吉良よし子君
日本共産党の吉良よし子です。
この法案は、地方公務員について、現行の勤務評定を廃止して、能力評価と業績評価を二本柱とする人事評価制度を地方公務員に適用するために法律を変えようというものです。しかし、私は、今法律を変えなければならない理由はないと考えます。なぜなら、現行法でも第四十条で勤務評定を定められており、総務省が全国人事課長・市町村担当課長会議に提出した資料でも、人事評価制度と勤務評定を比較して、職員の執務の状況を把握、記録するツールとしての性格は勤務評定と同様と述べているからです。実際、現行法上でも既に政府の意図している人事評価制度を導入している自治体もあります。
総務省に伺います。現在、人事評価制度を導入している自治体の状況を述べてください。
政府参考人 三輪和夫君
勤務評定の制度の運用といたしまして、国の人事評価制度と同様の取組、すなわち能力評価及び目標管理型の業績評価でありますけれども、これを行っております団体は、平成二十四年度では、都道府県で三十七団体、指定都市で十九団体、市区町村で五百六十三団体、全体で六百十九団体、これは全団体の三四・六%に相当いたしますが、そのような状況となっております。
吉良よし子君
全体で六百十九団体が導入しているという話であり、現行法の下でも制度導入はできるというのは明らかです。問題は、これがどのように導入されてきたかということです。
人事評価制度が法律上導入されたのは、先ほどの議論の中でもありましたように、二〇〇七年、平成十九年の国家公務員法の改正ですが、それ以前、行政改革方針の閣議決定に基づいて、平成十七年、二〇〇五年には、総務事務次官通知において、地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針を示し、能力、実績を重視した人事評価制度の導入を地方公共団体に助言してきたと言います。
しかし、実態は、助言などという穏やかなものではありません。例えば、昨年八月に開かれた全国人事課長・市町村担当課長会議では、勤務評定実施に関わる裁判例まで出して、勤務評定を行っていないことによる訴訟リスクは否定できないと市町村を脅すような言い方がなされています。こうした強圧的なやり方を更に強化し、法律であまねく自治体に強制しようというのが今回の法改定なのではないでしょうか。
なお、こうした強圧的なやり方を取ってきても、この約十年、人事評価制度を導入した自治体が全体の三四・六%にとどまっているのが実態です。とりわけ市町村での導入が進んでいない、これはなぜか、その理由を総務省、お答えください。
政府参考人 三輪和夫君
人事評価制度は、地方公務員につきましてはまだ法律上の位置付けがございませんで、助言等による普及に努めてきたところでございます。このため、特に市区町村におきまして十分な情報等が浸透をしておらず、人事評価制度に対する懸念や心配、あるいは地方公務員法の改正を待っての導入を想定をしていると、こういったような団体もあると考えております。
例えば、小さな町では職員の顔が見えるので評価や開示が難しい、あるいは窓口などのルーチン業務における目標設定の方法が難しい、こういったような意見もあると承知をしておりますけれども、総務省におきましては、適切な運用方法について助言を行い普及に努めた結果、能力評価及び目標管理型の業績評価を行っております市区町村は、平成十七年の百八十四団体から平成二十四年時点で五百六十三団体、三百七十九団体の増加と、このような状況になってきているところでございます。
今回の法改正を踏まえまして、人事評価制度の円滑な導入ができますように、総務省としても引き続き必要な助言などを行ってまいりたいと、このように考えております。
吉良よし子君
増えてきたと言いますけれども、実情を見れば市町村において普及が大変少ないと。それは、先ほどあったように、小さな団体では難しいという声があるということですが、地方自治体には職員数が数十人規模の小さな自治体もあると。現行法でも、実際にそうやって増えてきた、導入できる人事評価制度が、その助言という名の強制を行っても普及しなかったのは、制度がない、法律がないからではなく、その自治体の規模や実情に合わなかったからなのではないでしょうか。それを法律を変えてまで強制する必要はないと考えます。
そもそも、いわゆる人事評価制度を導入するという公務員改革というのは、二〇〇一年に閣議決定された公務員制度改革大綱から始まります。これは、一九九〇年代に民間企業で急速に広がった成果主義賃金体系に追随したこと、新自由主義が席巻したイギリスなどの例なども参考にしたものだと言われております。
