吉良よし子君
 日本共産党の吉良よし子です。
 まず最初に、教育免許法改正案について伺います。
 改正案では、免許状取得に必要な科目区分について、これまでの教科、教職、教科又は教職に関する科目とされていたものが、教科及び教職に関する科目へと統合されます。中教審の答申ではこれについて、「科目区分を撤廃するのが望ましい。」とまで述べられているわけですが、そもそも教員は、学問の到達点を子供たちに伝えるということも重要な役割であるはずです。その点から見れば、教科に関する科目というのは、まさに教科ごとにその学問的、専門的な到達点を身に付ける場であり、教科の指導法の基礎に当たる部分だと思います。
 実際に大学で教員養成に当たっておられる教員の中からも、科目区分を撤廃すれば教科ごとの学問的な面白さや深い学びにつながるような指導がしにくくなると、それで果たして資質の向上につながるのかという懸念の声も上がっています。
 そこで、大臣に確認いたします。
 本改正案によって科目区分が統合されたとしても、教員を目指す学生に対して、教科に関する内容、つまり学問的な学び、学問的知見の習得を保障していくということは変わりないという理解でよろしいでしょうか。
文部科学大臣・松野博一君
教員が学校において教科の指導を行うに当たっては、教科に関する専門的な知識をしっかりと身に付けているということは必要不可欠であると考えております。今回の教科に関する科目、教職に関する科目等の科目区分の見直しを提言した昨年十二月の中央教育審議会答申においても、科目区分の見直しの後の教職課程の内容の改善イメージを示しておりますが、その中でも、見直し後も引き続き、教科に関する専門的事項と各教科の指導法をまとめた科目を置くこととされております。
 文部科学省としては、本法案が成立した場合、この答申の見直しのイメージを踏まえて教職課程の具体的な見直しを行っていくこととしておりますが、学校現場の要望に柔軟に対応できるよう、教科に関する専門的事項とその指導法の一体的な取組について適切に対応してまいります。
吉良よし子君
必要不可欠という答弁もありましたが、免許状取得に係る事項の多くというのは先ほどもありましたとおり省令で定めることとなっていますが、その内容というのは教員の資質向上にとって重要なことでありますので、統合の名前で安易に切捨てがされることのないようにしてほしいということを述べておきます。
 次に、教育公務員特例法改正案について伺います。
 本改正案では、文科大臣が、教員等の資質の向上を図るため、資質の向上に関する指標の策定に関する指針を定めることとしております。この指針について中教審答申では、「決して国の価値観の押しつけ等ではなく、各地域の自主性や自律性を阻害するものとなってはならない。」としているわけです。改めて、これも大臣に確認したいと思うわけですが、本法案に基づく大臣が定める指針というのは国の価値観を押し付けるものではないということでよろしいですね。
松野博一君
教員等としての資質の向上に関する指標を策定するための文部科学大臣による指針は、あくまで任命権者が当該指標を策定する際の大綱的な指針です。当該指針は、例えばグローバル化、情報化といった社会構造の変化を考慮するなどといった教員の資質の向上を図るに当たり踏まえるべき基本的な視点、児童生徒指導力、授業力などといった同指標に盛り込むべき内容に関わる観点、大学や他の機関との連携に関する事項等を示すものであり、教員に求められる資質、能力や研修内容等を個別具体的に示すものではございません。
 また、当該指標の策定に当たっては、文部科学大臣が策定する当該指針を参酌しつつ、教員の任命権者である教育委員会等が地域の状況を踏まえて大学等と協議を行った上で責任を持って策定するものであり、国が決めたものを地方や現場に押し付けるものにはならないと考えております。
吉良よし子君
押し付けるものにならないということでありました。
 では、それの指針を参酌して作る指標についても改めて確認をしたいのですが、午前の質疑の中でもこの指標を評価や人事考課に結び付けることなど影響はさせないという答弁もあったと思うんですが、こうした指標であったり若しくは計画であったりするようなものが、現場教員が自ら課題を持って研さんに努める、そうしたことを妨げるようなことになってはならないと考えるわけですが、大臣、いかがお考えでしょうか。
松野博一君
教員等としての資質の向上に関する指標は、職責、経験及び適性に応じて向上を図るべき教員等の資質に関する指標であり、当該教員等の任命権者である教育委員会等が文部科学大臣の策定する指針を参酌しつつ、その地域の事情に応じて策定するものであります。
