吉良よし子君
私は、日本共産党を代表して、二〇一五年度決算について質問いたします。
 二〇一四年四月からの消費税五%から八%への増税は家計に重くのしかかりました。二〇一五年度予算は、その苦しい家計に更に社会保障の国民負担増と給付削減の追い打ちを掛ける一方で、大企業には法人税や研究開発税制の減税で大盤振る舞いをするなど、国民の暮らし圧迫、大企業優遇の予算でした。その結果、個人消費は一四年度に続き一五年度も前年比マイナスに落ち込みました。個人消費が二年連続マイナスというのは戦後初めてのことです。一方で、資本金十億円以上の大企業の内部留保は三百八十六兆円と、史上最高額となっています。
 国民には負担増、大企業には負担減という安倍政権の経済政策そのものが消費を冷え込ませ、景気を停滞させていることを総理はお認めになりますか。
 総務省の家計調査を見ると、今最も苦しい生活を強いられ消費が落ち込んでいるのは、三十九歳以下の若年層の子育て世帯です。夫婦共働きでも、二人とも非正規雇用で生活に余裕がなく、職を失うかもしれない雇用の不安を常に抱え、子供の教育費のために少ない収入の下で少しでも貯蓄に回そうと食費まで切り詰めているという実態があります。
 政府の経済財政白書でも、子育て世帯の将来不安の拡大を認め、その背景に非正規雇用の増加があると指摘しています。子育て世帯が安心して働き子育てできる社会にしなければ、景気も良くならないし、日本に未来はありません。その認識を総理はお持ちでしょうか。お答えください。
 子育て世帯の将来不安を取り除くには、雇用、子育て、社会保障の抜本的な改善が待ったなしです。
 まずは、雇用です。
 二〇一五年は、いわゆるブラック企業が社会的にも大きく取り上げられた年でした。私も、昨年二月に決算委員会で、安倍総理に若者を酷使し違法を繰り返す悪質な企業名の公表を求めたところ、総理は厳正に対処すると答弁し、社名公表を指示しました。しかし、ブラック企業が根絶されたわけではありません。二〇一五年、労災認定された過労死の件数は九十六件、未遂も含む過労自殺の件数は九十三件で、そのうち二十代から三十代の若者の過労自殺は三十六件に上ります。
 先日、過労自殺であると労災認定された電通の新入社員で当時二十四歳の高橋まつりさんが、月百三十時間を超える残業を含む超長時間労働を強いられた上に、上司からは君の残業は無駄と言われるなどパワハラを受け、精神的に追い詰められ、入社僅か九か月目の昨年十二月に自殺した事件は象徴的な出来事です。若者の命をも奪うブラック企業、絶対になくさなくてはなりません。
 今、異常な長時間労働で、労災認定の目安である過労死ラインと言われる月八十時間を超えて社員を残業させる企業が二割を超えています。安倍政権が法案提出している裁量労働制の拡大や残業代ゼロ制度は、こういう労働者の過重労働を合法化したい大企業の要望を取り入れたものであり、企業の労働時間管理責任を更に曖昧にするものです。政府提出の関係法案は撤回すべきではありませんか。
 また、ブラックな働かせ方を強いる企業を一掃するとともに、若い世代の将来不安をなくすためには、非正規ではなく正社員を増やす方向に切り替えることは欠かせません。労働法制の規制緩和をやめ、昨年改悪した労働者派遣法を抜本改正し、派遣労働は臨時的、一時的業務に限定して、正社員の派遣労働への置き換えをなくすべきではありませんか。お答えください。
 次に、保育士の待遇です。
 保育士の待遇改善は、二〇一五年も緊急の課題となりました。今年三月の本会議で、総理は私に、保育士の給与について具体的で実効性のある待遇の改善策を示すと答弁しました。しかし、概算要求で僅か二%の賃上げが事項要求とされました。これが実効性のある待遇の改善なのかと、私は怒りを禁じ得ません。質の高い保育の実現には、保育士の配置基準の引上げと賃上げは待ったなしの課題であるという認識はありますか。
 そもそも、保育士の給与の基となる国の基準を低くして、保育現場の実態に見合わない保育士配置基準を放置してきたのは政府です。総理はその自覚はありますか。お答えください。
 社会保障について、自然増削減路線は見直すべきです。
