の番組で四十回もその押しボタンが押されて放送遮断も行われたということでした。
 やはりこうした放送が、第二次世界大戦の進展とともに国民に当時の国策を徹底させて、そして国民の一致団結、士気の高揚をもたらしていくという情報操作とプロパガンダの道具として使われていった、そういう歴史があったということなんです。そうした戦前の反省に立って、改めて言いますが、新憲法に合わせて表現の自由守るために制定されたのが放送法なわけです。
 では、その放送法についてその当時の政府はどのように説明しているのか、法案が提出された際、国会での法案の補足説明のうち、第一条の根本原則に関わって政府が説明している部分、昭和二十五年二月十五日の電気通信・文部連合委員会会議録第一号四段目の十八行目から二十二行目までお読みください。
今林顯一君
周辺ちょっと併せて読ませていただきますと、放送番組につきましては、第一条に、放送による表現の自由を根本原則といたしておりまして、政府は放送番組に対する検閲、監督等は一切行わないのでございます。放送番組の編集は放送事業者の技術に委ねられておりますが、これを全然放任するものというものではございませんで、この法律でいわゆるラジオ、コードの根本と申しますか、その要点を規定いたしまして、放送の準則というようなものを定めてございます。
 以上でございます。
吉良よし子君
指定しているところ以上に読まれたわけですけれども、私が申し上げたいのは、やはり戦前の反省に立って、政府が放送番組に検閲、監督等一切行わないということを明言したということです。これが私、大事だと思うわけです。
 そして、その準則についても先ほど触れられましたが、この間繰り返し取り上げられている放送法第四条の放送編集準則についても、一九六四年に出された臨時放送関係法制調査会答申書に添付された政府提出の放送関係法制に関する検討上の問題点とその分析において触れられております。
 読み上げますが、法が事業者に期待すべき放送番組上の準則は、現実問題としては、一つの目標であって、法の実際的効果としては精神的規定の域を出ないものと考える、要は、事業者の自律にまつほかない、こうあるわけです。これを見れば、放送法は政府が政治介入する根拠にはなり得ないと、あくまでも番組内容については事業者の自律に委ねられているということは明らかだと思うわけです。
 今、この間の大臣の発言に対して様々な抗議の声が出されています。メディア論学者、憲法学者、そして著名なジャーナリストの皆さんからも声が上がっているわけです。三月二十四日には、外国特派員協会で再びこの著名なジャーナリストの皆さんが会見を行って、大臣の発言は憲法と放送法の精神に真っ向から反する、言論統制への布石だなどの声を上げました。
 大臣、こうした放送法に関するあなたの発言に対する批判、懸念の声、どのように受け止めるのでしょうか。
総務大臣・高市早苗君
当初、一部のマスコミが停波発言という表現で報じられましたので、しかしながら、私自身が電波を止めると申し上げたことは一度もございません。
 放送法第四条に定める番組準則ですが、御承知のとおり、「公安及び善良な風俗を害しないこと。」、「政治的に公平であること。」、「報道は事実をまげないですること。」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」の四点でございます。
 この放送法は、平成二十二年、菅内閣時代に抜本的な改正が行われまして、その審議の際にも本委員会におきまして、平成二十二年十一月二十六日、第四条の番組準則が法規範性を有すること、番組準則に違反した場合には、総務大臣は、放送法第百七十四条に基づく業務停止命令や電波法第七十六条に基づく無線局運用停止命令ができること、さらに、それらの命令について極めて限定的な状況のみに行うこととするなど、慎重な配慮の下運用すべきであることということについて、当時の副大臣が答弁をしておられます。私といたしましては、行政の継続性の観点から、同様の答弁を何度もさせていただいております。