 また、同指標は、教員の職責、経験及び適性に応じた成長段階ごとに、教科指導力、生徒指導力といった能力や資質の目安が規定されるものと考えており、現場の教員に押し付けることにはならないと考えております。
吉良よし子君
現場の教員に押し付けることにはならないというお答えでありました。
 そもそも、資質の向上のための研修というのは、上から押し付けるというようなものではなくて、やはり教員自ら課題を設定して自主的に行う、それが中心になるべきものだと私は考えるわけです。
 しかし、実際にはどうかといえば、例えば押し付けであったりとか自主性を妨げるような事態が今現在起きているという点が私問題なのではないかと思うわけです。
 例えば、本改正案の指標のイメージとして紹介されている横浜市の事例なんですけれども、その教員の初任者研修の指導資料というものを私拝見いたしました。そこには、とかく初任者は子供かわいさの余り学校、学年、学級の規律をなおざりにする傾向も見られるので、あくまでも指導者であることを自覚させたいと、教員の現場での自主的な判断を否定するような記述がありました。
 また、東京都で行われている東京教師道場と呼ばれる研修についてもお話を伺ってまいりました。この道場というのは、初任者研修の後から十年目程度の教員が対象となっており、中でも教科等の指導において専門性を身に付けたいという教員や、校長が授業力向上のためのリーダーとして育成したい教員らを集めて、二年間掛けて実践的な授業研究を進めて教科等の専門性を高めるとしているもので、その中では部員同士で相互研さんをするなどということもうたっているわけです。
 しかし、実際はどうかといえば、研修組織である班というものにおいて二年間継続的に指導に当たる教授と呼ばれる学習指導専門員の言うことが絶対視されているというわけです。教科ごとに集まっている部員数名の意見よりも、その教授の意見が優先されて、およそ相互研さんとは言えないなどというような不評の声も上がっていると伺いました。
 このように、行政が行う研修において、既にあるべき教師像であるとかあるべき指導方法の押し付けが行われているのは本当に問題だと思うわけです。
 改正案によって実施されることになる国や地方が定める指針若しくは指標がこうした押し付けの根拠になってはならないし、あくまでも現場の自律性、主体性を尊重すべきだと私考えますが、大臣、この点いかがお考えでしょう。
松野博一君
大臣指針の性格、それを参酌をいただいて任命権者が策定していただく指標の性質については、先ほど答弁をさせていただいたとおりであります。
 任命権者である個別教育委員会等の研修の目的、手法に関しては言及することは控えさせていただきたいと思いますが、職責、経験等に応じて適切な研修が行われるよう期待をしているところであります。
吉良よし子君
適切にというお話でしたけれども、中教審の答申の中では、個々の教員が自ら課題を持って自律的、主体的に行う研修に対する支援のための方策というものも求めているわけですから、国や地方がすべきことはまずはやっぱりそういった支援であると思うわけで、押し付けにならないように是非お願いしたいと思うわけです。
 それで、もう一点、この教特法改正案については、十年経験者研修を中堅教諭等資質向上研修として、十年に達した後に研修を受けなければならないとしてきたその時期を弾力化するとしているわけです。この時期の問題に併せて、これまでの十年研の内容とされてきた教諭等としての資質の向上に加えて、中堅研修についての条文の中を読んでみると、学校運営の円滑かつ効果的な実施において中核的な役割を果たすことが期待される中堅教諭等としての職務を遂行する上で必要とされる資質の向上という内容が新たに加わっているということです。
 そもそもこの対象となる十年程度の現場経験のある世代、あるいは経験年数を持つ教員というのは、校務分掌や学年集団運営において中核となる世代であると同時に、子供たちとの関わりや教員同士のつながりからの学びが深まっていって、教員としても一番伸び盛りの時期だと思えるわけです。
 現在の十年研について文科省の調査によりますと、研修の平均日数を比べてみると、校外よりも校内研修の方がその日数は長いという実態もあるわけですが、今回行政による中核的役割を担うための研修を受けさせるために、中堅教員を学校現場から引き離す日数が逆に増えてしまうようなことにもしなってしまえば、新たな負担増になってしまうのではないかと懸念を抱かざるを得ないわけです。また、研修から戻ってくれば、学校運営の中核を担うこと、これを現場から期待されることにより、業務の負担も更に増大してしまうのではないかという懸念もあるわけです。