では、その政府が参考にした民間企業での成果主義賃金体系のその後はどうなったのか。日本能率協会が二〇〇九年に行った調査では、成果主義を導入しても何らかの不具合があって見直しを行った企業は三八・八%に上り、導入予定がないところは一五・九%です。同じ年に日経ビジネスが行った調査では、あなたの会社が導入した成果主義は成功したかという問いに、成功したという企業は三一・一%だったのに対し、失敗だったと答えた企業は何と六八・五%に達しているのです。
また、イギリスでは、職員全体を対象とするためにコストが掛かり過ぎる、評価基準を一貫させることが非常に困難であったこと、成果主義賃金が職員のやる気につながらず、むしろやる気を失わせたことなどを理由に、およそ十年前から廃止が始まっています。これらの事例を踏まえれば、今度の地方公務員制度改革は既にその有用性が否定された制度だとも言えます。
ここでまた総務省に伺いますが、今回の法改定に当たって、こうしたイギリスや民間企業における人事評価制度についての否定的な評価も踏まえた検討をされたのでしょうか。
政府参考人 三輪和夫君
国におきましては、昨年度、国家公務員の人事評価制度の運用状況を検証いたしました上で、制度運用の改善のための方策を検討するために、有識者による検討会を開催をしたところでございます。その中で、民間企業における人事評価の取組状況についても検討をされておりまして、その際の資料によりますと、目標管理による達成度判定を反映した考課体系、これが八割前後、成果につながる行動や業務遂行プロセスに着眼をした考課要素、項目の設定、これが七割台、こういった状況であるということでございます。検討会におきましては、こういったことも踏まえて、現行の人事評価制度を前提に運用改善の提言が行われているものというふうに理解をいたしております。
また、地方公共団体の人事評価に関して行いました平成二十四年度の研究会等におきまして、ケーススタディーとして民間企業における試行錯誤も含めた取組事例を取り上げておりまして、その中では、人事評価制度を前提に、その運用上で生じた課題とその対応状況についても報告をされているところでございます。
総務省といたしましては、人事評価制度は、従来の勤務評定に比べて客観性、透明性をより高め、能力本位の人事管理を行って一層の公務能率の向上を図るためのものとして導入が必要と考えているところでありまして、その上で、地方公共団体において適切に運用されるように助言等を行ってまいりたいと考えております。
吉良よし子君
検証されたということですけれども、でも実際には六八・五%が失敗だったと答えている、そういう調査もあるということです。そういうことを真面目に検討したのであれば、やはり、こうした全ての自治体にあまねくこういう制度を導入させる、強制するような今回の法改定にはならなかったのではないかと思うんです。何よりも、公務労働、とりわけ地方公務員の仕事には成果主義というのはなじまないと思います。
研究者が公務員に向けて行った最もやる気が出たのはどんなときかというアンケート調査では、懸命に仕事をしたら市民から感謝された、仕事ぶりを褒められたなどの答えが半数を超したと報告されています。憲法にうたわれている全体の奉仕者である公務員の道を選択した人たちにとってみれば、市民からの感謝がモチベーションにつながるというのは当然の回答だと思います。
市民の相談に丁寧に耳を傾け、時間は掛かっても一つ一つその問題を解決していくことを成果と見るか、それとも、数はこなすが市民からは冷たい窓口と言われる人がよいのか。五段階評価でできた、できないなどと上司によってランク分けされる職場では、上司の顔色ばかりうかがってしまうことになり、公務員の目が主権者である住民には向かなくなってしまうのではないでしょうか。大臣、いかがでしょう。
国務大臣 新藤義孝君
私が知る限り、そういう態度で公務に携わっている公務員というのは見たことがございません。市民から、また国民からそういう評価を得ることが最大の喜びなんです、特別にそれによって昇給があるわけではありませんから。そのために一生懸命仕事をして、その一生懸命仕事をしたことが自分の評価につながって次なる仕事のチャンスを与えられる、そこにモチベーションが発生するわけです。ですから、人事の評価というのは市民の評価と連動しているものであって、しかも、いやしくも公務員たるものが、規模が大きいからやります、小さいからできません、私たちはそれは要らないんだというようなことを考えている公務員も私は見たことがございません。