 また、ジャーナリストの御批判ということでございますけれども、一部、憲法に違反するといった御指摘もあったかと思いますが、改正放送法案につきましては、当時の菅内閣が内閣法制局の審査を経て閣法として提出しておられます。そして、やはりこれが憲法に違反する違憲立法なのかどうなのか、この審査をする権限は最高裁判所にあるわけでございますので、私といたしましては、閣法を引き継ぐ者として、これが憲法違反の法律であるとは考えておりません。
 なお、これまで放送法第四条違反として放送法第百七十四条や電波法第七十六条を適用した例はないということも度々申し上げております。また、運用に当たっての非常に厳格な要件についても申し上げております。
吉良よし子君
放送法が憲法違反だということは誰も言っていないと思うわけですね。放送法を使って停波のようなことをちらつかせるような、政治介入するような発言をされているというところに対して懸念、批判の声が上がっているということなんだと思うわけです。
 こうした声を上げたジャーナリストの一人であるTBSのキャスター金平茂紀氏は、政治権力からやっぱり黙っている連中なんだなんて思われたくはない、だからこうして声を上げたんだというふうに語っているわけなんです。そういう報道現場の皆さんのその声に対して、やはり政府は真摯に耳を傾けるべきなんじゃないでしょうか。そして、その現場の皆さんがこういう声を上げているという背景には、やはり大臣の発言が政治介入と取れる部分があるということだと思うわけです。
 そして、そういうメディアや国民に政権批判をしてはならないというような、放送への政治介入もするのではないかと思わせるような発言があるということですから、その懸念、批判の声、払拭するには、私、やはり大臣の発言、撤回するしかないと思うのですが、いかがでしょうか、大臣。
高市早苗君
まず、私が電波を止めると申し上げたこともありませんし、安倍政権及び与党に対する批判を行う番組に対して大臣として何らコメントを申し上げたこともございません。
 電波法及び放送法に関しまして、現行法の条文について従来どおりの解釈を申し上げているだけでございますので、行政継続性の観点から私は発言を撤回する必要はないと思います。仮に撤回が必要だとしたらどの部分であるのか、明確に御指摘を賜れたらと思います。
吉良よし子君
大臣、停波という発言はしていないし、停波をするつもりもないし、これまでの解釈と何ら変わりないとおっしゃっていると。しかし、私、今までどおりで停波のような政治介入する意思が全くないのであれば、それが疑われるような発言そのものはしなければいいわけであり、そのもの全体を撤回すればいいと私は思うわけです。にもかかわらず、やはりその発言、撤回しないというところに私、重大な意図があるように感じざるを得ないんです。そこを指摘したいんです。
 というのも、言論の自由を奪う方法というのは、先ほど紹介しました、放送中止のボタンを押して、そして停波してという、そういう直接的なやり方だけではないからなんです。将基面貴巳さんという方による「言論抑圧」という本を私、読みました。そこには、放送ではなくて出版の分野での言論弾圧の在り方が紹介されておりました。戦前、内閣情報局の監督下で出版統制の実施機関として機能していた日本出版文化協会というものがあったと。この協会は出版社に対する用紙の配分を役割としていたと。じゃ、その用紙の配分どうするかというと、雑誌や新聞の企画内容によってその配分を決めていたというわけですね。出版物は印刷する紙がなければ発行しようがありません。そうして、出版手段である紙というものを政府の側が掌握、コントロールすることによって、新聞や雑誌は自主的に政府批判をしそうな人物の論文を載せないなどの対応を図る、そうやって出版現場は萎縮、自主規制の方向へと流れていったというわけです。
 戦前のこうした出版業界における紙というのは、現代の放送における電波と同じだと私、思うわけです。そうしたときに、放送を所管する総務大臣が、電波を止める、その可能性を否定しない発言をするというのは、私、やはり電波という放送手段を政府の側が握ってコントロールすることで、現場を萎縮させ、言論を抑圧しよう、そういう意図に聞こえるわけなんです。