 大臣自身は、行政が行う教員研修について、精選を含め負担を増やさないようにしていく旨の答弁をこの間されているわけですけれども、この中堅教諭等資質向上研修というのは、新たな負担を増やさないという趣旨で行うものと理解してよろしいでしょうか。
松野博一君
 学校現場を取り巻く課題が複雑化、多様化し、学校や教員に求められる役割も拡大をする中で、教員の負担を軽減し、教員が自ら学び続けることができる環境を整備することは喫緊の課題であると認識をしております。
 平成二十六年三月に取りまとめられた教員免許更新制度の改善に係る検討会議の報告においても、十年経験者研修について、免許状更新講習の受講時期と重なる教員の負担感や重複感の解消を図るために必要な措置を講ずることが提言されています。こうした提言を踏まえ、これまでにも各都道府県教育委員会において十年経験者研修の一部について免許状更新講習として認定を受けるなどの取組を進めてきたところですが、この度の法案においては、更に十年経験者研修について実施時期の大幅な弾力化を図り、実施年次に制限を設けない中堅教諭等資質向上研修に改めることとしています。
 本法案が成立をすれば、これまで免許状更新講習と重複しやすかった研修の実施時期を当該学校や地域の教員の年齢構成を踏まえて調整することが可能となり、研修や講習の受講に係る過密なスケジュールが緩和されるなど、学校現場における教員の負担軽減の観点からも効果が期待できるものと考えております。
吉良よし子君
負担軽減の効果が期待できるということで負担を増やさないという趣旨だということだと思うわけですが、今回議題になっている法律に関わっての研修というのはもう本当に現場教員の負担と今なっているわけです。大臣自身もおっしゃられたとおり、様々な研修が現場教員は受けなければならないということになっていると。弾力化自体は私も否定はしないわけですけれども、本当に現場の負担を軽減していくためには、先ほどあったような免許更新講習の在り方を含めて、行政研修を削減していくなど、抜本的な見直しこそが私必要だと思うわけです。
 もちろん、何より教員の世代交代が急速に進行していて、先輩教員から若手教員への知識や経験の伝承ができないとか、経験年数の均衡が崩れる、若手教員の悩みや相談にも乗りながら一緒に学級運営をやっていけるミドルクラスの教員がとても少ないなどの実態というのもあるのも確かなわけですが、しかし、これは自然発生的に起きたことではないわけです。計画的に正規の教職員の増員を図って教育条件を良くするのではなくて、本来正規教員を充てるべき部分にさえも臨時や非常勤講師などの加配措置でその場しのぎを現場に強いてきた政府の責任こそ大きいのではないでしょうか。
 更に言わせてもらうならば、この十年以上の教職員定数の削減を唱えて、文科省の定数改善計画の実現に一貫して背を向け続けてきた財務省の姿勢も改めていただかなければならないと思うわけです。
 先日、財務省の財政審財政制度分科会で提出された義務教育費国庫負担制度に関わる資料を拝見いたしました。この一枚目に公立小中学校の教職員定数と児童生徒数の推移というのがあるわけですが、それ見て、私非常に驚いたわけです。平成に入って以降、児童生徒数は約三〇%減となる一方で、教職員定数は約九%減にとどまっており、児童生徒四十人当たり教職員数は約四〇%増えているという、教職員数は十分だという書きぶりなわけですが、私はそれは実態を反映していないと思うわけです。
 何より、この財務省の出している公立小中学校の教職員定数という数字は、特別支援学校、特別支援学級に勤務する教職員の数も含まれているわけです。公立小中学校と特別支援学校というのは明らかに校種が違うにもかかわらず、それを同じ公立小中学校と一つにくくること自体、私は偽りだと思うわけですし、事実誤認だと言わざるを得ないわけです。
 財務省、このような間違いのある表を基にどうして公立小中学校の実態が分かるというのでしょうか。すぐにこの資料を撤回して、財政審に資料を提出し直してもう一度議論すべきなのではないでしょうか。
財務省大臣政務官・杉久武君
今御指摘をいただいた資料については、委員御指摘のとおり、公立小学校、公立中学校、そして公立特別支援学校の小中学部、公立中等教育学校前期課程の教職員定数と児童生徒数の総計の推移となっております。