 安倍総理は、一五年六月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針で、一六年度から三年で社会保障費の自然増を一兆五千億円程度に抑え込むとし、削減を推進する段取りを示す工程表も昨年末に決定しました。社会保障の安心と安全を揺るがす工程表、これは撤回するべきではありませんか。
 また、工程表の一環で出された年金カット法案が、先週金曜日、衆議院厚生労働委員会で強行採決されました。日本共産党は、これに断固抗議いたします。
 公的年金は、高齢者の生活を支える命綱となっています。しかし、この法案は、物価が上がっても賃金が下がる場合には賃金下落に合わせて二〇二一年から年金を下げるというものです。これでは、高齢者の命綱は失われ、若い世代の将来不安も増すばかりです。総理、この法案が、公的年金に頼る高齢者に痛みを強いて、若者の不安も広げる重大な法案であるという認識はありますか。
 地域経済にもマイナスとなる年金カット法案は廃案以外にはあり得ません。
 二〇一五年九月十九日、安倍政権は、憲法違反の安保法制、戦争法を強行成立させました。そして今、安保法制の本格的運用に乗り出しています。
 政府は、南スーダンで反政府勢力は支配地域を持っておらず紛争当事者ではないから武力紛争ではない、PKO参加五原則は維持され、首都ジュバは落ち着いているとしています。しかし、自衛隊派遣要員の家族には、反政府勢力が支配地域を持っていると説明していたことが明らかになりました。十一月十日に発表された国連事務総長の報告では、ジュバ及びその周辺の治安状況は引き続き不安定、南スーダンは崖っ縁などと述べており、政府の説明はもはや総崩れです。
 にもかかわらず、安倍内閣は、駆け付け警護などの新任務を自衛隊に付与し、派遣を強行しました。南スーダンへの派遣が、自衛隊が殺し殺される最初のケースとなりかねないという認識はありますか。
 日本共産党は、南スーダンからの自衛隊撤退を強く求めます。憲法九条の立場に立った非軍事の人道支援、民生支援の抜本的な強化こそ日本が行うべき貢献です。
 最後に、憲法について伺います。
 総理は、参院選後、改憲先ありきの様々な主張を国会で繰り返していますが、なぜ今憲法を変えなければならないかという根本的な理由は今も全く分かりません。改めて伺います。そもそも、現行憲法のどこに問題があり、どこをどう具体的に変えなければならないのですか。総理、具体的にお答えください。
 今政治に求められていることは、憲法を踏みにじる政治でも改憲でもありません。世界的にも先進的な内容を持つ日本国憲法の理想に現実の政治、社会をできる限り近づける努力であるということを強く申し上げ、質問を終わります。
内閣総理大臣安倍晋三君
吉良よし子議員にお答えをいたします。
 安倍内閣の経済政策についてお尋ねがありました。
 安倍内閣が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり上げていくというものであります。成長し、富を生み出し、それが国民に広く均てんされ、多くの人たちがその成長を享受できる社会を実現していきます。
 御指摘の消費税率の引上げは、社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡すとともに、国の信認を維持していくためのものです。増収分は、全額社会保障の充実、安定化に充てられます。法人税の減税については、法人実効税率を二〇%台にまで引き下げると同時に、政策減税や大企業の欠損金繰越控除制度等を見直し、特に大企業の課税ベースの拡大に取り組んできています。研究開発税制についても、利用件数を見ると、大企業だけでなく中小企業も含め幅広く利用されています。個人消費も、過去最高水準の企業収益を雇用の拡大、賃金の上昇につなげることにより、経済の好循環が生まれる中、三四半期連続で前期比プラスとなるなど、総じて見れば底堅い動きとなっています。
 こうした状況を更に推し進めるため、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジである働き方改革を断行します。同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにすることにより、中間層が厚みを増し、より多く消費することにつながると考えています。今後とも、あらゆる政策を総動員し、成長と分配の好循環をつくり上げてまいります。
