吉良よし子君
私は、日本共産党を代表して、NHK二〇一六年度予算の承認に反対する討論を行います。
 現在のNHKは、視聴者・国民からの信頼を全く得られていません。
 二年前に就任した籾井会長は、公共放送の会長としてふさわしくない発言を繰り返してきました。慰安婦問題、秘密保護法などをめぐって、政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない、政府のスタンスがよく見えない、今放送するのが本当に妥当かを慎重に考えなければなどの発言をして、放送法に対する著しい不理解ぶりを露呈しました。会長は弁明を繰り返していますが、視聴者・国民の不信感は強まるばかりです。
 こうした籾井会長の下で不祥事が相次いでいることも指摘しなくてはなりません。
 中でも、子会社で起きた架空発注による着服の事案は、NHK本体にも子会社にも監査体制がありながら見逃されるという、NHKグループ全体の構造的な問題が浮き彫りになった事案でした。
 そもそも、NHKが関連団体に営利活動を行わせて配当を得る一方で、非営利のNHKが営利団体である子会社や関連団体の監督を行うという矛盾があります。この矛盾こそ繰り返される不祥事の背景にあると、会長自身が立ち上げたNHK関連団体ガバナンス調査委員会が調査の中で指摘しています。
 籾井会長は、具体的に実行あるのみと、組織改編先ありきの姿勢を取っていますが、繰り返される不祥事の根本に何があるのか、非営利であるNHKが関連団体、子会社とどう関わるべきか、その矛盾について徹底的に検証し、視聴者・国民に説明責任を果たしながら自浄能力を発揮することこそ再発防止に必要なことです。ところが、それは極めて不十分です。
 NHKの経営姿勢への視聴者・国民の不信は深刻となり、会長の辞任、罷免を求める声は一層強まっています。このような状況では、今回の予算を承認することは到底できません。
 また、二〇一六年度予算において、NHKは、初めて株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構に二億円を出資するとされています。これは出資事業者の中で最高の金額です。この機構は、我が国の民間企業が、海外において民間だけでは事業展開ができないような、高いリスクのある事業への参入支援を目的としており、政府の成長戦略に位置付けられています。受信料で成り立っているNHKでは、本来、営利目的の活動はできないはずです。公共放送の立脚点を崩す機構への出資には反対です。
 次に、NHK予算に対する総務大臣意見についてです。
 大臣意見は、「クローズアップ現代」という個別の番組名を挙げ、昨年四月二十八日付けで行われた総務大臣による行政指導を踏まえ、再発防止に向けた着実な取組を求めています。これは極めて異例なことであり重大です。
 事実に基づかない放送など番組内容に問題がある場合、まず放送事業者の自主的、自律的な検証によって解決すべきです。さらに、NHKと民間放送連盟が設置する放送倫理・番組向上機構、BPOが、第三者の立場から調査、検証して、再発防止策の提出とその実効性を求めていくこと、これが言論と表現の自由を確保しつつ正確な放送と放送倫理の向上を図るルールです。
 にもかかわらず、昨年四月、大臣による行政指導が行われたことは、放送事業者に対する事業免許の認可権限を背景にした番組内容に介入したものと言わねばなりません。
 これに続き、予算に対する大臣意見で行政指導を踏まえた再発防止を繰り返し求めたのは、NHKの番組内容に対する露骨な介入であり、看過することはできません。しかも、重大なことは、こうした大臣意見が、番組内容に対する介入発言を続ける高市大臣の下で行われたということです。
 そもそも放送法は、戦前、国民を戦争へと導くプロパガンダの道具とされたことへの痛苦の反省の下、戦後、憲法二十一条が保障する言論、表現の自由を保障する立場から作られたものです。そして、当時の政府も、国会で法案の概要説明において、放送に対する表現の自由を根本原則といたしておりまして、政府は放送番組に対する検閲、監督等は一切行わないとはっきり述べているのです。
 だからこそ、放送法を根拠に政府が番組内容に介入することがあってはなりません。放送法の成り立ち、歴史を見れば、政府の役割は、放送における表現の自由を放送事業者に保障することです。番組作りについては、あくまでも放送事業者の自主自律に委ねられていて、その番組内容を判断するのは政府ではなく視聴者である国民なのです。
 今、放送に対する表現の自由を守るため、民放の報道現場の人々が立ち上がっています。著名なジャーナリストの皆さんは、三月二十四日に再び記者会見を開き、大臣の発言は憲法と放送法の精神に真っ向から反する、言論統制への布石だなど抗議の声を上げました。
 こうして声を上げているジャーナリストの一人である「報道特集」のキャスター、金平茂紀氏は新聞のインタビューに答え、権力を監視することがジャーナリズムの最大の役割だと言い、政治権力からやっぱり黙っている連中なんだなんて思われたくないので声を上げたと話しています。
 政府は、こうした報道現場の声こそ真摯に受け止めるべきです。放送法の成り立ち、現場の声も踏まえて、放送への政府介入となる大臣の発言、政府統一見解の撤回を改めて強く求めるものです。
 昨年十一月、BPOは、「クローズアップ現代」の報道に関して、NHKと政府に対して、「放送に携わる者自身が干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる。これは歴史の教訓でもある。放送に携わる者は、そのことを常に意識して行動すべきである」と述べています。
 このようなときだからこそ、NHKは憲法と放送法に基づき、国家権力から独立し、放送における表現、言論の自由を確保する姿勢を貫くべきであることを最後に強く申し上げ、討論といたします。