 先ほどのジャーナリストの皆さんの記者会見の中でも、今既に一種のマスコミの萎縮現象が起きているとの意見も出されております。もし政府が、放送法の成り立ちや趣旨にのっとって戦前の轍を二度と踏まない、言論、表現の自由を守り抜くというのであれば、やはり電波を人質に取るような大臣の発言全体そのものを撤回するしかないと思いますが、いかがでしょうか。
高市早苗君
まず、これまで放送法第四条に関しまして、放送法第百七十四条の放送の業務停止命令や電波法第七十六条の無線局の運用停止命令が行われたことはございません。しかも、その運用につきましても、これまで私が何度も国会で答弁したとおり、法律の規定に違反した放送が行われたことが明らかであることに加え、その放送が公益を害し、放送法の目的にも反し、これを将来に向けて阻止することが必要であり、かつ同一の事業者が同様の事態を繰り返し、かつ事態発生の原因から再発防止までの措置が十分ではなく、放送事業者の自主規制に期待するのでは法律を遵守した放送が確保されないと認められるといった極めて限定的な状況のみに行うこととするなど、極めて慎重な配慮の下、運用すべきであると従来から取り扱ってきております。さらに、仮にこういった事態に陥ったときにも、放送事業者側には弁明の機会の付与など行政手続法に基づく手続がございます。放送事業者は、例えば運用停止命令、電波法七十六条に基づく運用停止命令といったものが万が一にも出された場合に異議申立てを行うことができ、総務大臣は電波監理審議会に付議しなければなりません。
 これまで適用例がないというのは、やはり放送法というのは、放送事業者の自主自律によってしっかりと放送法を遵守していただくということ、これが基本でございますので、委員がおっしゃいましたような、戦前のような検閲といった形でこれから放送するかもしれないものを事前にチェックして放送を禁じるといったことは、決してこれは政府としてもあり得ないことでございます。日本国憲法に基づいて対応していくことは当然のことでございます。
吉良よし子君
 停波があり得ないというのであれば、やはり発言そのものを撤回すべきである、そのことを私、強く求めまして、質問を終わります。
吉良よし子君
私は、日本共産党を代表して、NHK二〇一六年度予算の承認に反対の討論を行います。
 NHK予算の承認に当たっては、予算の内容とともに、予算の立案、執行における経営姿勢が問われます。放送法に基づき、国家権力からの独立、放送における表現の自由を確保する基本が貫かれていること、視聴者・国民の信頼が得られていることが求められますが、今のNHKにおいてこうした姿勢が貫かれているとは言えない事態が続いています。
 まず、相次ぐ不祥事とNHKの対応です。
 職員のタクシー券の私的利用、子会社における空出張や架空発注による着服、土地購入問題など、不祥事が繰り返され、後を絶ちません。会計上の信頼も揺らいでいます。にもかかわらず、NHKが示している対応策は組織改編先ありきです。徹底的な全容と原因の解明、視聴者・国民への情報公開と説明が尽くされないままの組織改編や、実行あるのみとの掛け声だけでは根本的な解決にはつながりません。
 そして、海外通信・放送・郵便事業支援機構に対する二億円の出資も問題です。そもそも、受信料収入で成り立つNHKは、営利目的の活動やリスクの高い事業には関わることはできないはずです。同機構は、各国の政治情勢の変動や制度の変更などによるリスクが高く、民間だけでは展開できない海外における電気通信事業、放送事業、郵便事業等を実施する現地事業を支援し、事業者の利益確保に寄与するものですが、公共放送として政府の成長戦略や商業主義にくみしないという基本的立場を貫くべきです。
 こうした中、籾井会長の発言への視聴者・国民の批判がますます強くなっています。就任以来、放送法に対する著しい不理解について国会で追及されている会長は、個人的な見解を放送に反映しないとの弁明を繰り返してきました。しかし、昨年二月、戦後七十年の節目に慰安婦問題を取り上げるかと問われ、政府のスタンスが見えないので慎重に考えると発言し、国会での弁明がごまかしであることが明白になったのです。さらに、この間、連続して起きている不祥事などを受け、視聴者・国民の不信は高まるばかり。会長の辞任、罷免を求める声も一層強まっています。
 以上、このような経営体制の下での予算は承認できない旨を述べ、反対討論といたします。