 安心して働き、子育てもできる社会についてのお尋ねがありました。
 現在、安倍内閣は、誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会の実現に向け、取組を進めています。
 その中で、子育ての環境整備は重要な位置を占めています。保育の質の確保を図りつつ受皿の確保を進めるとともに、保育士の離職防止や再就職支援、処遇改善を行うなど、保育人材の確保に総合的に取り組んでいます。また、働き方改革において、子育てと仕事の両立に向け、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現を進め、ライフスタイルに合わせた多様な働き方が選択できるようにしていきます。
 子育てをしながら仕事を続けることができる社会をつくり出すことは、子育て世帯の所得を支えることになるのはもちろん、日本経済の持続的成長にもつながります。成長と分配の好循環の実現に向け、引き続き安倍内閣の取組を進めていきます。
 労働の在り方についてのお尋ねがありました。
 先般、電通の社員の方が働き過ぎによって尊い命を落とされました。こうしたことは二度と起こってはなりません。働く人の立場に立った働き方改革をしっかりと進めてまいります。
 現在提出中の労働基準法改正案は、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度を選択可能とするものです。残業代ゼロ法案との批判は当たりません。また、昨年成立した労働者派遣法改正法は、正社員を希望する方に道を開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方の待遇改善を図るものであり、しっかりと施行状況を注視してまいります。
 長時間労働の是正については、働き方改革実現会議において、時間外労働の上限規制の労働基準法の在り方を含め、働く人の立場、視点に立ってきちんと議論を進め、年度内に具体的な働き方改革実行計画を取りまとめ、関連の法案を提出いたします。
 保育士の配置基準と処遇改善についてお尋ねがありました。
 保育士の配置基準は、児童の身体的、精神的、社会的な発達に必要な保育の水準を確保するための最低基準であり、質を確保するため適切に設定しているものと認識しています。一方で、より質の高い保育を提供するため、平成二十七年度から、三歳児に対して手厚い保育士の配置を行った保育園等に対して、そのために追加的に要した人件費を、消費税財源を活用し、一定の範囲で補助しています。
 保育士の処遇については、安倍政権は、政権交代直後二・八五%相当改善し、以降、毎年度改善に取り組み、これまで七%相当改善してきました。来年度は更に二%相当の処遇改善を行うとともに、保育士としての技能、経験を積んだ職員について四万円程度の追加的な処遇改善を実施することとしており、継続して実施できるよう予算編成過程でしっかり検討してまいります。
 経済・財政再生計画の改革工程表と年金改革法案における年金額改定ルールの見直しについてお尋ねがありました。
 昨年末に取りまとめた経済・財政再生計画の改革工程表は、持続可能な社会保障制度の構築と財政健全化を同時に達成していくために必要であり、撤回すべきものとは考えておりません。
 年金制度については、現役世代が負担する保険料、さらには税によって高齢者世代を支えるという仕組みで運営されています。その仕組みにおいて、今回提案している賃金に合わせた年金額の改定の見直しは、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とすることで将来にわたって給付水準を確保し、世代間の公平の確保等に資するものです。
 また、この見直しについては、低年金、低所得の方に対する年最大六万円の福祉的な給付金が平成三十一年十月までにスタートした後の平成三十三年度から適用することとしており、現在の給付者にも十分配慮しています。これにより、年金と相まって、今まで以上に高齢者の生活を支えてまいります。したがって、高齢者に痛みを強いるや若者の不安を広げるといった御指摘は当たらないと考えています。
 南スーダンPKOに関するお尋ねがありました。