ですから、こういう制度をいかに有効に使うかが問題なのであって、きちんとした中で適切な運営を私は図っていただきたいと、このように期待をしております。
吉良よし子君
そうはいっても、今回の人事評価制度は給与や処遇に結び付けることになっているわけですから、やはり、自分の給与、処遇が関係するとなれば、市民の感謝、それが最大のモチベーションだったはずのところが転換してしまうおそれがあるんじゃないかと、そういうことを私は申し上げているわけです。
その基準は絶対評価に基づくものとされていますけれども、公務員になっている人は、試験をくぐり抜けた、能力、人柄ともある意味その地方でもえりすぐりの人たちがほとんどだと思います。そういう人たちを絶対評価すれば、ほとんどの人がいわゆるよくできた、できたと評価されることになるのではないでしょうか。
先ほどの質問でもありましたように、国家公務員の能力評価、業績評価でも、九割九分がS、A、B、そういう評価になっているという話もあります。結局、C、Dの評価は一%にも満たないというのが実情なんです、厳しい採用基準をくぐり抜けてきた人たちですから。
人事院では、これでは昇給者ばかりが出ることにつながるからと、昇給の人員の上限枠をつくって、一番上位の区分に入る人は五%、二番目の区分については二〇%に制限することとしていますが、下位についても同じように一定の分布率を設けるつもりなのでしょうか。人事院、お答えください。
政府参考人 古屋浩明君
今御質問にもございましたとおり、上位の区分につきましては、昇給に関して、その上位の昇給区分に集中するということではいけませんので、上限としての枠を設けているところでございます。
御質問の下位の昇給区分でございますが、これにつきましては現在枠は設けておりません。これは、下位の昇給区分に一定の枠を設けるということとした場合には、人事評価が標準の者も下位の昇給区分に当てはめられるということも生じるということになりますので、職員の士気の維持、人事管理の観点から適切ではないという考え方によるものでございます。能力、実績に基づく給与という観点からは、職員の勤務実績が人事評価により的確に反映されることが肝要ということでございますので、下位の評語の付与を含め、人事評価が厳正に実施されることがともかく重要であると考えております。
吉良よし子君
下位については、そういう下に評価されてしまう、評価の引下げにもつながるから望ましくないということであり、それについてはそのとおりだと思います。
実際、大阪府では、二〇一一年二月に職員基本条例が強行され、相対評価を導入しています。その中で、SやDの評価の職員は一%以下であるにもかかわらず、相対評価によって五%の枠が設定され、千人以上が下位評価落ちとなっています。職場からは、B評価なのに相対評価では第五区分、納得できないし働く意欲を失った、上司との信頼関係や同僚とのチームワークが維持できなくなるなどの声が上がっています。大阪府のアンケートでは、絶対評価の結果については納得できたという人が五四・六%あったのが、相対評価については三七・四%に落ち込んでいます。さらに、相対評価による人事評価について、昨年までの絶対評価による人事評価と比べて職員の資質、能力及び執務意欲の向上につながると思いますかと聞いたところ、評価者の七四・七%、被評価者の七〇・四%が思わないと答えています。評価される側のみならず、評価する側からもこうした批判が出ているわけです。
こういう声を見れば、相対評価のようなやり方、このような人事評価制度を地方に無理やり押し付けることはやはり破綻しているし、反対です。下位評価落ちとなるような分布率の設定などは押し付けるべきではないと思いますし、何よりも地方公務員の評価や処遇については各地方自治体がその規模や実情に応じて柔軟に運営すべきであり、その自主性を尊重すべきだと思いますが、その点についての大臣の見解を最後にお伺いして、終わります。
委員長 山本香苗君
時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。
国務大臣 新藤義孝君
国家公務員におきましては、これは絶対評価で行わせております。それから、地方自治体においては、それぞれの団体のお考えがあると思いますから、それは適切に自らがお決めになればいいというふうに思いますが、いずれにしても、この人事評価がより良い地方自治行政に、そして住民サービスにつながるようなものにならなければいけないし、そのことを我々は期待をしておりますし、助言をしていきたいと思います。
吉良よし子君
終わります。