 少子化による児童生徒数の減少と教職員定数の減少のペースを比較することが主たる目的でございますが、児童生徒数については、小学校、中学校、特別支援学校、中等教育学校ごとのデータがある一方で、文部科学省によれば、教職員数のうち六万人を超える加配定数については、それぞれの学校ごとに人数を区分けすることが困難とのことであり、総計の推移を示している、そういった資料であることを御理解いただきたいと思います。
 以上です。
吉良よし子君
区分けするのが困難と言いますけれども、そもそも公立小中学校と特別支援学校というのは校種が違うわけで、その数字も出しているわけですよね、文科省は。
 お配りした資料を見ていただきたいわけですけれども、これは文科省が出した数字でありますが、この特別支援学校、特別支援学級を抜いた数字というのは出せるわけなんです。平成元年、七十・六万人、平成二十七年、五十七・九万人と、この数字を見れば教職員は減っているというのが事実なわけです。同様に、公立小中学校に通う児童生徒数は、平成元年、一千四百八十・二万人、また平成二十七年、九百四十二・六万人となるわけですから、そうすると、児童生徒数四十人当たりの教職員定数というのは、平成元年の一・九一人から平成二十七年の二・四六人となり、四〇%の増どころか、僅か二%の増にとどまって、〇・〇四人の増にしかなっていないというわけですよ。
 大臣、このように間違った資料を基に今後十年間で機械的に四・九万人の教職員を削減しても構わないなどという財務省の考えには、大臣ももちろん賛同できないと思うわけです。現在の教育条件を良くして資質を向上させるためには、現状の教員定数では不十分であり、もっと増やすことが必要だと私考えますが、大臣の認識を伺いたいと思いますが、いかがでしょう。
松野博一君
特別支援教育の対象となる児童生徒の増加や子供の貧困の問題などもあり、学校が抱える問題、課題は複雑化、困難化をしているという認識は私どもも持っております。
 こうした状況を踏まえ、平成二十九年度概算要求においては、小学校専科指導やアクティブラーニングの視点からの授業改善、発達障害等の児童生徒への通級指導や外国人児童生徒等教育の充実、チーム学校の実現に向けた基盤整備などによる「次世代の学校・地域」創生プランの推進などに向け、「次世代の学校」指導体制実現構想を策定し、三千六十人の教職員定数の改善を要求をしているところであります。
 文部科学省としては、学校現場を支援をし、子供たちの教育環境を充実していくために必要な教職員定数の確保、充実に向けて全力で取り組んでまいります。
吉良よし子君
是非よろしくお願いします。
 では、終わります。ありがとうございました。
吉良よし子君
私は、日本共産党を代表して、教育公務員特例法等改正案に対する反対討論を行います。
 本法案は、大量退職、大量採用などで生じた教員の年齢、経験年数の不均衡による弊害などを理由に、教員の研修や養成などの仕組みを変えようとするものです。この不均衡は、計画的な教員定数改善を行わず、採用抑制を続けてきた政府によってつくられたものですが、その反省は全くありません。
 教育公務員特例法改正案は、教員の資質の向上を図るためとし、文部科学大臣が新たに指針を定めます。教育委員会は、その指針を参酌し、指標を定め、教員研修計画を導入するというものですが、教育委員会の定める研修計画は文部科学大臣の指針の下に置き、管理、統制しようというものであり、到底認められません。
 さらに、十年経験者研修を中堅教諭等資質向上研修に改めます。十年程度の経験を有する教員は、学年運営、学校行事などで中心的な役割を果たしている場合も多く、そうした教員を現場から切り離したり、研修後に押しなべて学校運営の中核的役割を期待し業務を増やすなど、新たな負担を教員に強いるという懸念があります。
 教員の資質向上などと称して、国の方針の下で、あるべき教員像、あるべき指導法を示し、研修で育成する方法では問題は解決しません。資質の向上のためには、教員自身が学びの専門家として自主的に研修に取り組むことが必要です。あわせて、行政研修を抜本的に見直すこと、校内研修の機会の確保、充実、少人数学級推進のための定数改善、教員の多忙化の解消こそ、教育行政の責務です。
 また、教員免許法改正案について、これまでの教科、教職、教科又は教職という区分を取り払うとしています。教科と教科の指導法を統合するなど、これまでより教科の指導法についての科目を中心にしていく見直しのイメージを持っているようですが、学問的、専門的な教科に関する知識を身に付けなければ、子供たちに教科の面白さや学ぶ楽しさを伝えることはできません。学問的な知識を軽んじ、指導法だけを丸暗記させることにつながりかねないやり方は慎むべきであることも申し述べ、討論といたします。