 南スーダンは、最も新しい国連加盟国であり、独立から間もない世界で一番若い国です。治安情勢は極めて厳しく、だからこそ、その平和と安定を図るため、我が国を含め世界のあらゆる地域から六十か国以上が部隊等を派遣しています。治安情勢を理由に撤退した国はありません。
 武力紛争の当事者となり得る国家に準ずる組織は存在しておらず、また、反主流派によって支配が確立されるに至った領域があるとは考えていません。PKO参加五原則は維持されています。
 自衛隊が展開している首都ジュバについても、今後の状況は楽観できず、引き続き注視する必要がありますが、現在は比較的落ち着いています。危険の伴う活動ではありますが、自衛隊にしかできない責務をしっかりと果たしています。
 先般の国連報告書については、治安情勢に関する内容は我が国の認識と基本的に異なるものではないと考えています。他方、報告書の末尾に潘基文事務総長の意見が付されており、その内容は報告書全体の治安情勢の評価と一致しない部分があるため、その真意を国連に照会したところ、安保理が行動を取らなければ状況が深刻になるという趣旨であること、また、ジュバは比較的安定している、ただし引き続き情勢を注視する必要があるとの趣旨である旨、回答を得ています。なお、過去の隊員家族に対する説明資料には誤解を招きかねない不正確な記述があったことから、既に防衛省において資料の訂正を行っています。
 駆け付け警護について申し上げれば、南スーダンには現在もジュバ市内を中心に少数ながら邦人が滞在しており、邦人に不測の事態が生じる可能性は皆無ではありません。過去、自衛隊が東ティモールや当時のザイールに派遣されていたときにも、不測の事態に直面した邦人から保護を要請されたことがありました。自衛隊は、十分な訓練もなく、任務や権限が限定された中でも邦人保護に全力を尽くしてくれました。
 実際の現場においては、自衛隊が近くにいて、助ける能力があるにもかかわらず何もしないというわけにはいかないのが現実です。現実を直視しなければなりません。それが私たち政治家の責任でもあります。
 しかし、これまでは法制度がないため、そのしわ寄せは結果として現場の自衛隊員に押し付けられてきました。本来あってはならないことであります。駆け付け警護はリスクを伴う任務です。しかし、万が一にも邦人に不測の事態があり得る以上、あらかじめ必要な任務と権限を付与し、事前に十分な訓練を行った上でしっかりと態勢を整えた方が、邦人の安全に資するだけではなく、自衛隊のリスクの低減に資する面もあると考えます。
 また、南スーダンでは、一つの宿営地を自衛隊だけでなく複数の国の部隊が活動拠点としています。宿営地の共同防護の権限付与により、平素から他国と共に訓練を行うことができ、緊急の場合の他国との意思疎通や協力も円滑になります。これにより、宿営地全体としての安全性を高めることになり、自衛隊に対するリスクの低減に資するものと考えています。
 自衛隊による貢献に対しては、南スーダンのキール大統領から、また政府内で反主流派を代表するタバン・デン第一副大統領からも、感謝の意が、言葉が示されており、国連を始め国際社会からも高い評価を受けています。国連の旗の下、国際社会とともに力を合わせている自衛隊の活動が殺し殺される活動であるかのごとくの主張は、全く不適切なものであります。
 政府としては、今後とも、現地情勢について緊張感を持って注視してまいります。その上で、自衛隊の安全を確保し、意義のある活動が困難であると判断する場合には、撤収をちゅうちょすることはありません。この点は明確に申し上げておきたいと思います。
 憲法改正についてお尋ねがありました。
 現行憲法が成立して七十年がたちました。憲法は国の未来そして理想の姿を語るものであり、二十一世紀の理想の姿を私たち自身の手で描いていくという精神が、日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと信じております。
 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義といった現行憲法の基本原理は堅持しつつ、その上で必要な改正は行うべきものと考えておりますが、どの条文をどのように変えるかは国会や国民的な議論が深まる中で収れんしていくものと考えております。